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きょうの社説 2009年8月27日
◎ルビーロマンの課題 官民で商品化率を高めたい
出荷の最盛期を迎えている石川県産の高級ブドウ「ルビーロマン」が日照不足や長雨の
影響を受けて、出荷量が当初目標を大幅に下回る見込みという。まだ発展途上といえるルビーロマンの栽培技術の研究に、新たな課題が加えられたかたちである。県が独自に開発したルビーロマンを石川ブランドの戦略農産物として定着させるには、まず安定生産が不可欠であり、生産農家と県の研究機関が一体となって栽培技術の向上に努めてもらいたい。ルビーロマンの昨年の出荷量は834房(約550キロ)で、商品化率は約50%だっ た。市場への投入は初めてということで、出荷基準を厳しくし、一房450グラム以上のものに限定した関係もあるが、規格外のものが多くて、当初予定量(1500房)の半分しか出荷できなかったのである。 本格的な「流通元年」に位置づけられた今年は、栽培面積も拡大され、出荷基準を本来 の一房350グラム以上にして、昨年の5倍近い約4000房の出荷を見込んだ。しかし、実際の出荷見通しは2000〜2500房で、向上をめざした商品化率は昨年と同じく50%前後とどまりそうだという。 その主な原因として、日照不足や湿気などの影響で、果実が裂ける「裂果」が多く発生 したことが挙げられる。ただ、ルビーロマンはもともと、過度に大粒化をめざすと裂果を生じやすい問題点が指摘されており、天候不順のためだけでなく、生産者の栽培技術がまだ確立されていないことも考えられる。今年の裂果の多さについて、県農業総合研究センターでさらに究明してもらいたい。 同センターは「障害果」の発生を減らし、より高品質のルビーロマンを安定的に栽培す る技術研究に取り組んでおり、その成果と指導に期待したい。今後、市場を全国に広げるとなれば、品質を落とさずに流通させる方法を研究することも重要である。 県内のブドウ生産農家では、若手有志が自主的に研究グループを作り、栽培技術の研修 などを行う頼もしい動きも出ている。こうした熱心な担い手に対する行政の支援も望まれる。
◎イラク油田開発合意 気掛かりな法整備の遅れ
新日本石油など日本企業3社とイラク政府が、イラク南部にあるナシリヤ油田の開発で
基本合意に達した。イラクで大型の「日の丸油田」開発の権利を獲得することは、日本のエネルギー戦略にとってきわめて重要であり、円滑な事業化を期待したいが、外国資本の参入による油田開発の要であるイラク国内の法整備の見通しが立っておらず、大きな不安材料を抱えて第一歩を踏み出すことになる。イラクは世界3位の原油確認埋蔵量を誇る石油大国である。イラク戦争で荒廃した国土 の復興資金を石油収入で賄うため、政府は油田開発の権利を約40年ぶりに外資に本格開放し、大幅な原油増産をめざしている。 そのため、油田の開発権限や収入の分配方法、外資の参入条件などを定めた石油法案を 2007年に閣議承認し、昨年、連邦議会に提出した。しかし、石油利権を独自に確保したいクルド自治政府と中央政府が激しく対立し、法案成立のめどは立っていない。 自治政府側は自前の法律で外国企業と油田開発契約を結ぶ事態になっており、中央政府 も石油法の成立を待たずに外資導入に踏み切った。ことし6月に行った油田開発の第一次入札では、国際石油資本の英BPと中国石油天然ガス集団の企業連合が、イラク南部のルメイラ油田を落札した。 新日本石油など日本勢は、これに対抗するかたちで、個別契約でナシリヤ油田開発の基 本合意にこぎつけたのである。 歳入の90%前後を石油収入に頼るイラクは、原油価格の急落で財政が悪化しており、 原油増産が急務となっている。老朽化した生産設備を外資の技術で補い、08年で日量240万バレルの産油量を、15年までに600万バレルに引き上げたい考えという。 しかし、石油生産の基本ルールが正式に決まっていないため、参入に慎重な外資も多い 。中央政府には治安の安定とともに、石油法の成立を急ぐよう求めたい。民族対立で法律が未整備のままでは、油田開発による国土復興が頓挫することになりかねない。
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