27日公表された今年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果は、児童・生徒が依然として、知識の活用を問う問題や記述力に弱い面があることが鮮明となった。一方、生活習慣や学習環境の調査からは、学校が学力テストを意識し、以前より宿題を出したり、規律維持に力を入れる傾向が見られた。【井崎憲、井上俊樹、加藤隆寛】
■小学校
国語、算数のいずれも、前回調査以上の正答率となったが、与えられた条件に沿って事実や自分の考えを書いたり、結論を導き出す問題になると、正答率が低かった。
国語A(知識)の平均正答率は70・1%。ローマ字の読み書きではおおむね5~7割が解答できたが、接続語を使って文章を二つに分ける問題の正答率は15・0%に落ち込んだ。
国語B(活用)の中でも、アンケート結果に基づき、一定の立場で自分の考えを書く問題の正答率は25・9%にとどまった。過去の同種類の出題だった「見聞や体験を基にして自分の考えを書く」(07年度、正答率75・4%)、「グラフを理解し、それに基づいて自分の考えを書く」(08年度、同33・0%)と比較すると、自らの体験や見聞をもとに説明する能力は身に着いているが、図表やグラフなどのデータから情報を読み取り、記述する力は不十分なことが、3回の調査で浮き彫りとなった。
算数A(知識)の平均正答率78・8%に対し、B(活用)は55・0%と低調だった。長方形や円の図形性質を正しく理解したうえで、提示された解答方法とは別のやり方で、数式を正しく表現できるかを試した問題の正答率は30・5%だった。
さらに、リサイクル活動で集めた空き缶やペットボトルの3カ月間の月ごとの量を示した棒グラフから、割合の大小が読み取れるかを探った問題でも正答率は17・9%。今回の算数の問題で最低だった。
■中学校
数学Aの平均正答率が前回調査に比べてわずかに下がったほかは、小学校と同様、前回を大きく上回る結果となった。
ただ、個々には正答率が低い問題もあった。例えば、公共の図書館の案内図を参考に、学校図書館の「郷土資料コーナー」にふさわしい案内文を書くよう求めた国語Bの問題の正答率は59・9%と、国語B全体の平均正答率(75%)を大きく下回った。文章や資料を読んで、与えられた条件に合う文を書くことに苦手な傾向が見られた。
国語Bではこのほか、レオナルド・ダビンチの代表作「モナリザ」を示して、「この絵の特徴は、どの角度から見ても女性と目が合います」と説明した文章の末尾を、「合うことです」などと正しく書き直させる問題も正答率が50・8%と低迷。主語に対応した適切な述語表現を理解していない生徒が多い実態が浮かんだ。
数学は問題ごとに正答率の幅が大きかった。立方体の展開図を示して、この展開図を組み立てた時に平行になる面を選ばせる空間図形の基本的な問題や、「3x×(-4xy)」のような単項式同士のかけ算は、いずれも正答率が90%を超えた。
一方、蛍光灯と白熱電球の値段や電気代、寿命をそれぞれ示して、二つの総費用が等しくなる時間を求める方法を説明させる数学Bの問題の正答率は、数学A、B合わせて最低の19・9%。前回の類似問題も13・3%と最も正答率が低く、数学を活用して問題を解決したり、説明する能力が依然として不十分だった。
学習環境や生活習慣を尋ねるアンケートの結果からは、宿題を増やしたり、規律の維持に力を入れようとする学校の姿が鮮明に浮かんだ。
一方で、「国語の勉強が将来、役に立つと思うか」との問いに肯定的に答える児童・生徒は減り続けるなど、学ぶ意欲の減退は依然として大きな課題となっている。
宿題を「よく与えた」とした小学校の割合は、07年度の調査時より国語(73・8%)で13・7ポイント、算数(74・5%)で11・6ポイント増えた。中学校でも増加傾向。また、放課後に補習をしている小学校は60・9%(前年度比18・9ポイント増)、中学校は83・3%(同25・0ポイント増)に上った。私語禁止など規律維持の徹底を「よくしている」と答えた割合も小中とも増えた。
