「レッドクリフPertI&PartII」DVD発売記念!
趙雲役、フー・ジュン待望の来日インタビュー

日本の映画ファンによる「レッドクリフ」キャラクター人気投票で、孔明や周瑜を抑えてNo.1に輝いた趙雲。その趙雲を演じたのが中国を代表する人気スターのフー・ジュンだ。あまりの売れっ子ぶりに、これまでトニー・レオン、金城武らを迎えて数回行われた「レッドクリフ」のジャパン・プロモーションには、仕事の都合がつかず参加できなかったフー・ジュン。しかしその分、8月5日の「レッドクリフPartII〜未来への最終決戦」のDVDリリースに合わせて開催されたイベントでついに来日が実現した際には、ヘリコプターに乗って空から派手に登場、大トリにふさわしい貫禄をみせつけた。185cmの長身、厚い胸板、舞台で鍛えたバリトン・ボイス......全身からあふれる男気は趙雲もかくやと思わせる強烈なオーラ。"おとこも惚れる男の中の男"は、終始豪快な笑い声を響かせながらインタビューにこたえてくれた。

僕のかわりに趙雲をやれる役者はいない。趙雲と僕は性格もよく似ているんだ

ー「レッドクリフ」でジョン・ウー監督と初めて一緒に仕事をした感想は?

フー・ジュン「またとない勉強の機会だったね。ストーリー展開、カメラワークなどいろんな面で刺激を受けたし、何よりも監督の人柄が素晴らしかった。実は僕も自分の製作会社をもっているので、自分で監督するとはかぎらないけど、いつかは'自分の作品'と呼べるものを作りたいと思っているんだ」

ー趙雲は人気キャラクターだけにはライバルが多かったと思いますが、自分が趙雲役に選ばれた、と感じたのはどの段階でしたか?

フー・ジュン「事前に脚本は渡されていたから、先方から『乗馬の練習をしてください』という知らせがきたときに『俺に決まったな』と思ったね。すごく嬉しかった。もっとも最初から僕のかわりはいない、ほかの誰もやれるはずはない、と思ってたけどね(笑)」

ーその自信はどこから?

フー・ジュン「本当をいうと脚本をもらう前は、僕は『三国志』の武将のなかで関羽が好きだったから関羽役を希望していたんだ。でも、脚本を読んだら趙雲がものすごくかっこよく描かれてることに気がついた(笑)。それで自分からジョン・ウー監督に『趙雲をやりたい』ともちかけたんだ。その話の最中の監督の目の表情から、『俺で決まりだな』と確信したんだ。それから精悍な趙雲を演じるために頑張って体重を8kg落としたんだ。今はこのとおり、もう戻っちゃったけどね、アハハハ」

ーいえいえ、今もステキです。フー・ジュンさんご自身は、『三国志』の英雄のなかで誰に似ていると思いますか?

フー・ジュン「それはやっぱり趙雲だよ。友だち思いだし、友だちとの付き合いを大事にするし、義理人情にあついところや、名誉を欲しがったりしないところが似ていると思うよ」

ー「PartI」の阿斗救出のシーンで背中にくくりつけた赤ん坊に「参りましょう」と言ったのは、フー・ジュンさんのアイデアだと聞きました。

フー・ジュン「あのセリフは確かに僕が自分で考えたよ。俳優のアイデアをよく受け入れてくれる現場だったからね。『PartII』で趙雲が劉備に言う『私は命など惜しくありません』というセリフも、もともとの台本にはなかったけど、趙雲だったらそう言うんじゃないかと思って僕が考えたんだ」

ー「PartI」、「PartII」を通して撮影が一番大変だったのはどの場面ですか?

フー・ジュン「なんといっても阿斗救出のシーンだよ。気温が40度近くあるなか、まわりに火を放ったからとにかく暑かった。ケガもしたよ。つけていた鎧があまりに重かったから腰をひねってしまったんだ。それでもスタントマンを使わないで全部自分でやったから、もう体力の限界だったね」

ーでは逆に、やってみて「ここは最高だった!」というシーンは?

フー・ジュン「う〜ん。実は『PartII』には趙雲のアクション・シーンがたくさんあったんだ。武術指導師が趙雲のためにいっぱい見せ場を作ってくれて実際に撮影もしたんだよ。でも、張飛や関羽とのバランスを考えて全部カットされてしまったんだ」

ーそれはもったいないです!

フー・ジュン「僕ももったいないな〜と思うけど、全体のバランスを考えたら仕方ないよね。でも、逆にジョン・ウー監督は僕の役に特別な思い入れをもってくれて、あとから追加してくれたシーンもあるんだ。例えば『PartII』の決戦で槍を使って棒高跳びみたいに跳んだシーンとかがそう。だから監督にはすごく感謝しているよ。面白いことに、『レッドクリフ』に出たあと、僕はみんなからアクション俳優だと思われてるんだよ、アハハハ」

日本に来る前に娘とビーチにバケーションに行って来たんだよ

ー「レッドクリフ」で周瑜役を演じたトニー・レオンさんとは、トニーさんの結婚式に家族で招待されるほどのお付き合いと聞いています。親しくなられたきっかけはなんですか?

