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自民党は「保守主義」で再生せよ - 池田信夫

2009年08月31日09時38分 / 提供:ニュースブロガー

ニュースブロガー

アゴラ

総選挙は、民主党が308議席で圧勝しました。事前の各社の票読みで「300議席」という予測が出ていたけれど、「まさかそこまで」と思っていたので、きのうネットラジオ中継をしながら見ていて驚きました。「失われた20年」への不満が爆発した感じですね。国民が大きな変化を求めていることは明らかですが、それがどんな変化なのかはまだわかりません。むしろ私は、野党に転落した自民党が「保守主義」の原点に戻って出直すチャンスだと思います。
1955年に結成されたとき以来、自民党は共産主義に対抗して自由経済を守ることを使命としてきました。しかし冷戦後、自由経済の勝利によって思想的な核を失い、既得権を守ることが自己目的になってきました。国民はそういう自民党を支持したわけではないが、野党が分裂を繰り返したため救われてきました。そして「自民党をぶっ壊す」と主張した小泉純一郎氏が、自民党を延命しました。

このとき自民党は、小泉氏への圧倒的な支持の意味を真剣に考えるべきでした。それは戦後ずっと続いてきた政治経済システムへの国民の不満だったのですが、それを郵政民営化の是非論に矮小化し、挙げ句の果てに麻生氏は「市場原理主義」を否定するに至りました。そして「小泉改革の否定」を掲げて闘ったことが、自民党の敗因の一つだと思います。「アゴラ」で何度も書いたように、日本経済の低迷は小泉改革のせいではなく、むしろ自民党が必要な改革をしてこなかったことにあるからです。

この点で「とにかく政権を変えよう」と訴えた民主党のほうが有利でした。しかし彼らのかかげている政策は「大きな政府」をめざすポピュリズムで、財源の不足や官僚の抵抗によって遠からず行き詰まるでしょう。そのときこそ自民党は、結党以来の党是である自由経済の原則に立ち返り、小泉氏と同じく「小さな政府」をめざす党として再生すべきです。

世界的にみても、政党の主要な対立軸は「大きな政府か小さな政府か」しかありません。民主党がいうように「無駄の削減」だけで「高福祉・低負担」が実現できるというフリーランチはありえない。それに対して自民党が「中福祉・中負担」などという中途半端なスローガンを掲げるのではなく、規制改革によって財政負担を削減し、企業の競争力を高める成長戦略を打ち出せば、ビジネスマンは支援するでしょう。

保守主義には多様な意味がありますが、それは既得権を守ることではなく、改革を拒否することでもありません。アメリカの保守主義は建国の精神である自由主義を守ることであり、レーガン大統領以降の「保守主義革命」は戦後もっともドラスティックな規制改革を実現しました。昨今の金融危機では、その行き過ぎも露呈しましたが、オバマ大統領も「大きな政府」は否定しています。失うものがなくなり、利益団体と妥協する必要もなくなった今は、自民党が保守主義の党として再生する好機だと思います。
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