金築誠志氏(09年1月就任。64歳)=最高裁提供
(1)誠実、公平に、できる限り幅広い視点から、という心構えで職務に取り組む。難しさを感じる点はいろいろあるが、例えば、法令解釈を任務とする最高裁が、下級審の事実認定の在り方にどこまで介入すべきか、といった点。
(2)法的紛争の適正、迅速な解決と、誤りのない公正な刑事裁判。
(3)高い識見、特に広い視野と物事に対する洞察力。あなたが十分持っているかと聞かれると、困るが。
(構成については)最高裁裁判官の任命は内閣の専権事項なので、回答は差し控えたい。
(自身が入ったことでの変化は)任命後半年でいまだ著名事件の判決には関与していない段階だが、裁判についていえば、私の意見を反映させるように努めている。それ以上のことは、第三者の評価に委ねるべきことと思う。
(4)これこそ有権者の皆さんが決めることで、審査を受ける側で注文をつけることではないと思う。
(5)審査を受ける者として、審査方式の適否について意見を述べるのは差し控えたい。
(6)裁判に関して裁判官として説明する必要があることは、あくまで裁判の手続きの中で十分に説明するようにすべきだ。手続き外で判決について説明するようなことは、例えば、判決と説明との間に矛盾がないのかどうかといった点が問題になったりして、裁判に無用な混乱を持ち込むことになりかねない。
司法行政に関しては、具体的な人事資料等、公開できないものは別として、できるだけ広く情報発信をしていくべきだ。
(7)裁判員制度は、国民参加が実現した刑事裁判の一大変革であり、成功を願っている。裁判官は柔軟に、裁判員は積極的に、という姿勢を期待したい。環境整備等、裁判所として可能な限りの準備はしてきたつもりだが、実際の裁判では予想しなかった問題も起きてくるだろうから、今後も、関係者が前向きに問題解決に取り組む必要がある。
(8)刑事裁判というと、「怖い」とか、「責任が重すぎる」といった理由で、消極的な気持ちに傾くことは理解できる。この障害を克服する方法は、実際に裁判員を経験した人に「やってみたら心配していたほどのことはなかった」「やってよかった」と言ってもらえるように、法曹三者が努力することしかない。
(9)量刑については、事件をいろいろな方向から多面的に見ることが必要だ。多様な経験を持つ裁判員が加わるので、評議の中で自然にそうなることが期待される。
(10)もともと死刑の適用は、ある基準を機械的にあてはめて結論が出てくるようなものではない。この問題は、現在も難問であり、裁判員裁判になっても、その点は変わらない。
(11)できるだけ客観的でバランスのとれた報道をお願いしたい。メディア各社でも、裁判員裁判の報道について指針をまとめられたと承知しており、今後の状況を見守りたい。
(12)立法問題であり、幅広い国民的議論に基づいて決定されるべきだ。言い渡しはいまだ経験がないが、これ以上はない厳粛な気持ちで臨むことになると思う。
(13)迅速化法の目標実現に向けて最も必要なことは、法曹三者が、合理的な期間内に判決に到達するという納期の意識を共有することだ。ここ十数年でかなり改善されたと思う。
(14)裁判官としては、違憲審査の必要があれば、自らの信念に従って、思うとおりに行使するということに尽きる。(憲法裁判所、憲法改正は)政治的な問題であり、意見を述べるのは差し控えたい。
(15)現在、具体的な事件として係属中なので、回答は差し控えたい。
(16)現在、国会で審議中と聞いており、意見は差し控えたい。
(17)川路聖謨(幕末の勘定奉行)。ロシア使節プチャーチンとの交渉を担当し、ロシア側からも尊敬を勝ち得た。評定所の裁判でも活躍するなど、どのような職務に就いてもも最大限の努力を惜しまず実績を上げたが、開明的な文化人でもあった。
(18)(趣味)野草観察、ささやかな園芸、囲碁。
(好きな言葉)「企者不立 跨者不行」(つまだつ者は立たず はだかる者は行かず)。老子の言葉で、つま先で立っていると長く立っておれず、足を踏ん張っていると、歩けない。無理な姿勢で事に当たることを戒め、自然体を勧めている。
(19)小学館「日本の歴史」。全16巻のうち、14巻まで読み終えたが、資料の発掘・解読などが進んで、昔の人々の生活ぶりが詳しく分かるようになってきたことや、日本史に対する新しい見方などを教えられた。
(20)オウム真理教解散請求事件(95年、東京地裁民事第8部で担当)。厳重な警備を受けながら審理に当たったこと、山梨県上九一色村の第7サティアンの検証に行ったことなどが、印象深い。
(21)運動不足になるので、何か軽い運動をするのがよいと思いつつ、無精で、朝、階段を上ることくらいしかやっていない。
(22)(「一票の格差」を初めて違憲と判断した)1976年4月の衆議院議員定数訴訟大法廷判決。