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選択を前に:’09香川の課題/下 高速料金引き下げ、他交通機関大打撃 /香川

 ◇フェリーも鉄道も活用を 「思いつき政策」批判

 今春始まった高速料金引き下げ。地域や経済の活性化、生活支援をうたった政策だ。瀬戸大橋など三つの本四連絡橋に影響は大きく、5月の連休中、交通量は前年比約1・3~1・7倍。有名うどん店には行列が続き、全国的な話題になった。

 しかし、観光業界は意外と冷ややかだ。高松ホテル旅館料理協同組合の三矢昌洋理事長は「もともと週末型の産業が混乱しただけ。経済活性化ではない」という。経営する旅館では、土曜には収容人員の3倍の予約が殺到。一方、平日は3分の1に減った。結果的に全体の売り上げは約2割落ちた。「宿泊できないお客様に申し訳ない。観光振興というが、政府は現場をまったく分かっていない」と憤る。

 他の交通機関にとっても大打撃だ。四国運輸局によると、4~6月、高松-宇野間のフェリーの乗客数は、前年比約3割減、輸送台数は約4割減となった。JR瀬戸大橋線でも乗客が約1割減った。

 「国道フェリー」(高松市)は、かき入れ時のはずの5月の大型連休期間に減便を実施。その後は週末便を減らし、今月10日には全日の減便に踏み切った。売り上げはほぼ半減、取締役の宮脇幸次さん(46)は「橋の通行料値下げのたび、経営努力で割安料金を実現してきたが、これ以上はできない」と話す。

 一方、宮脇さんは「航路維持には使命感を持っている」と話す。県は災害時にフェリー会社への応援要請を取り決め「四国の地理的特性上、重要な輸送手段の一つ」としている。また、国がCO2削減策として進めてきた、物流にフェリーと鉄道を活用する「モーダルシフト」の担い手でもあるからだ。

 物流業界にも不安が広がっている。運送会社「三豊運送」(観音寺市)社長の田中正治さん(64)は「ひどい渋滞で荷物が予定通りに運べない」と話す。週末の東京便は5時間近く出発時間を早めた。また「高速が割安になれば、業界はそちらに移行せざるを得ない。モーダルシフトに逆行し、ドライバーの長時間労働にもつながる」と指摘する。運賃の過当競争で業界全体が疲弊する恐れもあり「フェリーも鉄道もバランスよく活用できるのが重要。こんな思いつきの政策は受け入れられない」と批判する。

 高速料金を巡っては、週末1000円や無料化といった与野党の政策が、派手に展開されている。しかし、財源の不透明さや負の影響への議論は十分ではない。明確な説明が求められる。【馬渕晶子】

毎日新聞 2009年8月15日 地方版

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