児童・生徒の学校外での学習時間は前年度とほとんど変わらないが、自分で勉強の計画を立てることや、授業の予・復習、宿題について「よくしている」と答えた割合が前年度より増加。しかし、「テストで間違えた問題を家で勉強している」「どちらかといえばしている」とした割合は小6で計49・8%(同13・4ポイント減)、中3で計38・5%(同14・8ポイント減)と、苦手克服には消極的な傾向がうかがえた。
国語の学習が「将来、社会に出たときに役に立つと思うか」という問いに、「当てはまる」と答えた小6は49・1%(同3・3ポイント減)、中3は35・7%(同3・8ポイント減)。小6算数だけはやや改善傾向が見られ、63・8%(同1・3ポイント増)が同様に回答した。
携帯電話で通話やメールを「ほぼ毎日している」割合は小6で前年度より1・6ポイント、中3で4・0ポイント減。校内持ち込みを禁じる動きの拡大などが影響しているとみられる。携帯電話を持たない中3生徒は、「ほぼ毎日している」と答えた生徒より数学Aで6・5ポイント、数学Bで7・6ポイント平均正答率が高かった。
新聞やテレビのニュースに関心があるか尋ねたところ、「当てはまる」とした小6は28・6%(同1・7ポイント増)、中3は24・5%(同1・7ポイント増)。関心が高いほど国数とも正答率が高い傾向が見られた。
==============
■小学校算数Bの問題例(正答率17.9%)
4月の全体の重さをもとにしたペットボトルの重さの割合と、6月の全体の重さをもとにしたペットボトルの重さの割合を比べると、どのようなことが言えますか。下の1から3までの中から正しいものを1つ選んで、その番号を書きましょう。また、その番号を選んだわけを、言葉や式を使って書きましょう。
1 ペットボトルの重さの割合は、4月のほうが大きい。
2 ペットボトルの重さの割合は、4月と6月で同じ。
3 ペットボトルの重さの割合は、6月のほうが大きい。
(正答例)
【番号】1
【わけ】ペットボトルの重さの割合は、ペットボトルの重さ÷全体の重さで求められる。ペットボトルの重さは、4月と6月で同じだけれど、全体の重さは、4月のほうが6月より小さい。だから、ペットボトルの重さの割合は、4月のほうが大きい。
■中学校数学Bの問題例(正答率19.9%)
美咲さんは、家の白熱電球が切れたので、環境にやさしいといわれている電球形蛍光灯にかえようと考えています。そこで、蛍光灯について調べたところ、次のことが分かりました。
美咲さんとお兄さんは、蛍光灯と白熱電球を同じ時間使用したときの総費用(1個の値段と電気代の合計)を比べています。
お兄さん「1個の値段は蛍光灯の方が高いので、最初のうちは蛍光灯の方が総費用も多いね」
美咲さん「でも、1000時間だと蛍光灯の方が総費用が少ないよ」
お兄さん「それなら、二つの総費用が等しくなる時間があるね」
蛍光灯と白熱電球の総費用が等しくなるおよその時間を求める方法を説明しなさい。ただし、実際にその時間を求める必要はありません。
(正答例)
蛍光灯と白熱電球について、使用時間と総費用の関係を直線のグラフに表して、その交点の座標から、使用時間の値をよむ。
==============
小学校 中学校
国語A 国語B 算数A 算数B 国語A 国語B 数学A 数学B
北海道 66.0 45.9 74.1 51.5 76.1 72.6 61.1 55.4
青森 73.6 54.0 83.6 57.1 78.9 75.7 64.2 56.0
岩手 71.2 53.0 80.0 55.3 78.2 74.2 57.9 53.0
宮城 67.4 49.8 77.5 54.0 78.1 76.4 62.1 57.7
秋田 75.3 60.4 86.2 63.7 82.3 81.8 68.8 63.4
山形 71.3 51.0 78.3 54.0 80.4 78.7 65.1 59.2
福島 70.1 50.8 77.7 53.1 78.3 75.7 62.3 56.3
茨城 68.9 50.7 77.1 53.5 77.6 75.8 60.9 56.6
栃木 68.8 49.9 78.9 53.3 77.8 76.5 62.8 57.9
群馬 70.9 50.2 78.3 54.1 79.0 77.3 64.7 60.3
