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きょうの社説 2009年8月28日
◎学力テスト見直し 「学力向上」に資する改善を
3回目の結果が公表された全国学力テストは、民主党が2011年度から小6、中3の
全員調査を抽出方式に切り替える方針を固め、同党が政権をとれば縮小される可能性が出てきた。多額の費用がかかるとして全面廃止を求める一部の声はあまりに性急な意見としても、毎年実施し、学年全員が受ける必要があるのかという指摘は、回を重ねていけば当然予想された論点である。石川、富山県では今回も全教科が全国平均を上回り、上位を占めたものの、各科目の順 位には変動がみられ、富山県では昨年より小6が下がったのが目につく。それらの詳細な分析を含め、3回を重ねた学力テストのデータには授業改善に生かせるヒントが詰まっている。今後見直すとしても、財源論に偏りすぎず、子どもの学力を向上させるという視点を重視したバランスある議論を望みたい。 民主党が全国学力テストで打ち出した抽出方式は、一部の学校に絞って実施するもので 、政府の無駄遣いを精査する「事業仕分け」で全国一斉方式の見直しが取り上げられた。抽出への切り替えで、文部科学省の今年度経費約58億円は大幅に圧縮できると主張する。抽出方式では対象学年を増やし、従来の教科以外も調査する方向である。自民党は公約で現行方式の継続を掲げており、「全員」と「抽出」のどちらが望ましいのか問われることになる。 3年間で学力の全体傾向は浮かび上がっており、抽出方式で今後の変化を効率的に把握 するというのも一つの考え方だろう。一方で、専門家の間では、学校一つ一つの学習課題を探るには全員調査が必要として、その意義を強調する声もある。 石川、富山県では、正答率の高い学校の指導方法を研究するなど、学力テストを機に教 委や学校現場で組織的な学力向上策が活発化した。客観データに基づくこうした取り組みは好ましいことである。学力テスト見直しでは、高まってきた授業改善の機運に水を差さない配慮もいる。 たとえ政権交代しても、学力向上策が教育政策の柱であることに変わりはない。求めら れるのは子ども本位の議論である。
◎米で日本車快走 環境技術で圧倒したい
米政府による低燃費車の購入支援制度で売れた新車のうち、日本メーカー全体のシェア
が47%と半数近くに達し、日本車人気の高さが改めて浮き彫りになった。優れた環境技術が日本車の最大の強みであり、ハイブリッド車や電気自動車(EV)で世界をリードする技術にさらなる磨きをかけてほしい。米オバマ大統領は、電気自動車や次世代ハイブリッド車の性能のカギを握る高性能電池 の開発に向け、ビッグスリー(米自動車3大メーカー)とリチウムイオン電池開発で提携した企業などを対象にした総額24億ドル(2280億円)の無償供与を発表し、次世代エコカーの世界競争で日本から主導権を奪還する決意を示した。電池開発への資金提供は、環境技術で遅れを取るビッグスリーへの露骨な支援策である。追われる立場の日本メーカーは、今のうちに、技術面での優位はもとより、コスト面で圧倒的な差をつけておきたい。 米国の低燃費車の購入支援は、募集開始からわずか10日で10億ドル(950億円) の予算が消化され、追加投入された増額の20億ドル(1900億円)分も3週間足らずで底をついた。制度自体が約1カ月で打ち切られてしまったのは、予算不足という理由だけでなく、売れるのは日本車ばかりで、下取りに出された車の上位10車種がすべて米国産車という現実への批判を恐れたとの見方もある。 日本でもエコカー減税や補助金制度を追い風に、低燃費車の売れ行きが好調だ。トヨタ 自動車のハイブリッド車「プリウス」は、6月の車名別販売台数で、軽自動車を抑え、第1位に躍進した。以前は、ほとんど利益が出ないと言われてきたハイブリッド車も量産効果とコストダウンで価格競争力が高まり、利益を生む孝行息子に育ってきた。 自動車及び部品の出荷額は、全製造業の約15%を占め、関連産業までを含めた従業員 数は500万人を超える。日本経済を支える基幹産業がい競争力を持っているのは心強いが、電気自動車は、異業種からの参入チャンスや技術革新の可能性もあり、油断は禁物だ。
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