公明の支持母体の創価学会が自民の選挙区候補を支え、立正佼成会は民主の候補を支援するという構図は前回衆院選と同様だが、強い逆風が吹く自民はこれまで以上に、堅い公明票を頼りにせざるを得ない。さらに今回は、幸福実現党の出現という新たな要素が加わり、これまでに増して宗教団体の票が選挙戦にどう影響を与えるのか注目される。
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「山岡先生は選挙区で勝てるチャンス。一丸となって変わらず応援する」。先月28日に小山市で開かれた民主・山岡賢次前衆院議員の総決起大会。立正佼成会小山教会の平井良三渉外部長は、強力な支援を約束した。平井渉外部長は、来賓では連合栃木の次にあいさつ。最後の「頑張ろう三唱」では、民主県連代表の谷博之参院議員の横で気勢を上げるなど、民主支援組織の中でも中心的な団体に位置づけられている。
連合栃木幹部は、立正佼成会の県内の集票力について「5万票」とみる。前回衆院選(05年9月)では民主の全候補を推薦し、今回の衆院選でも民主候補を応援する予定だ。「政党ではなく人物本位で推薦」(立正佼成会本部)とするが、幹部は「創価学会と相いれない部分があり、対立的な立場で(民主を)支援している面はある」と明かす。
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「私も遠藤先生も一緒に国会で働かせていただきたい。『比例は公明党』と書いていただけるように心からお願いする」。先月22日に宇都宮市であった佐藤栄一市長の後援会の拡大役員会。1区の自民・船田元前衆院議員は、約600人の前で、比例北関東ブロックで立候補予定の遠藤乙彦前衆院議員への配慮を強調した。
前回参院選(07年7月)での公明の比例票は10万1876票。前回衆院選では12万7876票の比例票を獲得した。今回は13万5000票を目標に置く。公明県本部幹部は「県内で10万~13万票ある。1選挙区あたり2万~2万5000票くらいで、1区は安定的に2万3000票前後は出る」と分析する。
「選挙区は自民、比例は公明」という協力関係は、自民候補には計算できる票だが、その票に見合った比例票が来ないという不満が公明サイドからは漏れる。公明は小選挙区の自民候補を推薦する予定だが、遠藤氏は「先方の取り組み姿勢で評価する。単に自民だから応援することはない」とけん制する。
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幸福実現党は6月、県庁で県内選挙区と比例北関東ブロックの候補予定者を早々と発表した。会見した石川悦男前選挙対策委員長は「(支持母体の)幸福の科学にとって栃木県は総本山。全国の中でも重要な位置づけだ」と述べた。ポスターや街頭宣伝活動で目立った動きを見せ、保守層に働きかけるが、遠藤氏は「派手な活動に見合った票が出るかは疑問だ」と指摘する。
毎日新聞 2009年8月4日 地方版