フー・ジュン「トニーとは今回、同じ場面で共演するのは初めてだけど、『インファナル・アフェア 無間序曲』で会ってはいるんだ。もともとはスタンリー・クワン監督の紹介で知り合ったんだよ。トニーは僕の出た『藍宇〜情熱の嵐』やドラマの『天龍八部』が大好きだって言ってくれるんだ。お互いにファンって感じだね」

ー今のその短い髪型は、役のためですか?

フー・ジュン「そうだよ。ピーター・チャン監督の『十月囲城』という映画で、孫文を狙う暗殺者の役を演じた名残りなんだ。清朝の人間だから辮髪にしたんだよ。暗殺者といっても清王朝に忠義を尽くす殺し屋だから、単なる悪役ともちょっとちがうな。僕は同じような役をやるのはあまり好きじゃないんだ。いろんな役に挑戦して役の幅を広げたいと思っている」

ー'09年の夏から年末にかけて、「十月囲城」のほかに、SFロボット・コメディの「機器侠」、オールスターキャストの歴史ドラマ「建国大業」、ムーラン伝説をもとにした「花木蘭」の4本の映画が公開されると聞いていますが。

フー・ジュン「いや、ちがうな。全部で5本あるはず。『苦竹林』(「我的唐朝兄弟」に改題)という映画を忘れているよ(笑)。今はちょうど何も撮影していない時期だけど、日本から帰ったらすぐ、上海に行ってスタンリー・クワン監督のミュージカル映画『用心跳』の撮影に入るんだ。スタンリー・クワンとは長い付き合いだけど今回は友情出演という形で少ししか出ないと思う。それから9月には『金婚2』の撮影が始まる予定。中国では去年『金婚』という、ある男性の28歳から78歳までの家庭生活を描いた全50話のTVドラマがヒットしたんだけど、これはその映画版なんだ」

ーそんなにたくさんの映画に出ているということは、「レッドクリフ」以降、忙しくて寝る暇もないのでは?

フー・ジュン「アハハ、寝る時間は自分で作っているから大丈夫だよ。娘と遊ぶ時間も大事にしている。実は日本に来る前に娘とバケーションに行って来たんだ。肌がこんなに焼けているのはそのためさ。もとから黒かったけど、ますます黒くなったね(笑)。あとは乗馬が好きだから、乗馬クラブに通っている。乗馬にはまったのは『天龍八部』の頃からだね。撮影のときとはちがって、ふだん馬に乗るときはリラックスできるし、体を鍛えるためにも乗馬はすごくいいんだ」

ー愛馬の名前はもしかして趙雲の愛馬と同じ白龍とか?

フー・ジュン「アハハ、ちがうちがう」

ー中国映画界の第一線で活躍されるフー・ジュンさんから見て、最近の中国の映画市場は成熟してきたと思われますか?

フー・ジュン「完全に成熟した、とはまだいえないね。模索しながら前進している段階だと思う。映画の観客は増えてはいるけど、都市部と農村部では映画館の設備や映画館の数にまだまだギャップがあるからね」

ー最後にお願いがあります。「レッドクリフPartII」で趙雲が周瑜と別れるときに言った、 「後会有期」=「縁があったらまた会おう」というセリフ(日本語字幕では「いずれまた」)を、ここにいるみんなに向かって言っていただけませんか?

フー・ジュン「ああ、いいよ。後会有期。縁があったらまた会おう!絶対にね!」

●撮影/金指文三夫 ●取材・文/望月美寿

プロフィール

フー・ジュン(胡軍)

1968年3月18日、北京生まれ。185cm、O型。歌手の父と元舞台女優の母の間に生まれ、中央戯劇学院を卒業後、名門・北京人民芸術戯院に学ぶ。同性愛をテーマにした'97年の「東宮西宮」、'01年の「藍宇〜情熱の嵐」で注目される。その後、「インファナル・アフェア 無間序曲」('03)など香港映画にも出演し、「レッドクリフ」で一躍国際的スターに。また、「天龍八部」('03)、「大漢風〜項羽と劉邦」('04)などの武侠ドラマでもたくさんのファンに支持されている。'08年には自らのプロダクションを設立。夫人は女優のルー・ファン。'01年に長女が誕生、家族思いでも有名。

「レッドクリフ PartI& ParII−未来への最終決戦」

中国の古典「三国志」をベースに、そのなかで最もドラマチックといわれる「赤壁の戦い」をめぐる英雄・豪傑たちの活躍を描いたスペクタクル活劇。ジョン・ウー監督が構想18年、製作費100億円をかけて作り上げ、日本だけでも「PartI」、「PartII」合わせて興行収入105億円を突破する大ヒットを記録した。周瑜役のトニー・レオン、孔明役の金城武などアジアを代表するスターたちの共演やスケールの大きなアクション・シーンがみどころ。
セルDVDはスタンダード・エディション、コレクターズ・エディション、ツインパック、スペシャル・ツインパックの4バージョン、ブルーレイは通常版、ツインパックの2バージョンが発売中。

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