きょうのコラム「時鐘」 2009年9月1日

 総選挙の大勢を見届けて帰ったタクシーで、運転手と高速道のETC割引の話になった。「買った機器は無駄になるのかね」

休日の1000円乗り放題で特需が生まれたが、民主党は高速道の無料化を約束している。来年度から段階的に進め、12年度には完全実施とある。首都圏などは対象外というから、すぐに無用の長物になるわけではないが、邪魔にはなる

休日割引でETCの機器を買わせ、今度は無料化。右往左往させられて、ヨット乗りの話を思い出した。ヨットは、逆風でも進む。右に左に向きを変えて帆に斜めから風を受け、風上に向かってジグザグに走る。追い風よりも、逆風の帆走が腕の見せ所だという

選挙の風はひとまずやんだが、不況の嵐はまだ収まる気配がない。日本丸なるヨットは、かじ取りを代えて前進していくのだろうか。先のことは分からない。それにしても、大枚はたいたETC機器の始末をどうしよう。政治の漂流が生んだ身近な厄介事の1つである

ドラマのような政権交代が起きても、難題はいくらも出てくる。大一番の後、真っ先にそんな覚悟をした。