徳島市加茂名町庄山の眉山斜面からの救出劇で有名になった「崖(がけ)っぷち犬」の雌犬・リンリンが、つるぎ町内の里親の手を離れ、人に懐く訓練を受けていた県動物愛護管理センター(神山町)で飼育されている。里親の体調不良などが理由。本来は殺処分の対象だが、センターは「リンリンの存在を通じ、年間数千匹の犬猫が殺処分されている現状を考えてほしい」として処分しない方針だ。
リンリンが眉山斜面の擁壁で動けなくなっているところを救出されたのは二〇〇六年十一月。センターで過ごした後、〇七年一月に抽選で、つるぎ町内の里親に引き取られた。
しかし、うまく懐かず、〇七年十一月と今年四月の二度にわたって“家出〃。五月からセンターで人に懐く訓練を受けていたが、里親が体調を崩して引き取ることが難しくなり、センターで飼うことにした。
センターでは、里親が見つからない犬猫は預かった七日後に殺処分している。例外的に「犬のしつけ方教室」や「動物ふれあい教室」で活躍してもらう動物は飼育しているが、リンリンが教室に登場するのは難しそう。
職員にはしっぽを振って甘えるそぶりを見せても、知らない人が近づくと震えるなど、人への警戒心が強いからだ。
リンリンの飼育を決めたことについて、センターの久米明徳係長は「特別視するのはよくないが、多くの県民に、リンリンと同じような境遇の犬猫が数多く殺処分されていることを知ってもらうきっかけにしたい。動物を飼うときには、命と社会に対する責任感を持つことの大切さも訴えたい」と話している。
センターでは〇七年度、七千四百三十四匹の犬猫を殺処分し、本年度も四-九月末までに三千二百三十七匹を殺処分した。処分対象の中には、首輪を付けるなど人に飼われていたとみられる犬猫も多いという。【写真説明】センター職員に飼育されているリンリン=神山町の県動物愛護管理センター