東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

『大転換』期待と戸惑い 霞が関 あきらめも

2009年8月31日 夕刊

 歴史的な民主党の圧勝から一夜明けた三十一日、「脱官僚」も唱える新たな政権を迎える霞が関では、「粛々と仕事をするしかない」「今後の予測がつかない」と戸惑う声が目立った。変化を求めて一票を託した有権者は「当然の結果」と受け止めながら、生活、雇用、格差などをめぐり期待や厳しい注文を出した。 

■ 国交省

 国土交通省は午前十時から最高意思決定機関となる省議を開き、来年度予算の概算要求を決定した。だが、金子一義国交相ら政治家の姿はなく、ある幹部は「黒船来襲前の静けさ」と形容した。

 政権交代で予算要求の組み替えも必至で、担当者は「新大臣を早く決めてもらい、今週中に予算要求の方針を決めてもらわないと」と心配そう。ある幹部は「細川政権の時も旧建設省と旧運輸省の大臣はともに旧社会党だったが、さほど混乱しなかった」と、言い聞かせるように語った。

 国交省が恐れる高速道路の原則無料化やガソリン税などの暫定税率廃止といった公約を掲げた民主党。

 別の幹部は「暫定税率廃止などは自治体からも反対の声があり、新政権は天下りの廃止など国民受けするやりやすい改革から手を付けるのでは」と予測、「渡りという再就職を繰り返すOBがまず標的になる。現役の課長クラスは天下りをあきらめている」と語る。

■ 厚労省

 新型インフルエンザ対策のかじ取りを担う厚生労働省。本格的な流行が始まり、秋以降のピークに向けて重症者をいかに抑制できるか正念場を迎える。

 民主党政権の誕生は事前の予想から織り込み済みで、職員に驚きや戸惑いはない。九月にはワクチンの接種順位や方法を決める。流行のピークを前にして、医療体制の整備など“待ったなし”の課題も山積みだ。「政権が代わってもやることは変わりませんから」と健康局の職員は冷めた見方だ。

 年金記録問題をきっかけに廃止が決まった社会保険庁。来年一月から日本年金機構に変わるが、民主党は「組織改編で責任の所在が不明確になる」などとして反対している。

 政権交代で計画の凍結などの事態に発展する可能性もある。同庁幹部の一人は「新しい政権の下でこれからどうなるのかまったく予測がつかないが、粛々と仕事をこなすしかない」と険しい表情で慎重に言葉を選んだ。

■ 防衛省

 「どうなるのか見当もつかない」

 年末に日本防衛の指針である「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」の見直しを控えた防衛省。「見直しは先送り、来年度予算は大幅カット、かなあ」と幹部。自衛隊幹部は「政治と安全保障は別。政権交代による安保政策の大幅変更は他国にも例がない」とけん制する。

 自民党主導で進めた制服組と背広組を融合させる「省改革案」も白紙に戻る可能性が出てきた。新政権の安保政策が見通せず、重苦しい手詰まり感が漂う。

 民主党と連立を組むことになる社民党は、自衛隊の海外派遣に消極的だ。インド洋の洋上補給は来年一月で期限切れを迎え、終了が確実視される。海上自衛隊幹部は「対米関係を考えれば代替策は不可欠。だが、陸上部隊のアフガン派遣が実現するとも思えない」。

 別の制服組幹部は「新設される国家戦略局では国際貢献=自衛隊派遣とは限らない。われわれに出番があるだろうか」と話した。

 

この記事を印刷する