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きょうの社説 2009年8月29日
◎失業率が過去最悪 まだ見えぬ「底打ち」の兆し
景気がやや持ち直してきた一方で、雇用は「底打ち」の兆しが一向に見えてこない。石
川県、富山県の雇用情勢も日々深刻さを増し、雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金の申請が急激に増えている。7月の完全失業率が過去最悪記録を更新したのは、企業の生産活動がまだまだ弱く、新規採用にまでつながらないからだろう。各企業が「企業内失業者」を抱え、四苦八苦する様子がうかがえる。景気が「二番底」へ向かうようなことがあれば、雇用環境は一気に悪化しかねない。7 月の全国消費者物価指数は前年同月に比べて2・2%低下し、5カ月連続で下落した。失業者の急増は消費の減退を招き、さらなる雇用調整の引き金を引く。明日投票の衆院選後に発足する次期政権は、経済対策に最優先で取り組んでほしい。 リーマン・ショックの痛手からいち早く立ち上がったアジアなどの新興国のおう盛な需 要で、4〜6月期は輸出が回復し、企業生産が持ち直してきた。それでも、各企業は1〜3月期で607万人に達する「企業内失業者」を抱えており、先行きの不透明感も手伝って人員抑制に努める企業がほとんどといってよい。 総務省が発表した7月の完全失業率(季節調整値)は、5・7%と前月と比べ0・3ポ イント悪化した。有効求人倍率も3カ月連続で過去最低を更新する厳しさとはいえ、むしろ数字がこの程度にとどまったのは、従業員を解雇せず、一時休業などを実施する企業に休業手当を補てんする政府の雇用調整助成金があればこそだった。 石川労働局が受理した6月の雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金の件数は、 3月の2倍以上になり、富山県では5割も増えた。みずほ総合研究所の推計によれば、もし雇用調整助成金がなかった場合、6月時点で少なくとも45万人が新たに失業し、完全失業率は6・1%にまで跳ね上がっていたという。 助成金の支給日数は300日の上限がある。景気が本格回復に向かわぬ限り、解雇に踏 み切る企業が続出しかねない。追加の経済対策が急がれるゆえんである。
◎片野鴨池の調査 北陸の湖沼保全の指標に
環境省は9月、加賀市のラムサール条約登録湿地「片野鴨池」で初めて池の水を抜く本
格的な環境調査を行う。鴨池は近年、水質の悪化や外来種の影響が懸念されており、今回は底の泥や水質、生息する動植物などを調べて、国際的に貴重な環境の保全に役立てる詳細なデータの収集が期待されている。北陸には鴨池と同じように動植物の宝庫であるとともに人々の生活を支えてきた湖沼が 多い。環境資源として産業、景観、観光、自然教育などに多面的な価値を持っており、今回の鴨池の調査結果とその後の取り組みを各地の湖沼保全の指標として活用してもらいたい。 調査はすでに水門からの放水が始まっており、1〜2週間かけて池の底まで水を抜く。 水質や底の泥を分析し、水質汚染につながる富栄養化の状態などを調べるが、分析結果によっては、水質浄化に向けてヘドロの除去方法などを検討する必要もあろう。 初めて池の水を完全に抜くことで、鴨池に生息する魚類などの生物の種類や生態の解明 が期待される。なかでも日本固有の生態系に被害を与える外来種は、これまでにも特定外来生物のウシガエルなどが確認されており、外来種の効果的な防除対策を練るために、鴨池全体の繁殖状況を把握したい。 国内有数の水鳥の飛来地である鴨池の周辺では、江戸時代から坂網猟(さかあみりょう )によるカモ猟を行いながら、餌場を確保するなど、地元の人々らが池の環境を活用し、自然と共存してきた。近年、カモ類の飛来数が減少傾向にあるが、「鴨池の秘密」に迫る今回の調査結果を生かして、将来に向けての保全の方向性を示してもらいたい。 野鳥の飛来地である北陸各地の湖沼でも、官民による各種の環境保全と地域おこしにつ なげる活動が行われている。石川県の河北潟や邑知潟、柴山潟、木場潟をはじめ、富山県の十二町潟、田尻池など、環境は違うが、水質浄化や外来種対策などは共通する課題である。鴨池の成果をそれぞれの保全活動に取り入れてほしい。
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