知人の体験談である。衆院選公示(18日)直後に期日前投票を済ませた後、どうも何か、し忘れた感じがする。何だっけ。そうだ。最高裁判事の国民審査に「×」つけなきゃ。と国民審査用の投票用紙を求めたところ、
「ありません」
「エ、何で?」
「印刷の都合です。国民審査の期日前投票は23日からになります」
「それができないから今日来てるんじゃないか」
投票権という国民の基本的権利を侵害された、と知人は不満顔だ。
衆院選とセットで行われてきたこの国民審査。実は期日前投票期間については扱いが異なる。衆院選は公示日翌日から投票可能だが、国民審査の方は4日遅れで始まることになっている。
なぜか。国民審査法の規定により、審査対象となる判事の名前確定を公示日まで待たざるを得ず、投票用紙の印刷・送付の物理的作業にそれだけの余裕を見なければならない、というのだ。
しかし、これはあまりにも四角四面な対応ではなかろうか。4日間で人事が変わることは現実的にはありえない。にもかかわらず、今回の場合で言えば、我が知人を含め約240万人(19~22日の期日前投票者数=推計)の国民審査権が行使されなかったのだ(23日以降国民審査のためだけに再度期日前投票する人を除く)。
もちろん、行政側も見て見ぬふりだったわけではない。2年前に法改正を図ったが、ねじれ国会で廃案になったままという。国会論戦も低調だった、と。確かに関心の薄い制度ではあるが、この権利侵害状況の放置はいかがなものか。法の番人・最高裁よ、どう見る?
毎日新聞 2009年8月28日 東京朝刊
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