那覇空港で07年8月に起きた台湾発の中華航空機(ボーイング737-800型機)爆発炎上事故で、運輸安全委員会は28日、調査報告書を公表した。右主翼の可動翼「スラット」の部品の留め具を中華航空が付け損ねた整備ミスが原因で、留め具がないと部品の脱落を防げない設計だったことも影響したと推定。米連邦航空局(FAA)と台湾航空局(ASC)にボーイング社と中華航空を指導するよう安全勧告した。
報告書によると、離着陸時に出し入れして揚力を高めるスラットを支柱に固定するボルト部に留め具のワッシャーがなかったことから、ボルト部が脱落。着陸後、スラットを主翼にある燃料タンクのくぼみに格納する際、脱落したボルト部が押されて燃料タンクに穴が開き、漏れた燃料に引火した。
ボルト部を留めるナットの径は支柱の穴より小さい設計で、ボルト部はナットがついたまま支柱の穴をくぐり抜けた。ワッシャーはスラット固定位置の下から破損のない状態で見つかった。中華航空は事故の約1カ月半前、ボ社の技術指示書に基づきナットの緩み止め作業をしており、その際にワッシャーが脱落したとみられる。
ボルトは手探りで作業せざるを得ない位置にあり、部品の欠落が起きやすかったが、ボ社の技術指示書も中華航空の作業指示書も、作業の困難さや確認に触れていなかった。
このため運輸安全委は、FAAに対し、ボ社が技術指示書を作成する際はより詳細にするよう、ASCには中華航空に誤作業防止策の充実を指導するよう安全勧告した。
事故後、ボ社はボルト部を設計変更した。
乗員乗客計165人に死傷者はなかった。報告書では、那覇市消防本部への通報漏れや管制官が別の便に停止を指示しなかったことなど消火活動の遅れに触れ、消防体制強化の必要性に言及した。【石原聖】
毎日新聞 2009年8月28日 11時23分(最終更新 8月28日 11時44分)