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【国際】

チェチェン『恐怖政治』反動か 北カフカステロ急増

2009年8月30日 朝刊

 【モスクワ=中島健二】ロシア南部のチェチェン共和国など北カフカス地域で自爆テロや襲撃事件が急増している。ロシア当局は四月に独立派武装勢力との紛争の中心地、チェチェンでの「対テロ作戦」を解除し、同共和国のカディロフ大統領に治安の全権を委ねた。その後悪化する一方の治安をめぐりロシア国内では「恐怖政治」を進める“豪腕”に依存しすぎたと、中央政府の「戦略誤算」を指摘する声も出ている。

 チェチェンに隣接するイングーシ共和国では十七日、警察署に突入した車が爆発し、警官ら百人以上が死傷した。政情が不安定な北カフカスでも、ここ数年で最大規模の惨事。今月に入ってからもダゲスタン共和国を含む北カフカス各地で連日、自爆テロや襲撃事件が続いている。

 ロシアのメドベージェフ大統領は二十八日、南部ソチで北カフカスの指導者ら二十人以上と治安情勢を協議。プーチン首相も二十四日にチェチェンを訪れカディロフ共和国大統領と協議したがテロは収まっていない。

 一因として指摘されるのが、カディロフ氏の治安維持の手法。同氏は強力な私兵集団を率いてテロを力で抑え込み、反対派とみればその家族も含め「誘拐」「殺りく」を組織的に行ってきた疑惑がある。事実、チェチェンの人権活動家の暗殺が続き、住民の拉致事件も急増している。

 この強大な力がロシアの支持を得たゆえんだが、拷問など人権侵害への非難が絶えない私兵集団は最近、近隣共和国にも出没。北カフカスに混在する民族間の憎悪をあおるとの懸念もついて回った。人権団体「メモリアル」は「暴力が新たなテロを生み出した」と、ロシアの野放しがもたらした悲劇だとする。

 ロシアが「対テロ作戦」を解除したのも、カディロフ氏の意向だとされている。ただ政治情報センターのムーヒン所長は、これが武装勢力を刺激したとの見方を示し「テロは拡大する。モスクワが狙われることもありうる」と警告した。

 

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