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クローズアップ2009:衆院選公示 瀬戸際、自公は「防戦」

 4年ぶりの衆院選が公示された18日、白熱する与野党の論戦は「民主党政権」を意識した駆け引きとなった。危機感を強める自民、公明両党は民主党の政策だけでなく幹部個人を攻撃する「ネガティブキャンペーン」を強化。ほかの野党は民主党との協力による政策実現を訴える戦術で「生き残り」を図る。当の民主党はマニフェストに盛り込んだ政策の説明を繰り返す「安全運転」で選挙戦を乗り切る構えだ。【上野央絵、高山祐】

 ◇論戦で個人攻撃強化

 「民主党のように予算を組み替えて(経済のパイが)増えるみたいな愚かなことはしない」。麻生太郎首相(自民党総裁)は18日、東京都八王子市での第一声で民主党の経済政策を批判。「政策、統一がとれない政党に安全保障を任すことはできない」とこき下ろした。

 自民党の細田博之幹事長も同日、大阪市での街頭演説で、民主党の小沢一郎代表代行を念頭に「民主党が政権を取れば『ヤミ将軍』のような勝手気ままなことをやり、我が国の民主主義を踏みにじる」と個人攻撃を展開。公明党の太田昭宏代表は「(17日の)党首討論で鳩山由紀夫・民主党代表の目が泳いでいた」と歩調を合わせた。

 与党が今回の衆院選で掲げた目標はあくまでも「与党過半数」。自民300、公明31の公示前勢力から90議席減らしても「敗北」でないとの予防線を張るが、自民党内ではその目標達成も危ぶむ声が強まっている。

 自民党が当初描いたのは、経済指標の好転などを実績として掲げ、政権担当能力を訴える「正々堂々とした選挙戦」(幹部)だった。だが、選挙戦が始まった公示日、与党首脳の口からは民主党に対する批判が相次ぎ、選挙戦の軸足はネガティブキャンペーンに移っている。かえって政権与党の「余裕のなさ」が際立つ形となった。

 公明党は擁立した51人のうち、8小選挙区の全勝と比例の現有23議席の維持が目標。全国各地を遊説する太田代表に加え、北側一雄幹事長ら小選挙区候補全員が比例代表と重複立候補せず、選挙運動を引き締める。

 自民党との連立政権の維持を掲げながらも、自民党とは一線を画すことで逆風をしのぐ両面作戦を採用。マニフェストには地球温暖化対策などで独自目標を掲げ、太田氏は18日、「結党以来、子供、高齢者、障害者のために一貫してこの身を捨てて頑張ってきたのは公明党だ」と訴えた。幹部からは「問題は自民党だ。風まかせのだらしない政党になった」との不満も漏れる。

 ◇民主、政権想定し抑制

 「麻生首相は『バラマキだ、財源はどこにある』というようなことばかりおっしゃる。財源はあるんです」。民主党の鳩山由紀夫代表は18日、街頭演説の2カ所目に自民党の伊吹文明元幹事長の地元・京都1区を選び「財源」批判に反論。「天下りをやめようじゃないですか。無駄をなくせばお金は十分にある」と訴えた。

 民主党は、子ども手当▽高校教育の無償化▽高速道路の無料化--など独自政策の実現を徹底して訴えていく方針。実際に政権を担うことを想定し、鳩山氏ら幹部はマニフェストの枠を超えない抑制した発言を繰り返す。鳩山氏は18日の演説で「公約ができなければ責任を取るのは当たり前」と明言した。

 その一方、「鳩山政権」の人事構想も動き始めている。岡田克也幹事長は同日、引退表明していた藤井裕久最高顧問を比例南関東ブロック候補に擁立したことについて「鳩山政権には藤井さんのような経験のある方が必要だ」と指摘し、閣僚など要職への起用をにおわせた。鳩山氏はNHKの報道番組で、連立を想定する社民、国民新両党からの入閣について「閣内に入るのが望ましい」と述べた。

 民主党との連立を否定する共産党も、民主党への追い風を利用する選挙戦略を組み立てる。志位和夫委員長は「民主党政権ができた場合、政策を積極的に提案し、国民に良いことに賛成、悪いことには反対という立場で頑張り抜く」と強調。「民主にも不安が残る層」への浸透を図り「建設的野党」として存在感を示すのが狙いだ。

 社民、国民新両党の姿勢はより鮮明だ。社民党の福島瑞穂党首は連立政権で「平和の再建、生活の再建」を進めるためにも「2ケタ台」の議席確保を訴えた。国民新党の綿貫民輔代表は「郵政民営化の検証」を強調した。

 「第三極」勢力として5人以上の議席確保を目指すみんなの党は埋没を懸念。渡辺喜美代表は「私たちはバラマキをしない民主党だ」として政界再編の必要性を訴えた。

 ◇「空白県」解消、政権へカギ 民主、13県・小選挙区で当選なし

 衆院選に小選挙区比例代表制が導入された96年以降、前回05年までの4回の選挙で、民主党の候補が小選挙区で当選したことのない都道府県は、青森▽群馬▽富山▽岐阜▽和歌山▽鳥取▽島根▽香川▽愛媛▽高知▽宮崎▽鹿児島▽沖縄の13県。民主党が政権交代を果たすには公示前勢力(115議席)からの大幅な上積みが必要で、こうした「空白県」をどれだけ解消できるかがカギになりそうだ。

 また、民主党の小選挙区獲得議席数が自民党を上回ったことがあるのは北海道や岩手県など11都道府県にとどまる。特に中国、四国、九州には一県もなく、西日本での苦戦が際立っている。民主党は今回、空白県の一つ、愛媛県で自民党の閣僚経験者に対抗し元民放アナウンサーの女性を擁立するなど、積極的なテコ入れを図っている。【横田愛】

毎日新聞 2009年8月19日 大阪朝刊

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