斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第11回 もーろー日記 3Dで飛び出す!?特殊映像の夏!!(4)
斉藤守彦
【この夏休み興行のトピックは、
やはり「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」であった。】
8月某日。
さる会合の後で、某シネコン・チェーンのヒトとお茶&雑談。
「どーでしたか?この夏休み興行は?」
「いやあ、うちはおかげさまで良かったんですよ。というのも、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』を上映出来ましたから」
「全国120スクリーンという展開だから、上映出来なかったシネコンも少なくないようですね」
「そう。今年はヱヴァを上映出来たシネコンと、出来なかったシネコンでは、もの凄く成績に差が出たんですよ。『ポケットモンスター』とか『ハリー・ポッターと謎のプリンス』はシリーズものなんで、どの程度の成績か予想がつきます。でも、ヱヴァの場合は予想を上回ってました」
「僕も最初は、前作の『序』の20億円を上回るだろと予想していたけど、まさか30億円の大台を超えるとは」
「8月1日からスタートした『サマーウォーズ』も、大きな展開ではないが故に、うちでは好成績です」
「あ、やっぱり。こちらも全国127スクリーン体制だから、1スクリーンあたりの興収は高くなりますね」
「ヱヴァと観客の流れが、繋がってる感じですね」
「キャラクターデザインが、同じ貞本さんだから、確かにイメージは繋がりますね。ヱヴァほどではありませんが、今のペースだと、興収10億円は行きそうです」「そんなに!! 関連商品も、ヱヴァほどの種類はありませんが、よく売れています」
本稿執筆時点での報道によれば、「サマーウォーズ」は累計興収9億3364万4650円。お盆興行で客足を伸ばし、特にファミリーと若者層が増えたとのこと。また第2週興収が前週対比107.6%、第3週週末興収も、前週末対比118.5%と、尻上がりに観客数がアップしている。これは特筆すべき現象だ。
【2Dでも傑作の「カールじいさんの空飛ぶ家」は、
興収100億円目標!!】
8月某日。
ウォルト・ディズニー・スタジオ試写室にて「カールじいさんの空飛ぶ家」の試写を鑑賞。とはいえ同社試写室には、まだ3Dの設備がないため今回は2D上映となったが、筆者としては待ちに待った試写だった。近来これほど「いいよ!!」「面白いよ!!」と評判の高い作品はなく、宣伝部からの「なるべく早く見てください。とにかく面白いから」とのお誘いはもちろん、今回は、いつもクールな営業部のヒトからも「3D効果も、ドラマとしても素晴らしい出来ですよ!!」と、強いプッシュがあった。アメリカで3Dバージョンを見てきた、「アニメ!アニメ!」編集長も「いやあ、面白かったですう!!」と絶賛。
期待に胸ときめかせ、開映時刻を待っていると、営業部のえらいヒトが「こんちゃ」とやって来て、「マジで100億円、目指そうと思ってるんですよ」と、耳元でボソッ。
ほお。
ディズニー=ピクサーのCGアニメ映画では、「ファインディング・ニモ」が興収110億円、「モンスターズ・インク」が94.95億円を記録しているが、この数年は「カーズ」19.43億円、「レミーのおいしいレストラン」32.73億円、「ウォーリー」40億円と、高アベレージながら、今ひとつ往年の勢いが見られなかったのは事実。かくなる上は「モンスターズ・インク」を超え、あわよくば「ファインディング・ニモ」に追いつき追い越せという意気込みは、頼もしい限り。
作品自体も、笑わせ、泣かせ、手に汗握らせ、大いに楽しませる作品でありながら、最後には感動で締めくくるという、エンタテインメントのお手本のような出来だった。3Dバージョンを見る日が、今から楽しみだ。
ジョン・ラセターをはじめとするピクサーのスタッフは、かねてより3D映像に取り組むつもりだった。ところが彼らの納得出来るクォリティに技術が到達していなかったが、ようやくおメガネに叶うレベルになった。
そこで手がけたのが「カールじいさんの空飛ぶ家」ということだ。今後この作品の動向は、注目必至。12月5日の公開に向けて、大々的なプロモーションが行われるだろうが、そうした派手なプロモーションに負けてしまう作品では決してないことは保証しよう。
2009年の夏は、まさしく特殊映像の夏であった。日米の特殊映像たちのこれからに、幸多かれ!!
(1) 乱立する3Dフォーマット。どれが一番飛び出して見える?
(2) 「劇場版仮面ライダーディケイド」と、 「ボルト」3Dバージョン
(3) 大ヒット!!「劇場版ディケイド」と、3D効果抜群の「シンケンジャー銀幕版」
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