2009-08-27 21:50:46

リストカットについての私見

テーマ:内因性の正体
過去ログでは、リストカットについていくつか記事をアップしている(参考1参考2)。これらの参考エントリでは、リストカットの意味や治癒のあり方について、オーソドックスな内容とややオカルト的な考え方も紹介している。

最近、そのリストカットの治癒のあり方を観察していて、おそらくリストカットすることは、その人にとって「セルフ・コーピング」的なものだろうと思うようになった。だからこそ、ある日、突然消失するのである。つまり精神症状の全般的な改善(つまり生物学的不調の改善)がないなら、消失はやや難しい。

見方を変えると、1回ごとのリストカットにはあまり意味がない。

どういう時にリストカットしたくなるとか、個々にその背景となる精神症状や心理的なものをあれこれ聞き出するより、平凡に精神症状の全般的な改善を目指す方がずっと効率が良いということになる。

そういう風に考えないと、なぜリストカットするのか全く聞くことすらない患者さんたちが、悉く治ってしまう理由の説明がつかない。

この考え方だが、統合失調症の人や境界例や発達障害の人もそうであるが、身体的に大きな侵襲を及ぼすような内科、外科疾患に罹患した時、精神症状が大きく改善することがあることと関係がある。これは過去ログにいくつも出てくるので参照してほしい。(例>参考

たぶん大きな骨折をしていてかなり痛がっている人が、同時にリストカットするようなことは稀だと思う。これは痛いからリストカットしないわけではない。もう十分だからである。

リストカットの衝動をつかさどる脳の部分は、たぶん扁桃体とかあの辺りだと思うが(自信なし。文脈的にどこでも大きな問題はない)、何か他の急性の外傷ないし、重い内科的疾患(例えば感染症などの高熱)が併発すると、脳の神経伝達や興奮のあり方が変化する。その結果、興奮、焦燥、不安、衝動、希死念慮などの精神症状が軽減するのである。

これを経験的に気付いた患者さんは、リストカットするようになる。

その意味では、リストカットはセルフ・コーピング的であるし、死ぬためにリストカットするのではなく、実は生きるためにリストカットしているとも言える。

それに対し統合失調症の人の腱まですべて切れてしまうほどのリストカットは本当に死ぬためにリストカットしているので意味が違う。根本的に由来が異なるのである。(Delicate cutterとCoarse cutterの相違)

時々、リストカットはガス抜きだとか言われるが、これはちょっと考え方が間違っていると思う。その理由は上に書いたとおりだ。(ガス抜きなんていうと後ろ向きだと思う。実はリストカットは前向きの所見なのである。)

リストカットする人にその理由を問い、あれこれアドバイスするのはどちらかといえば不毛だ。たいして精神症状が良くなっていないのに、リストカットを止めさせるのは少し間違ったアプローチだと思われる。(患者さんからすれば、大きなお世話だと思う人もいるであろう。)

結局、その人をあまりにもわかろうとする治療姿勢は、たいして功を奏さない上に治療的でもないということになる。

ここで1つ問題点がある。そのように現代人が容易に気付くようなセルフ・コーピングになぜ50年前の人が気付かなかったのだろうか?ということ。Delicate cutterは50年前には流行っていなかった。

これはおそらく、そのタイプの興奮、焦燥、不安、衝動がなかったんだと思う。脳のあの部分?の不調を来たす物質はこの半世紀くらいに出現し、現代人の脳に浸透したのであろう。

また脳の成熟が遅れがちになる現代の社会環境も無関係ではない。たぶん文明、文化の進歩の差によりリストカットの出現率も国、地域により異なっていると思われる。(日本でも当初はリストカットの出現が遅れた地方もあったはずだ)

その物質はすべての人をリストカットに導くわけではないが、脆弱性のある人たちの人生を変えたのである。

参考
リストカット
リストカットはどのように治るのか?
突然副作用が出てくるという謎
古典的ヒステリーは器質性疾患なのか?
統合失調症は減少しているのか?
ADHD的所見はいろいろな疾患で見られる


コメント

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1 ■私も

リスカ&アムカ止められないです

傷が消えてきたころにまた薄く少しずつ増やします…
双極性&適応障害って言われてます。希死念慮もなくならないです。

だいたい、ODして意識混乱した時に自殺未遂行為に走ってしまいます…

今はデパケンRと眠剤でマイスリー、ロヒプノール、レンドルミン飲んでます。
ロヒプノールをアルコールとODして入院しました。
その時は身体中が傷だらけでリスカもありました。覚えてませんでしたが…

