新型の豚インフルエンザの集団感染があった私立関西大倉高校(大阪府茨木市)で、府立公衆衛生研究所と国立感染症研究所感染症情報センターが24日から、生徒ら約520人を対象にした抗体検査に乗り出す。同校では約100人が発熱などの症状を訴えたが、発症しなかった「見えない感染者」もいたと推測。抗体の有無を調べて実際の感染規模を把握し、発症率や感染力の強さを調べる狙いだ。こうした大規模な抗体検査は全国初という。
府衛生研によると、インフルエンザウイルスに感染しても、症状が出ないケースがある。こうした「見えない感染者」も、免疫作用によって体内にウイルスに対する抗体ができるという。抗体が確認されれば、本人が気づいていなくても新型インフルエンザに感染していたことがわかる。
府衛生研などはより正確な感染実態などをつかむため、6月下旬に関西大倉高校に協力を依頼。同校は風評被害に苦しんだだけに、「そっとしておいて欲しい」という意見も出たが、「社会貢献につながるなら協力しよう」と、生徒や教職員に呼びかけた。
生徒の採血は、保護者の同意を得られた者に限定。7月下旬の締め切りまでに寄せられた同意書は学校側の予想を大幅に上回り、約480人に達した。教職員約40人も協力する。
抗体を持っていれば、新型インフルエンザにかかりにくいか、かかっても軽症ですむ可能性が高く、結果は生徒らに伝えられるという。府衛生研の担当者は「多くの生徒の協力で貴重なデータを得られそうだ。感謝したい」と話している。(坪倉由佳子、長崎緑子)