鳩山代表が翻意 首相主導いきなりつまずく
8月31日19時38分配信 産経新聞
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一夜明け、荒れ模様の天気とは対照的に晴れ晴れとした表情で自宅を出る、民主党の鳩山由紀夫代表=31日午前、東京都大田区田園調布(寺河内美奈撮影)(写真:産経新聞) |
「長かったが、ようやくスタートラインにたどり着いた。ようやく新しい政治をわれわれの考えで動かすことができるという思いで、感慨無量だ」
鳩山氏はこう、かみしめるように語った。平成8年9月の旧民主党結党から13年。この言葉からは、政権交代実現に至るまでの険しい道程に対する万感の思いと達成感がうかがえた。
次期首相となる鳩山氏にすれば、いよいよ思い描く理想の実現が図れることになる。ところが、“本番”を迎えたはずの鳩山氏の言動の焦点は定まらない。
前夜、党の開票センターを置いた東京・六本木の多目的施設の一室。鳩山氏は党幹部らと断続的に政権移行への準備を話し合った。
「政治の仕組みそのものを変え、マニフェスト(政権公約)も実行に移していく。国民視点に立った政治にしないといけない」
鳩山氏が語る“施政方針”に、菅直人、小沢一郎両代表代行、岡田克也幹事長ら幹部たちは静かに聞き入っていた。ところが、鳩山氏が突然表明した言葉に、出席者の1人は耳を疑う。
「閣僚人事は首相指名後に一気に決める」
鳩山氏は首相主導の政権運営を目指し、財務相、官房長官など主要閣僚予定者が他党との連立協議などを行う「政権移行チーム」設置を見送る考えを表明したのだ。代わりに、小沢氏ら現三役が政権発足準備に当たる。鳩山氏自身が掲げた首相主導の政治は出だしでいきなりつまずいた。
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「30日夜にも政権移行チームを発足させ、『新政権に向けて民主党が動いている感じを出した方がいい』と鳩山氏には進言した。鳩山氏も考えたはずだ」
側近の一人は鳩山氏の翻意に首をかしげる。また、菅氏が現政府が作成した来年度予算の概算要求を「白紙に戻す」と主張してきたことについても、財務省側は「見直すにしてもこのままでは『どうしますか』と聞きにも行けない。移行チーム見送りで予算作りはさらに遅れる」(主計局幹部)と困惑を隠さない。
鳩山氏は30日夜、幹部らに新政権への移行のあり方について「古いものから新しいものに円滑に移行させていくことも必要だ」と語ったが、それ以上の具体的な言及はなかった。
政権移行チームの見送りは、先行人事による党内の混乱・不満を抑える狙いや、「選挙前に人事構想が吹聴されたことに不快感を示している」(党中堅)小沢氏サイドへの配慮などが背景にあるとみられる。
ただ、党内融和や求心力維持を意識する余り、国民に「優柔不断」「先延ばし」とのイメージを与えてしまうと、リーダーとしては致命傷になりかねない。
鳩山氏は31日昼にも、党本部で小沢、菅、輿石東(こしいしあずま)の各代表代行、岡田氏と三役会議を開いた。だが、この会議でも結局、首相指名のための特別国会召集を話し合う各派協議会の早期開催を決めただけだった。
× × ×
鳩山氏が語る理念や政策の不明瞭(めいりよう)さやブレも、多くの場面で指摘されてきた。
衆院解散を間近に控えた7月15日には、非核三原則のうち「核兵器を持ち込ませず」について、政権獲得後に原則からはずす方向で米国側と協議する考えを示した。平成17年にまとめた自身の憲法私案でも「持ち込ませず」との記載を避けている。
ところが、連立相手となる社民党の反発を受けると、現行三原則の法制化の検討を表明するなど、発言が二転三転した。
鳩山氏は5月の代表選では祖父の故鳩山一郎元首相が提唱した「友愛社会の実現」を公約に掲げた。「価値観の異なる社会とも共生していける友愛外交」を政策として打ち出したが、キーワードであるはずの「友愛」が何なのかは今も明確になっていない。
6月には、記者団に「友愛は『博愛』と『同志・同胞愛』のどちらの意味か」と聞かれ、こうあいまいに答えるにとどめている。
「博愛という方が近いかもしれない。その両方をもっと国民に広く知っていただくよう努力したい」
衆院選大勝を受けた30日夜と31日未明の2回の記者会見では、代表選であれほど強調した「友愛」について一切言及しなかった。そして31日には、改めて記者団の質問にこう語った。
「私は友愛という言葉を好んで使うが、けして甘っちょろい発想ではない」
国民の自民党への強い批判と嫌悪の追い風を受け、民主党は大勝利を得た。だが、鳩山氏の腰がふらつき定まらぬようだと、順風はいつ逆風に転じるか分からない。(赤地真志帆)
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最終更新:8月31日19時38分
- 鳩山由紀夫(はとやまゆきお)
-
- 所属院 選挙区 政党:
- 衆議院 北海道第9区 民主党
- プロフィール:
- 1947年2月11日生 初当選/1986年 当選回数/7回
- (写真提供:時事通信社)
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