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トーク21

8月23日

真の世直しは思いやりの精神から
ドラマ「水戸黄門」をめぐって

俳優 里見浩太朗さん
ゆっくりと一歩、一歩、確実に歩む

副会長 分部 和幸さん
庶民に根差してこそ社会は発展


 今回の「トーク21」は、ドラマ・舞台・映画などで活躍する、俳優で歌手の里見浩太朗さんの登場です。国民的な長寿時代劇「水戸黄門」(TBS系)で主人公の水戸光圀を演じて、10シリーズ目。“強くて優しい黄門さま”として好評を博しています。現代の社会に必要なもの、青年への期待について、副会長の分部和幸さんと和やかに語り合っていただきました。

感謝する心の大切さ
 分部 昭和30年代に小学生だった私は、父親に連れられてよく映画館に行きました。片岡千恵蔵さん、市川右太衛門さん、大川橋蔵さん。そうそうたる大スターのお一人として、里見さんの出演作品も見ていたんです。
 里見 そのころは、東映の時代劇が一番盛んなころでしたね。
 分部 「花笠道中」という映画の中で、里見さんと美空ひばりさんが歌の掛け合いをしながら、一緒に駕籠に乗るロマンチックなシーンを今でも鮮明に覚えています。
 里見 ありました、ありました。ラストシーンですね。その駕籠に、「殺風景だから、花で編んだ輪をつけよう」と、監督が提案されましてね。それで、「花笠道中」と題名が決まったんです。
 分部 そうだったんですか。大変に懐かしいです。プロフィルを拝見しましたが、里見さんは幼いころに、お父さまを亡くされたそうですね。
 里見 日中戦争の始まった直後、私が1歳になる前に父は戦死しました。
 分部 お母さまはご苦労をされながら、愛情を込めて里見さんをお育てになったとうかがっています。
 里見 94歳まで長生きし、いつも私を心配してくれました。舞台の公演中、楽屋を訪れた時も「肩が凝ったんじゃない」と言って、80歳を超えた母が私の肩をももうとするんです。
 分部 心温まるエピソードですね。私は母を早く亡くしたこともあって、池田名誉会長の「母を忘れない時、人は道を過たない」との言葉を大切にしています。
 里見 いい言葉ですね。そういった両親や周囲の人への感謝の気持ちを、子どもたちにきっちりと教育していくことで、日本は本当の意味で平和な国になるのだと思います。
 分部 どんなに成績が優秀でも、親孝行という心が欠落した人間になってはいけないですね。先日リリースされた里見さんの新曲「愛あればこそ」にも、夫婦のきずなを通して、感謝する心の大切さが込められています。
 里見 人間は一人では生きていけません。今の若い人たちは自分一人で生きていけると思っている人が、多いのではないでしょうか。それでは、寂しい人生です。助け合う精神を、もっと持たなければいけないですね。
 分部 とても大事な視点です。
 里見 ですから、「水戸黄門」では、極力そうした親子、夫婦、師弟の愛を取り上げてほしいと、脚本家にもお願いしているんですよ。

