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きょうの社説 2009年8月30日
◎衆院選きょう投票 歴史的選択に責任をもって
歴史的な選択の日を迎えた。これまで以上に深い思慮と自覚に基づく判断を有権者に迫
る衆院選である。国の将来や地域、家族の暮らしをより良い方向に導いてくれる政党、政治家をしっかり選ぶことが有権者の務めであるが、投票に当たり三つのことを、とりわけ強く心にとめておきたいと思う。一つは民主主義を前進、成長させるということである。日本国民は正当に選挙された国 会の代表者を通じて行動する、と憲法の冒頭に書かれている。しかし、戦後民主主義は「お任せ民主主義」とか「観客民主主義」などと揶揄(やゆ)されてきた。国民主権といっても「お上任せ」であり、政治に文句は言ってもただ眺めているだけという有権者の多さを指してのことだ。政権選択がかかる今回の衆院選は、そうした態度を改め、民主主義を本当に機能させるべきときなのだと自覚したい。 近代の民主政治では政党間の政権交代は当たり前である。日本の政党政治でも、信を失 った第1党から第2党への政権移行を「憲政の常道」と言ってきた。自民党支配が続いてきた戦後日本は、その意味で普通の民主主義国とは趣を異にしているが、与野党間の政権交代は本来「民主主義の常道」ともいえ、今そのとば口に立っているとみなすことができる。 二つ目は、政権を選択する責任の重さの自覚である。今回は本格的なマニフェスト(政 権公約)選挙の定着をうかがわせるが、マニフェストとは政党と有権者の「契約書」であり、公約に賛同して一票を投じることは契約書に判を押すのと同様、有権者も重い責任を担うことになる。マニフェストの内容をすべて把握できなくても、少なくとも最も関心のある公約が、これからどう実現されていくかを監視し続けなければなるまい。 もう一つ、有権者一人ひとりに歴史を動かす力があるということを、この機に認識した い。各種世論調査で、自公政権から民主党中心政権への交代が予想されるこの総選挙は、戦後の政治、社会の大きな転換点となり得る。熱狂より歴史的責任や使命感のような厳粛さをもって投票に臨みたい。
◎外国人受け入れ推進 英語で紹介する例文集を
石川県は外国人旅行客が一人でも散策できる観光地を目指し、年度内に「外国人受け入
れ推進プラン」(仮称)の策定を決めた。検討項目のなかに「通訳ボランティアガイドの育成」が入っているが、例えば武家屋敷や兼六園などの観光地や金箔、加賀友禅といった伝統工芸などを、英語で紹介する例文集をつくってみてはどうか。高校生程度の英語力があれば、道案内ぐらいはできるかもしれない。しかし、金箔や武 家屋敷などを英語でどう表現したらよいか、多くの人は悩むのではないか。どう表現すれば、理解してもらえるか、簡単な例文集があれば、「まいどさん」などのボランティアガイドも助かるだろう。 質の高い通訳ボランティアガイドは一朝一夕に育つものではない。育成の第1歩として 、まず簡単な道案内ができる程度の初歩的な英語を身に付けることから始めたい。 通訳ボランティアガイドには、「語学力」「地域の観光・歴史文化などに関する知識」 「もてなしの心」の三つが求められている。質の向上に向けて定期的に研修しているグループもあるが、基本的には各自の学ぶ姿勢に負うところが大きく、外国人旅行客の増加に対応した通訳ボランティアガイドの確保は容易ではない。 北陸新幹線金沢開業を見据えて県は「海外誘客10倍増構想」を掲げたが、目標達成に 向けて受け入れ態勢の整備が急務となっている。その一環として、観光、商業施設などの関係者や一般市民が例文集を活用して外国人に説明することができれば、地域の「もてなし力」向上の一助となる。また、通訳ボランティアガイドの育成にもつながっていくのではなかろうか。 推進プランでは、観光施設などでの多言語案内板の充実やホテル・旅館の対応能力向上 、飲食店での外国語メニューなども検討される。9月から金沢市が中心部の歴史的観光施設で外国語表記の案内板設置を始めるように、官民で可能な分野から速やかに受け入れ態勢を整えていきたい。
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