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【社会】

鳩山さん淡々『おごらず』

2009年8月31日 朝刊

当選者の名前に花をつけ笑顔の鳩山由紀夫代表=31日午前0時48分、民主党開票センターで

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 不安が募るばかりの暮らし。一向に明るさがともらない将来。有権者の切実な一票が「革命」を起こした。政権交代が実現した三十日の衆院選。独り勝ちした民主党は多数の新人が歓喜の声を上げ、自民、公明両党は壊滅的な敗北となった。「国民に感謝したい」と新たに日本の顔となる民主党の鳩山由紀夫代表。子育て、年金、雇用、農業…。課題は山積する。民意が未来をかけた新政権の実行力が試されるのはこれからだ。

 候補者の名前が書かれた白いボードが真っ赤なバラで埋まった。日付が変わった午前零時五十分、東京・六本木の民主党開票センター。鳩山さんは会見に臨む直前、接戦を制した候補にバラをつけ、にっこりと笑った。

 「国民が勇気をもって政権交代を選んでいただいたことに感謝申し上げたい」。黒のスーツと金と白のストライプのネクタイ。会見に入ると、遊説で日焼けした顔から笑顔が消えた。「すべてはこれから。単なる民主党の政権だとは思っていない」。感謝は口にしても勝利の喜びを語ることはなかった。

 雑誌や海外メディアなど詰めかけた記者は六百人以上。「総理大臣の任務を果たすことになれば、覚悟をもって務める」と宣言する一方で、「数におごることのない政治を行いたい」「小選挙区制では大勝や大敗はあり得る」。歴史的な勝利にも気を引き締めた。

 祖父が首相、父が外相という家に生まれたが、政界入りは弟の邦夫さんよりも十一歳遅い三十九歳。菅直人代表代行と一九九六年に旧民主党を結成。政権交代をうかがうまでになり、今回は全国三十二都道府県を遊説。常にスーツにネクタイというきまじめなスタイルで、両手でマイクを握りながら政権交代を訴え続けた。

 政権交代実現のため自民党を離党してから十六年。「ようやく二大政党政治が定着したのではないか。長いようでもあったが、国民が辛抱強く、政権交代可能な政治勢力の実現に力を貸していただいた」と振り返った。

 以前から「友愛社会の実現」を訴え続け、中曽根康弘元首相から「ソフトクリームのようだ」とからかわれたことも。だが、党幹事長として当時は代表の小沢一郎さんを支えるようになってからは、周囲は「顔つきが変わった」。

 大敗を喫した自民党には「今後、自民党の底力が発揮されていくものだと思う。そうしないと真の二大政党は日本に定着しない。ぜひ奮起を期待したい」と勝者らしく語った。

 

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