2008年05月09日
米国ネブラスカ州オマハで暮らしているスティーブ・ワイルダーさんという55歳の男性が、ある晩、異常な息苦しさに目を覚ました。いや、もはや“息苦しい”を通り越して、完全に呼吸不能の状態に陥っていた。
この状態が数分も続けば自分は死んでしまう。911にダイヤルしたところで、救急車が到着したときには、もう手遅れだろう。・・・と、ここまでなら、仮にわれわれが同じ状況に立たされたとしても、だいたい同じことを考えるはずだ。
しかし、そう考えた時点でもう思考停止に陥り、呼吸ができない苦しさにもがき苦しむばかりだろう。パニックに陥って、のた打ち回ったりもするだろう。
ところが、ワイルダーさんはパニックに陥ったりしなかった。まず、彼は呼吸ができなくなった原因に見当がついていた。呼吸ができなくなったのは、おそらく喉(上気道)が腫れているためだ。
ならば、気道を確保すればよい――と、彼はあっさり結論を出す。刻一刻と迫り来る生存へのタイムリミットの中、ワイルダーさんは冷静沈着に行動を開始する。
息ができないままキッチンに駆け込み、ステーキ用ナイフを取り出す。喉の皮膚の上から気管の位置を探り、そこに刃先を当てる。一気に切り裂く。気管に穴を開ける。
もちろん出血はあったが、なんとか息が通った。窒息死を寸前で回避した瞬間だった。
つまり、ワイルダーさんは自らの手で自らの喉に“気管切開術”を施し、見事に成功を収めたことになる。
通常は、気管を切開した後、開いた穴にカニューレという管を挿入する。気道切開のシーンは、テレビドラマなどで見たことがある人が多いだろう。医療施設内ではなく、飛行機内などで誰かが呼吸困難に陥ったときに、居合わせた医師が緊急に気道切開術を施し、カニューレの代用としてボールペンの胴体部分を使う・・・といったシーンも、ドラマや映画などでたまに見られる。
自らに冷静に気道切開術を施したワイルダーさんは医師だったのかというと、答えはNOである。だが、彼は自分の喉の症状とその対処法のことをよく知っていた。というのも、ワイルダーさんは数年前に咽喉ガンを患ったことがあった。その当時、今回と同じように喉が腫れて呼吸ができなくなるという症状を体験していたのである。
自らの手で自らの命を救ったワイルダーさんはその後、病院に運ばれた。医師らは、喉の切開部分が治癒すれば、今後特に悪影響が生じることはないだろうと見ている。
ワイルダーさんが危機一髪の状況から生還を果たすことができたのは、呼吸困難の原因とその対処法を彼が知っていたからである。それに加えて、冷静さを失わなかったことが大きい。いくら解決策を知っていてもパニックに陥っていれば、あっという間にタイムリミットが訪れていたことだろう。
なお、ロシアの耳鼻咽喉科医が報告した“仰天症例”(下記「関連記事」参照)には、自分の喉に詰まった肉をワイヤーブラシで取り除こうとした女性が食道を傷つけて死亡したという事例が含まれている。
■ Source: Omaha man uses steak knife to perform self-tracheotomy
【関連記事】
しかし、そう考えた時点でもう思考停止に陥り、呼吸ができない苦しさにもがき苦しむばかりだろう。パニックに陥って、のた打ち回ったりもするだろう。
ところが、ワイルダーさんはパニックに陥ったりしなかった。まず、彼は呼吸ができなくなった原因に見当がついていた。呼吸ができなくなったのは、おそらく喉(上気道)が腫れているためだ。
ならば、気道を確保すればよい――と、彼はあっさり結論を出す。刻一刻と迫り来る生存へのタイムリミットの中、ワイルダーさんは冷静沈着に行動を開始する。
息ができないままキッチンに駆け込み、ステーキ用ナイフを取り出す。喉の皮膚の上から気管の位置を探り、そこに刃先を当てる。一気に切り裂く。気管に穴を開ける。
もちろん出血はあったが、なんとか息が通った。窒息死を寸前で回避した瞬間だった。
つまり、ワイルダーさんは自らの手で自らの喉に“気管切開術”を施し、見事に成功を収めたことになる。
通常は、気管を切開した後、開いた穴にカニューレという管を挿入する。気道切開のシーンは、テレビドラマなどで見たことがある人が多いだろう。医療施設内ではなく、飛行機内などで誰かが呼吸困難に陥ったときに、居合わせた医師が緊急に気道切開術を施し、カニューレの代用としてボールペンの胴体部分を使う・・・といったシーンも、ドラマや映画などでたまに見られる。
自らに冷静に気道切開術を施したワイルダーさんは医師だったのかというと、答えはNOである。だが、彼は自分の喉の症状とその対処法のことをよく知っていた。というのも、ワイルダーさんは数年前に咽喉ガンを患ったことがあった。その当時、今回と同じように喉が腫れて呼吸ができなくなるという症状を体験していたのである。
自らの手で自らの命を救ったワイルダーさんはその後、病院に運ばれた。医師らは、喉の切開部分が治癒すれば、今後特に悪影響が生じることはないだろうと見ている。
ワイルダーさんが危機一髪の状況から生還を果たすことができたのは、呼吸困難の原因とその対処法を彼が知っていたからである。それに加えて、冷静さを失わなかったことが大きい。いくら解決策を知っていてもパニックに陥っていれば、あっという間にタイムリミットが訪れていたことだろう。
なお、ロシアの耳鼻咽喉科医が報告した“仰天症例”(下記「関連記事」参照)には、自分の喉に詰まった肉をワイヤーブラシで取り除こうとした女性が食道を傷つけて死亡したという事例が含まれている。
■ Source: Omaha man uses steak knife to perform self-tracheotomy
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この記事へのコメント
1. Posted by jacklegdoc 2008年05月09日 20:50
読むだけで痛々しい話ですが、「死ぬぐらいならやれるだけやってやろう」と思っての行動でしょうか。幼少の頃に喉に氷が詰まったのを思い出しました。
2. Posted by るる 2008年05月10日 00:20
自分を助ける方法を知っていたとしても実行できるというのがすごいな・・・。
最近更新の頻度があがっていてとても嬉しいです♪
最近更新の頻度があがっていてとても嬉しいです♪
3. Posted by 名無し 2008年05月10日 23:52
ジョジョに出てきそうな覚悟の良さだな
4. Posted by 2008年05月15日 03:01
自宅で一人喘息が悪化したときに、すぐ息が切れるを通り越して「呼吸以外の行動を取ると酸素が足りなくなる」状態になったことがある。
そんな状況でも救急車を呼べず「誰か来るかも」「我慢してたら少しは症状が改善するかも」と思って何も行動が起こせませんでした。
喉を開く覚悟も驚愕ですが、そうしなければ死ぬと判断出来たことがすごいと思う。
そんな状況でも救急車を呼べず「誰か来るかも」「我慢してたら少しは症状が改善するかも」と思って何も行動が起こせませんでした。
喉を開く覚悟も驚愕ですが、そうしなければ死ぬと判断出来たことがすごいと思う。
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