コンテンツというとWebコンテンツの印象が強いが、紙の文書、メール、プレゼンテーションファイル、イメージ、動画などコンテンツの範囲は広く、その多くが非構造化データである。実際の企業活動では、基幹システムなどが扱う構造化データより、非構造化データの割合が圧倒的に高い。「非構造化データは企業の持つデータの8割から9割を占め、しかも契約者情報など重要な情報が含まれていることが多いのです」と水越氏は指摘する。
問題は、こうした非構造データがどう管理されているかだ。通常は、申込書、請求書、契約書などコンテンツの種類の単位で保管されているケースが多い。業務フローの管理とコンテンツの管理が別々になるために、効率性やコンプライアンス上の問題が発生していることが多い。
例えば、自動車保険の保険料の支払い処理は大きく3つの処理に分けられる。受付処理とフロント処理、そしてバックエンド処理だ。受付処理では、事故を起こした保険加入者の申請を受け付けて必要な情報を入手し、フロント処理にまわす。フロント処理では、必要な審査を行い、保険料の支払いを決める。バックエンド処理では、フロント処理の結果を受けて保険料を支払う。
「こうした一連の業務フローの中で、事故報告書や事故に関する写真などのコンテンツはそれぞれの処理で一時的に管理されることになります。しかもデジタル化されていないことが多いので、それぞれ処理の間は人が書類を運ぶことになります」と水越氏は指摘する。
効率が悪いだけでなく、ミスも起こりやすく、誰が、いつ、どの書類を持ち出したのか、といったログ情報も残らないため、コンプライアンス上の問題も出てくる。コンテンツが分散していて問い合わせにすぐ答えられないケースも多い。
こうした課題を解決し、各処理を連動させるのがエンタープライズ・コンテンツ管理システム(ECM)であり、コンテンツ単位で管理していたものを業務プロセスと統合して体系的に管理し、業務全体の効率化を図ることができる。
ECMを実現するFileNet BPMでは、コンテンツリポジトリとケース管理という大きく2つの機能が提供される。すべてのコンテンツはデジタル化されてコンテンツリポジトリに一元管理され、業務プロセスはコンテンツ情報と合わせてケースというグループ単位で、ケース管理に格納される。「コンテンツを業務プロセスに沿って一元的に管理することが重要なのです」と水越氏は指摘する。
前述のケースであれば、事故が起きたという連絡が入った時点で「ケース」が作成され、業務プロセスの管理が開始される。申請書など発生するコンテンツはデジタル化され、コンテンツリポジトリに登録される。登録されたコンテンツに応じて支払審査といった対応する業務プロセスが起動され、必要に応じてコンテンツを参照しながら処理が進められる。処理が終了すると自動的に次の処理が起動され、業務プロセスはケース管理に記録される、といった流れが実現される。
業務プロセスはすべてケース管理に履歴として残り、関連するコンテンツはコンテンツリポジトリに登録されている。誰が、いつ、どのコンテンツにアクセスしたかというログも残っているので、コンプライアンス上も問題がなく、顧客の問い合わせにも迅速に対応できるようになる。「なによりも、各業務処理がコンテンツ情報を伴って自動的に連動されることで効率よく処理することができるようになります」と水越氏はそのメリットを強調する。
FileNet BPM以外にも、業務プロセス管理やコンテンツ管理とったソリューションは存在するが、実際にそれらを連動させて利用するには様々なハードルが存在する。しかしFileNetでは、プロセスエンジンとコンテンツエンジンの統合が実現されている。それがアクティブコンテンツという概念だ。コンテンツが登録されたり、更新や削除されると同時に、それに対応したプロセスが自動的に起動することで、業務プロセス管理とコンテンツ管理の統合が実現される。
水越氏は、FileNet BPMの特徴は3つあるという。それは、「自動化」「統合」「最適化」だ。
「自動化としては3つのパターンがあります。プロセスデザイナーという専用のデザインツールを使う以外にも、BPMNを取り込んでプロセスを自動的に設計する機能、外部のルールエンジンと連動して判断を自動化する機能、そしてeFORMSという電子申請機能を使って情報の入力を自動化する機能の3つを提供しています」と水越氏は説明する。 もうひとつの「統合」は、既存のWebサービスにリクエストを出すなど、外部のアプリケーションを連動させて実行しながら業務プロセスを進めることができることだ。これまでの既存資産を活かし、SOAのアプローチで新たな業務プロセスを構築できる。
最後の「最適化」は、FileNetの最も大きな特徴かもしれない。設計された業務プロセスに沿って行われる処理のデータが収集され、プロセスアナライザによってどこに負荷がかかっているかなどの現状が分析され、問題点が可視化される。その結果を受けてプロセスシミュレータでボトルネックなどを検証したうえで改善を図り、全体をモニターする。「業務プロセスを一度作ったら終わりではなく、常に改善を図る仕組みが提供されているのです」と水越氏。FileNet BPMとして、顧客に効果をもたらすことが目的だという姿勢が伝わるポイントだ。
金融業や保険業では、住宅ローンの受付処理の処理プロセスの自動化や口座開設の申し込みのeFORMSによるペーパレス化など、業務の効率化を中心に多数の成果が報告されている。また、電力会社など製造業でも、プラントの修繕計画や実行マニュアルをFileNet BPMで管理し、メンテナンス作業時間を大幅に短縮したといった事例もある。
すでにFileNet BPMは、金融、製造、通信、公共、サービスなど幅広い業種にわたって全世界1万8000社に導入されているが、多くのケースで劇的な成果をもたらしていることがFileNet BPMの大きな特色である。それだけ新しい視点からのソリューションと言えるのではないだろうか。
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