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【正論】日本大学教授・百地章 「対案」にならない小沢提言

2007.10.30 03:16
このニュースのトピックス小沢一郎

 ■民主のテロ対策はいまだ固まらず

 ≪試される政権担当能力≫

 テロ対策特別措置法の期限切れを前に、政府は自衛隊による補給支援の対象をインド洋上の外国艦船に限定する新法案を提出した。これに対し、民主党内ではいまだに意見がまとまらず、対案を法案として提出するかどうかさえ決まっていないという。

 今のところ、小沢一郎党首の「提言」にあった、アフガニスタン本土のISAF(国際治安支援部隊)関連の民生支援に絞って民間人を派遣する案が有力なようであるが、その警護のため自衛隊を派遣することについては、党内でも反対が強いと聞く。いよいよ本格的審議という段になって、海上自衛隊や守屋武昌前次官をめぐるさまざまな疑惑が噴出してきたが、民主党としてはこれを奇貨として問題を先送りすることなく、対テロ問題に正面から取り組み、責任政党としての役割をきちんと果たすべきであろう。わが国の外交や防衛の基本にかかわるこの問題について、政府案に反対するだけで対案一つ示せないようでは、政権担当能力が疑われても仕方あるまい。

 ≪国連軍と「主権の委譲」≫

 ところで、小沢提言ではISAFへの参加はもちろん、自衛隊による武力行使さえ可能とされており、対案の作成に当たっては、当然この党首提言との整合性も明確にすべきである。

 かつて自民党時代に、小沢調査会は次のように提言した。「集団的安全保障と自衛権とは別のものであり、もし国連加盟国が国連に軍隊を提供した場合、軍の提供までは『国権の発動』であるが、発動後の国連軍の行動は『国連の指揮下』にあり、各国の指揮、命令権は及ばなくなる」と。つまり、憲法9条が禁止しているのはあくまで「国権の発動」としての戦争や武力行使だけだから、「国連軍」としてなら自衛隊の武力行使も可能としたわけであった。

 今回、小沢氏が「国連の決議でオーソライズされた国連の平和活動に日本が参加することは、ISAFであれ何であれ、何ら憲法に抵触しない」「国連の活動に積極的に参加することは、たとえそれが結果的に武力の行使を含むものであっても、何ら憲法に抵触しない」と述べているのは、恐らくこの提言を念頭においてのことであろう。

 しかし問題は「国連軍」の意味であって、小沢調査会の提言と今回の小沢提言とではその内容が異なる。もしそれが国連憲章42、43条に基づく「正規の国連軍」を指すならば、小沢調査会の言うように、軍を国連に提供した後はその指揮、命令権は国連加盟国の手を離れ、安保理事会に委ねられたものとみることもできないことはない。加盟国は国連との間で特別協定を結ぶことにより、主権の一部を国連に委譲したと解することも可能だからである(ただし、わが国がこのような特別協定を結び、武力行使を目的として自衛隊を国連に派遣することについては、憲法上、疑義がある)。

 ≪多国籍軍と集団的自衛権≫

 だが、このような「正規の国連軍」はいまだ実現しておらず、これまでに編成された「国連軍」はすべて「多国籍軍」にとどまっていた。国連の指揮下にあった湾岸戦争時やイラク派遣の「国連軍」、それにNATO指揮下のISAFも全て多国籍軍である。この種の「多国籍軍」は国連決議によって一定の正当性が担保されてはいても、最終的な指揮、命令権は各国に留保されており、軍隊派遣の根拠も各国の個別的ないし集団的自衛権に基づいている。

 例えば、現在イラクに派遣されている「多国籍軍」は、参加国の集団的自衛権の行使として行動しており、対テロ戦争の一環として位置づけられたインド洋上での活動も、テロリストの移動や麻薬、武器などの運搬を阻止することを目的とした参加国の個別的ないし集団的自衛権の行使であるとされている。そのため、政府見解に基づき、集団的自衛権の行使が禁止されているわが国では、多国籍軍への参加は認められず、イラクではあくまで後方での人道・復興支援にとどまっていたし、インド洋上でも、「武力の行使」に当たらない多国籍軍への給油に限定して国際貢献を果たしてきた。

 この点、小沢氏は今回の提言の中で、「国連の平和活動は国家の主権である自衛権を超えたものです」と述べているが、これは「正規の国連軍」と「多国籍軍」を混同したものといえよう。小沢氏が、もし本気でISAFに自衛隊を派遣したいのなら、集団的自衛権の行使を容認するよう、政府に対して憲法解釈の変更を求めるのが筋ではないか。「民主党が政権をとったら」などという仮定の話では、特措法の「対案」たりえないと思われる。(ももち あきら)

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