ホーム>国税庁概要・採用> 国家I種試験(事務系)採用>国家I種試験採用案内パンフレット2008>特集−組織マネジメント 〜最高のパフォーマンスを目指して〜
税はすべての国民にかかわり、そして国民生活を支える重要な財源です。税の基本理念の柱の一つは「公平」ですが、これは「制度」が公平であること、そして制度が公平に「執行」されることにより担保されます。
国税庁1種採用者の最大の役割は、納税コンプライアンスの向上、ひいては「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」という国税庁の使命を、現実の執行に具現化するため、常に社会経済情勢の変化・潮流を読み取り、大局的かつ長期的な税務行政の進むべき方向性を提言しつつ、現状を的確に分析して課題を抽出し、タイムリーに問題解決のための具体的な処方箋を書くこと、すなわち、国税庁という組織のマネジメントです。
そのために、国税庁本庁・国税局・税務署間の異動のみならず、制度部局(財務省主税局)への出向などを幅広く経験する中で、 ○専門知識や情報を得、第一線の現場経験を積み、人的ネットワークや情報ネットワークを構築して税務行政の中核を担うために必要な能力を培い、 ○税務行政を企画・立案するとともに、それを現場で実践し、 ○さらには自らが媒介となり、税制と税務行政の調和を図ります。 |
長官官房人事課 課長補佐 福田 あづさ
平成9年 課税部酒税課
平成12年 ロンドン大学大学院 留学
平成14年 課税部個人課税課 監理第二係長
平成16年 金融庁総務企画局国際課 課長補佐
平成18年 現職
「巨大企業―国税庁 」
イマジネーションの世界に身をおき、一企業の経営者に自分を置き換えてみる。時代に対応した経営戦略を考え、社内に浸透させなくてはならない。経営戦略を立てる上で、最終的なゴールは何か?当然のことながら、利潤の最大化であり、株主への利益の還元である。そのためには、市場の需要に対応した良質なモノ・サービスや付加価値を生み出し、顧客の信頼と満足を勝ち得なくてはならないし、有能な社員がその能力を最大限に発揮できる活力のある企業にしなくてはならないだろう。
今、世間が求めているモノ・サービスは何か?それを生み出すためにはどういう人材・ノウハウ・組織が必要か?どうやって企業ブランドを確立させるか、社員の能力を最大限発揮させるためには?経営戦略・方針を全社員に浸透させるためには?内部管理、ガバナンスのあり方はどうあるべきか?こんなことを日々考えるのではないか。
誤解をおそれずにたとえれば、国税庁も一つの超巨大企業と言えるかもしれない。一企業で従業員56,000人を抱える企業は、日本国内にまずないだろう。大きく異なる点は、株主は特定の人ではなく国民全体であり、そして、国民全体に還元すべきものが定量的に量れないという点だろう。
「本庁におけるマネジメント機能 」
国税庁は、法律に基づき、国民から課税・徴収という強い公権力とそれを適切に行使するため56,000人という組織と予算を与えられている。いわば、国民が国税庁に投資してくれているわけだ(もちろん、投資とはいわず「国民からの負託」と呼んでいるが)。そのような負託を受けて、国税庁は国民の信頼と期待(リターン)に応えていかなくてはならない。株主たる国民に対してリターンすべきもの、つまり期待されていることは、国家財政の基盤となる歳入確保のため、「適正・公平な課税を実現する」ことである。
このような国税庁の使命を果たすため、組織の司令塔たる国税庁本庁では、国民のニーズ、制度改正、社会経済情勢を把握し、具体的な施策を企画・立案し人的・物的資源を効率的に配分していく役割を担っている。コンプライアンスを維持・向上させるためにどのような施策が必要か、その施策を展開するためにどのような資源(人・予算・システム等)がどの程度必要か、効果的に展開するためのプロセスは?こういったことを一つ一つ企画して実行に移していく。更に、システム化を進めるべき業務、知識・経験を持つ職員が従事すべき業務、アウトソース可能な業務を見極め、的確に資源を割り当てていくことも本庁の重要なマネジメント機能である。
また、膨大な個人の機密情報を扱う国税庁において、情報管理は組織の命綱だ。情報管理の徹底がなければ、税務行政への信頼も得られず、税務調査への協力も得られない。守秘義務の厳守、情報管理の徹底、公務員としての綱紀の厳正な保持、組織内のコミュニケーションの円滑化、そういった組織内のガバナンスの確立・強化も本庁の重要な任務である。
「人事マネジメント」
そして、国税庁の最大の財産(資産)である「人」のマネジメントについて触れたい。人材はパフォーマンスを生み出す原動力だ。国税庁は、高度な専門知識、強い正義感、高いモラルをもった56,000人の職員という資産を保有している。税務行政は「税」という切り口からあらゆる社会経済活動に関わっており、税務の現場は社会経済のダイナミズムがそのまま反映される職場である。経済取引の国際化、情報化、高度化が急激に進む中、税務行政が直面する課題も複雑化・困難化している。しかし、行政の効率化・スリム化が求められている現状において、必ずしもそれに伴って国税庁の定員・予算が増加するわけではない。そのような厳しい状況において、組織マネジメントの中でも、とりわけ人事マネジメント(Human Resource Management)の役割は大きくなる。
民間企業の財務諸表にたとえてみよう。バランスシートの借方に「資産」、貸方に「負債」、「純資産」がある。純資産、すなわち資本が増強されない中で、負債が増加する状況にある場合、どのようにすれば債務超過を免れられるだろうか?資産価値をそれ以上に高めるしかないであろう。
国税庁のバランスシート(イメージ)を想像してみる。先に述べたように国税庁の最大の資産は職員である。職員数が増えなくても個々の職員が発揮するパフォーマンスを向上させることは可能である。税務行政が直面する課題が増加する中で、これまでどおり、そしてこれまで以上に国民の期待に応える組織であるためには、最大の資産である「職員」の付加価値を高め、かつ、最大限にその価値が発揮されるような人事マネジメントを行うことが求められている。
人事管理の第一歩は、必要な人材を育成することである。例えば、複雑な金融商品や海外のSPVなどの事業体を利用した租税回避スキームに対応するためには通り一遍の金融の知識や語学力だけではなく、最先端の金融商品や海外の会社法制、国際会計ルールの知識も必要になる。また会計処理や情報が紙媒体ではなくシステムで行われるようになれば、真実を解明するためにはITに関する知識も不可欠である。このように、急激な社会経済の変化の中で、国民の期待に応えるためには、時代の潮流を見きわめ、それに対応した人材を育てていく必要がある。そして、個々人の能力や実績を適正に評価して、適材適所を実現することにより、職員一人一人のモチベーションの維持・向上を図る。このような人事マネジメントを効果的に行うことにより、国民から期待される「適正・公平な課税の実現」に向けて最大限の組織力を発揮することが可能となる。
「最後に 」
企業であれば、収益は数字に表われ、経営効率も収益性も様々な指標で表現可能だ。しかし、国税庁に期待されている「適正・公平な課税」という理念を数値化して一つの指標に表すことは困難であろう。数字で表せないからこそ、国税庁に期待されていることは何か、それに応えるために今何が必要かという意識を常に持ちつつ仕事をすることが求められるのである。