2 ■ちょっと吹き出しました。

>リストカットする人にその理由を問い、あれこれアドバイスするのはどちらかといえば不毛だ。たいして精神症状が良くなっていないのに、リストカットを止めさせるのは少し間違ったアプローチだと思われる。(患者さんからすれば、大きなお世話だと思う人もいるであろう。)

↑↑↑この部分で吹き出しました淏。(笑)
確かに変につつかれて詮索・干渉・アドバイスってかなりウザいですよ。押し付けがましい。淏(笑)却って触れられたくない琴線に触れられて逆効果になった経験は私もあります。(←私が臨床心理士を苦手とする理由)本人が自分から話したがるのはアリだと思うけど、言いたくない事や説明出来ない事を、無理に聞かれるとウザいです。
っていうかリスカも抜毛も繰り返す理由なんて本人だってよく分かってはいないんだから…。
『なんで抜くの?』『なんでリストカットなんかするの?』って聞かれて完璧に口頭で理由を伝えられるなら最初からしませんもん、そもそも。

理由が自分でも分からないから、イライラして私は『リセット』という言い方をしてますけど、自傷することで、文字通り気持ちを『リセット』してるんですもん。

自傷行為そのものより、精神面全般を改善を…ってのは、すごーく分かります。
そちらの方が効率的であることも、こちら側(←患者)もアレコレ言われなくて却って楽なのも経験上よく分かります。

先日もコメント欄で少し触れましたが『本人の心の問題は、安易に立ち入れない領域』だと思うから、本人に治す気がないならそれまでですしね。

私のリアル主治医も、そーゆーのは、よく言いますね。『そもそも治す気がないなら病院に来る必要はないから』って。
結局、治したいのか、今のままがいいのかを決めるのは、患者本人の問題ですから…。

否、あくまでも私の経験上の感想なんですけどね。
良いと思います。それ位の距離感ある方が。

最後の方の脳の異状の部分は妙に納得して、この部分も笑えました。
『なるほどね』みたいな…。
そーゆー淡々と説明して頂ける部分に逆に救われますね。

3 ■無題

私も若かりし頃はリストカットしていました。
自分がとても穢れた存在である、という気持ちをやわらげるためだったかな、と思います。

希死念慮もずっと消えませんでしたが、最近はあまり頻繁ではなくなりました。
思考の中心が自分の事から母親に変わりました。
その途端、希死念慮もほとんどなくなりました。

生きる意味とか、自分の価値とかそんなことはどうでもよくなりました。
母はまだ働いていますが、そろそろ健康面にも心配な事が見られるようになって来ました。
だから、最後まで母の傍にいることにしました。

母の死を意識した時が大きな転機になったと思います。
来月には実家に帰ります。
病気の直接の原因は父親なのですが、何とかなるでしょう。

4 ■われわれの若い頃は

食べるにも苦労した記憶が。牛肉を食べれるようになったのは、大分年がいってからでした。

ここ半世紀余り、保存移動手段などが進んで、様々口にできるようになりました。

前向きな遺伝子があるとしたら、確かに、何かしらサインが出ている気もします。

5 ■わぉ!!

今まさに、数年ぶりにリストカットしてしまったところでした。
しかも、筋を付ける程度の軽いリストカットでは、大して楽になれないなーと思ってたところでもありました(笑)。

精神症状が改善するためには、危機状態程でなければいけないのかなぁとは思います。

まぁ、投薬の調整がうまく行ってるおかげで、ひどいリスカは出来ませんが(笑)

6 ■無題

オカルトとあったので
本怖みたいなお話かと思っちゃいました~(>_<)

夏の終わりって

どうして
怖い話が増えるのかなって不思議です~

辞書をひいたら
超自然的現象と出てましたが
よかったでしょうか?

