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【政治部デスクの斜め書き】まもなく開く「パンドラの箱」 不信の原因は「自民の姑息さ」 (2/3ページ)
昨秋から今春にかけて世界恐慌の様相を帯び、日経平均株価は一時7000円を割り込んだ。もし政府が適切な経済・金融対策を打たなかったら日本はどうなっていたのか。金融機関や中小企業は次々に資金ショートを起こし、街には失業者があふれていたかも知れない。大規模な財政出動には批判もあるが、とりあえず日経平均株価が1万円を超えるまで回復したことは麻生政権の成果といえよう。
外交・安全保障分野はどうか。インド洋での海上自衛隊の補給活動を可能とする新テロ特別措置法を延長し、公海上で海上自衛隊による海賊対策を可能とする海賊対処法も成立させ、国際社会の批判は免れた。北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射実験や核実験への対応も素早かった。ロンドンなどでの金融サミットでもそれなりに日本の存在感を示すことができた。
そう考えると、麻生政権は外交・内政ともに政策面で大きな瑕疵はなく、少なくとも及第点は与えられるのではないか。
にもかかわらず、世間の風当たりは強く、首相は「決断できない男」というレッテルを張られてしまった。
最大の理由は、外交であれ、内政であれ、何をやってもまとまらず、政局まがいの混乱を続ける自民党の体質にあるように思える。
例えば、経済・財政政策をみると、中川秀直元幹事長らが説く「上げ潮」路線と、与謝野馨財務相らの「財政再建」路線は一致点を見いだせないほど違う。外交でも、親中派と嫌中派、対北朝鮮融和派と強硬派が混在し、どれが自民党の路線なのか、はっきりしない。郵政民営化も公務員制度改革などもそうだ。片方を立てれば、片方は反発し、政局まがいの動きに入る。妥協策を打ち出せば、「骨抜き」批判を浴びる。
ただ、この自民党の体質はいまに始まったことではない。小泉元首相は、自分に反発する勢力を「抵抗勢力」に仕立て、切り捨てることでこの奇妙な政党を統治したが、安倍晋三、福田康夫、麻生とその後の3代の首相にはこのような芸当はできなかった。加えて小泉氏が郵政解散で自民党を大勝を導いたことの反動は大きく、党内対立はより深刻化し、内閣支持率が下がればトップをすげ替えてイメージアップしようとする姑息さばかりが目立つようになった。最初は面白がっていた国民も、あまりの茶番に嫌気がさし、ついには憎悪と変わってきたのではないか。