増加傾向にある万引き被害を抑止するため、警視庁が設置した有識者らによる調査研究委員会(委員長、坂井昭宏・桜美林大教授)は26日、店側から警察への通報率が2割程度にとどまっている現状を踏まえ、被害届の手続きを簡素化するよう提言した。負担の軽減で、店側に被害の全件届け出を促し、万引きが犯罪だと認識させることが狙い。提言を受け警視庁は、被害届の書類を簡易な様式に変更するなどの具体策を検討する。【町田徳丈】
08年の東京都内の万引き検挙・補導者数は1万2695人で、5年前の約1・5倍に増加している。同委員会は09年の検挙・補導者のうち1050人に聞き取り調査し、動機などを分析した。
万引きなどの再犯者226人を詳しく調べたところ、発覚回数と通報回数を比べた通報率は21・5%で5回のうち4回は見逃されていた。同委員会は「万引きしても通報されなかった経験が犯行の繰り返しにつながっている」と指摘している。
少年に動機を尋ねたところ「ゲーム感覚」との回答が26・8%と最多で、高齢者を含む全検挙・補導者の約6割が「捕まると思っていなかった」「何も考えていなかった」と回答。同委員会は、代金を弁償すれば警察に通報しない店側の対応も規範意識の乏しさの一因になっているとみて、店舗責任者に全被害を届け出るよう求めた。
一方、NPO法人「全国万引犯罪防止機構」(万防機構)が、小売業者に書類作成などで警察署に滞在した時間を聞いたところ、30分~1時間が33・6%で最も多く、2~3時間も13・5%あった。万防機構の福井昂事務局長は「警察に行くと時間がかかり、個人商店では店の営業を一時停止せざるをえない。売り上げへの影響を嫌って被害届を出さないケースがある」と話している。
毎日新聞 2009年8月27日 東京朝刊