7 ■無題

>ゆっこさん

多分、どこかに出ていた気もしますが、
オカルトは、ラテン語の隠されたもの、という言葉からきているそうです。


違ったらすみませんm(__)m

8 ■そうそう~♪

Delicate cutterですが、まさにーってかんじで頷いちゃいました♪
死ぬのはダメだとか小さいころに何かあったのとか言われるけど、そんな難しいことじゃなくてーピアスと同じなのに~ってずっと思ってたので。
死が怖すぎて、その恐怖から解き放たれたいから切るってことも多いから、むしろ生に執着しまくりですw

9 ■無題

自傷行為は以前やっていました。しかし突然治ったというよりはその……他人のお節介が煩くて無理矢理やめたというか。。
今また切ろうと思えばいくらでも切れる自信があります(苦笑)
しかしこのエントリーは頭の中にストンと入ってきました。
なんというか腑に落ちる説明をありがとう御座いました。

10 ■実際にはしませんが

頭の中では自分の体をあちこち切り刻みます。調子が悪いときが多いです。
これもなにがしかのセルフ・こーピング?なのでしょうか。もしそうなら、最近減ってきたので私の状態はかなり改善しているのでしょう。

11 ■delicate cutter

子供の頃から自分を痛めつけるの、結構好きでしたが、命にかかわるほどのことはしませんし、ODしても至死量までは飲みません。
何故そんな傾向があるのか、よく分からなかったんですが、kyupin先生の記事を読んで納得しました。私は“delicate cutter”だったんですね。

12 ■そんなこと言われても…

私の母は 私のリスカやアムカをみる度に

自分を傷つけるのは やめなさいよ

と 言いますが

はっきり言って 正常な状態のときに切る訳ではなく おかしくなってるときに切るのですから

自分ではどうにも出来ません

言われると 余計に腹が立ったりしてしまいます

しかも 原因は…

それもわかってないみたいだし

ただ 死ぬためではない事は確かだということは わかってきました

死にたいなら もっと確実な方法がありますからね

あまりに増えた傷の跡が ちょっと気になったので タトゥーにしてみましたが やはり 突発的なものなので 代わりにはなりませんでした

こんな体じゃ なんの仕事も出来ません^^;

形成外科の先生も 呆れて 大した処置もしてくれません

最近少なくなったけど もうなくなるかな…

13 ■体↑=心↓、体↓=心↑、体+心=1?

最近わからない内容多かったので、コメできなかったですが、今日のはわかりました!

体が痛いとか具合悪いと、そういえば精神悪くないです。
家具のカドに思いっきり足の小指ひっかけた時とか^^;

14 ■両方です

私は両方かな?出血が止まらなくて手術や縫合の経験あります。だいたい3日出血なら縫合に行きます。手術は意識がなくなった時です。

生きたいからリスカしてます。生きてる確認の為でもあります。

意識のあるリスカは中毒。意識のないリスカは解離だと思います。
扁桃体は私も何かを感じます。リスカの快感が刻まれているような感じが…一瞬の中毒状態ですから。最近は意識のあるリスカがメインなので。

15 ■表面痛がストレスや性の反射のフリーズを解除するからだと

起立性調節障害などとも関係するのだとおもいますが、中脳中心灰白質という強いストレスがかかった時に闘争逃走反応やフリーズ、繁殖やそれと関係する社会順位を表す反射やオス、強い立場のマウンティング、メスや弱い立場の反射のロードシスに部位の問題かと。

このフリーズ・ロードシスの解除は表面痛が、逆に内臓痛・深部痛は動きを止める。

高見盛が顔をバンバンやるのは解除、ボクシングで相手の動きを止めるために打つのがボディーブロー。

エゾウコギが効きそうなのも、代謝などをあげたり、性反射を変える授乳ホルモンのプロラクチンを増やすことなども関係するのだろうとおもいます。

食べるものなどの変化が、マウンティング、ロードシスの社会順位にも関係する性反射の起こりやすさを変化させ、それが思春期以降に発症する精神疾患の増減に影響しているのだとおもいますし、それに気づくことで楽になる人が増えるのにとおもっています。

16 ■私の友達も

看護学校の時は何ともなかったのに、病院で働き出してから鬱病になって、(躁鬱かも)私が止めても忙しくて人が居なくて退職できないからと必死で働いて、ついには自分がおかしくなって、看護師なので腕はできないと、足首のカット跡を見せられた時は本当に悲しかったです。

人を助ける職業で、自分が患者側にまわってしまうことって、多々あることなんだと思いました。看護師の先輩にも、服薬しながらという方々が沢山います。悲しい現実ですかね。。。

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