埼玉 70.1 51.0 77.5 55.5 76.5 74.2 61.6 55.9
千葉 71.0 51.3 79.8 56.3 76.8 74.6 61.6 56.7
東京 71.6 53.6 79.7 58.7 77.0 73.8 62.6 56.8
神奈川 68.7 50.8 78.1 56.6 75.6 73.2 62.2 56.7
新潟 71.2 50.3 78.3 54.1 77.7 75.1 61.8 56.7
富山 72.4 51.7 80.5 56.8 81.8 80.1 68.4 63.6
石川 72.7 53.4 80.7 57.5 79.9 77.8 67.0 61.9
福井 75.5 57.0 84.2 58.7 82.0 80.8 70.5 65.2
山梨 69.3 49.8 76.8 53.6 77.6 77.1 61.9 57.1
長野 70.4 51.1 79.5 54.4 77.9 74.8 62.5 56.7
岐阜 69.2 51.0 77.2 54.7 79.1 78.5 65.8 62.7
静岡 70.8 49.2 79.3 54.1 79.2 77.3 65.8 60.7
愛知 70.4 49.7 79.2 55.2 77.4 75.0 65.9 59.7
三重 67.8 46.9 76.0 52.5 75.9 73.3 62.7 56.5
滋賀 68.3 48.0 76.8 53.4 76.8 74.0 63.6 57.2
京都 71.6 53.4 82.2 56.6 75.9 73.0 62.3 55.5
大阪 68.3 49.4 78.4 53.8 72.7 68.3 59.9 52.5
兵庫 70.7 50.9 79.2 54.8 77.2 74.0 64.7 57.9
奈良 70.6 51.4 79.8 56.0 78.2 76.1 65.3 59.0
和歌山 69.8 48.4 79.4 53.0 74.9 70.7 63.1 56.0
鳥取 70.9 52.5 81.5 55.9 79.3 76.4 64.0 58.4
島根 68.1 50.3 77.9 52.7 79.0 78.1 62.2 58.4
岡山 68.6 49.3 77.6 52.4 77.7 73.8 62.4 56.4
広島 72.9 53.8 81.3 56.6 77.6 74.8 62.9 56.2
山口 68.6 49.6 78.6 52.8 78.0 76.3 64.0 58.6
徳島 71.6 51.2 80.2 52.9 77.0 73.5 65.3 56.9
香川 71.2 54.5 80.5 55.9 79.1 75.9 66.5 59.6
愛媛 70.4 50.4 79.3 54.3 77.8 75.5 63.8 58.4
高知 68.5 49.5 76.4 52.1 74.2 69.8 56.5 49.7
福岡 69.0 48.0 77.6 53.2 76.7 74.8 60.7 55.6
佐賀 68.9 49.2 78.8 52.3 76.7 74.5 61.7 56.8
長崎 68.8 48.7 78.2 53.3 78.1 76.5 63.6 58.7
熊本 71.1 50.6 80.3 54.5 77.7 76.3 63.0 58.2
大分 69.4 48.1 78.7 51.8 76.8 73.9 61.4 53.9
宮崎 71.8 49.2 79.8 51.1 78.0 77.2 64.8 57.2
鹿児島 70.9 49.3 78.6 52.4 76.1 74.7 61.1 54.1
沖縄 64.5 46.4 77.1 48.9 69.5 68.0 51.4 45.4
平均
公立 69.9 50.5 78.7 54.8 77.0 74.5 62.7 56.9
国立 83.4 67.7 90.0 71.1 90.7 91.0 86.3 82.9
私立 83.0 64.8 89.2 67.4 87.0 86.3 78.1 72.2
全体 70.1 50.7 78.8 55.0 77.4 75.0 63.4 57.6
※単位は%
毎日新聞 2009年8月28日 東京朝刊