テーマは道徳心
 分部 現在放送中のシリーズで、40周年を迎えられました。新たに林家三平さん演じる“ちゃっかり八兵衛”が一行に加わり、いっそう面白さが増しています。これほど長い間、人気が続いている原因は何でしょうか?
 里見 一つは、おじいちゃんから子どもまで、一緒に楽しめるからだと思います。悪人を懲らしめますが、決して殺さない。普通、チャンバラはたたき斬って終わりですが、黄門はそれをやらずに悪人をいさめて改心させます。
 分部 すべて印籠で丸く収めてしまいますね。
 里見 「どうして、チャンバラなのに斬らないんだ」と聞かれて、「みんな斬ってしまったら、ひれ伏す人がいなくなる」と答えたという話もあります(笑い)。
 分部 夫婦や親子の情を描く上で、必ず市井の庶民が重要な役どころで登場しますね。
 里見 そうなんです。さまざまな制約があった武家社会で、一番弱い立場にいたのが庶民でした。その庶民がどんな楽しみや悲しみを持ち、何に耐えていたのか。それを取り上げながら、黄門一行はいじめられている人、苦境に立っている人たちに、愛の手を差し伸べます。
 分部 庶民を大事にし、庶民を元気づけることで、世の中も明るくなるのではないでしょうか。創価学会も庶民の中から出てきた団体です。庶民に根差すことで、ここまで発展してきました。「水戸黄門」も武家社会だけの話でしたら、これほどの共感は呼ばなかったでしょう。
 里見 黄門というのは、実は非常に大きな権力を持っています。しかし、副将軍として「葵の紋所」は見せるけれども、心は“一人のおじいちゃん”として物事を見ているんです。
 分部 庶民に温かなまなざしを向ける勧善懲悪のストーリーには、痛快さがあります。
 里見 今の日本人が忘れかけている道徳心を思い起こしてほしいというのが、テーマです。娯楽なんですが、その中に戒めの精神をちょっと込めています。

全部、自分で決まる
 分部 収録の合間などに後輩の俳優さんたちへも、的確なアドバイスを送られているそうですね。今の青年たちへ、何かメッセージをお願いできますか。
 里見 これまでの話と重複するかもしれませんが、やはり人への思いやりですね。「わが身をつねって人の痛さを知れ」です。相手の心が分からないと、結局、自分のためにもなりません。
 分部 まさに、その通りです。
 里見 いい役者になろうとして、一生懸命に努力することは、周りの人たちの働く意欲も高揚させます。共演者が涙を流すくらいの芝居をすると、スタッフはもっとやろうという気持ちになる。
 分部 なるほど。
 里見 皆、苦労して働いているわけですから、そういう“清涼剤”のような存在が必要です。自分がそうなれば、相手もそうなってくれる。全部、自分なんです。そういう精神を持ってほしいと思います。
 分部 そのような生き方ができたら、心が豊かになりますね。
 里見 私の座右の銘は「ゆっくりと一歩」なんですよ。ゆっくりと一歩、一歩、確実に歩んでいくと、周りの物が見えます。暗い道なのか、明るい道なのか、森があるのか、川があるのか。人生が見えてきます。
 分部 とても含蓄のあるお言葉です。
 里見 でも、欲にとらわれてしまうと、周りが何にも見えなくなります。出世をあせっておべっかを使ったりせず、周囲がどうあろうと“普通の人間”でいてほしいですね。
 分部 それにしても、里見さんは本当にお若い!
 里見 人間というのは、心の持ちよう。これがすごく大事なんです。私は「まだまだ若い!」と、自分に言い聞かせています。美しい花を見たら、「美しいな、きれいだな」と思い、かわいい犬を見たら「かわいいな」と思う。いくつになっても、そういう心を持ち続けることが、若さを保つ秘けつではないでしょうか。
プロフィール
 さとみ・こうたろう 1936年生まれ。静岡県出身。56年「東映第3期ニューフェイス」として芸能界入りし、数多くの時代劇映画に出演。テレビでは「水戸黄門」(TBS系)の佐々木助三郎役、「長七郎江戸日記」(日本テレビ系)の主人公・松平長七郎役などで人気を集める。舞台では77年から座長公演を続け、歌手活動も積極的に行っている。

 わけべ・かずゆき 1948年生まれ。東京都出身。総埼玉長。青年部時代は、東京男子部長、東京青年部長を歴任。人情の機微を知る庶民派のリーダー。第一線の友の激励に東奔西走し、誠実で温厚な人柄に定評がある。“鉄桶の団結”の埼玉の同志と共に、広布拡大へ前進の指揮を執る。未来を担う青年部の育成にも、全力を注ぐ。54年入会。師範。
里見さん
分部さん
主人公・水戸光圀にふんする里見さん(左から2人目)
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