中東・アフリカ

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街角:テヘラン ジョークで済まぬ怒り

 毎晩午後10時を回ると、今もテヘランの至る所で、叫びにも似た唱和が響き渡る。「アラー(神)は偉大なり」「独裁者に死を」

 6月の大統領選不正疑惑に対する当局への抗議の意思表示だ。

 夜な夜なイランの不穏な空気を肌で感じながら就寝するのだが、寝付きは以前より格段に良くなった。大音響の音楽を伴うホームパーティーが激減し、騒音に悩まされなくなったからだ。

 イランでは飲酒や西洋音楽が禁止されており、親類や友人を招いてのホームパーティーが花盛りだった。時にアルコールも供されるが、保守強硬派のアフマディネジャド政権も「ガス抜きは必要」と判断したのか、黙認していた。

 ところが、今はスローガンを絶叫することでストレス発散にもなり、どんちゃん騒ぎの必要がなくなったのだろう。イラン人の友人にそんな自説を披露すると、反論が返ってきた。

 「浮かれた気持ちになれないだけだよ」

 選挙前、市民は携帯電話で短文を送受信するSMS(ショートメッセージサービス)を使い、大統領など体制要人をからかうブラックジョークを日常的にやりとりし、憂さ晴らしをしていた。

 当局は選挙後の混乱期、SMSを使えなくしたが、今は自由に使える。それでもブラックジョークは全然流れない。

 あるイラン人が自身のブログでこう説明していた。

 「(体制や政権への)怒りは、ジョークでは済ませられないくらい真剣になったからだ」【春日孝之】

毎日新聞 2009年8月30日 東京朝刊

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