広島少年院(東広島市)の暴行事件は11日、少年院改革を実践したとして専門家らの注目を集めた教官トップの逮捕という新たな局面を迎えた。「少年院の模範」として注目された当時、首席専門官として処遇部門を取り仕切っていた向井義容疑者(47)。広島地検は、向井容疑者が、既に起訴した4教官の暴行容疑にも影響を与えたとみており、全容解明を進める構えだ。
「少年院の新たな処遇方法を作り上げた人物。4教官との結びつきを捜査する中で容疑が浮かび上がった」。地検の信田昌男次席検事は逮捕後の記者会見で説明。4教官の暴行がエスカレートした背景を解明する重要な鍵は、向井容疑者の取り調べにかかっているとの見方を示した。
関係者によると、向井容疑者は宇治少年院で発達障害に着目した個別処遇プログラムを実践。先進的な取り組みとして教育関係者の評価を得た。2005年4月に赴任した広島少年院でも同じ手法を続けたとされる。
取り組みは政府の教育再生会議分科会で紹介され、向井容疑者は全国の講演会などに講師として招かれた。
地検の調べでは、向井容疑者の暴行容疑は着任の約5か月後。4教官のうち、当時、部下だった2教官は洗剤を使った暴行などについて、向井容疑者の方法をまねたという趣旨の供述をしているという。
法務省広島矯正管区はこれまで暴行の詳しい実態や暴行が横行した背景について「捜査への支障」などを理由に説明を拒んできた。教官トップの暴行が先進的といわれた処遇の延長線上にあるのか、突発・偶発的なのか、説明責任を果たす必要性が一層、高まった。
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