finalventの日記

2009-08-24

麻生失言について推論している内にオリジナルが公開されてしまったのだけど、まあ、私の推論はこうでした。

 オリジナル⇒首相「金ないのに結婚するな」 : 動画 - 47NEWS (よんななニュース)

 オリジナルが出るなら推論するまでもなかったけど、まあ、私の推論はこうなっていた。

 その前に原則

  • 全体のコンテクスト(文脈)を理解する。(1)問いに答えている、(2)若者に人生経験者が結婚を説いている。
  • 「(2)若者に人生経験者が結婚を説いている」の話題は何か? 尊敬ということ。
  • 話者のポジションを理解する。(麻生さんはカトリック信者だ)
  • 具体的なディテールは原典に近い
  • 矛盾する言明にはそれを解くロジックが隠れている。ここでは、「金がねえなら結婚しない方がいい」と「人それぞれだからうかつには言えない」は矛盾している。

 テキストはこう

朝日(参照

 ---「若者に結婚するだけのお金がないから結婚が進まず少子化になるのではないか」

「金がねえなら結婚しない方がいい、おれもそう思う。うかつにそんなことしないほうがいい。おれは金はない方じゃなかった。だけど結婚は遅かった。稼ぎが全然なくて尊敬の対象になるかというと、なかなか難しい」

 

zakzak参照

 ---「結婚資金が確保できない若者が多く、結婚の遅れが少子化につながっているのではないか」

「金がないなら結婚しない方がいい。稼ぎが全然なくて(結婚相手として)尊敬の対象になるかというと、なかなか難しい感じがする」

「自分は金がないわけではなかったが、結婚は遅かった。あるからする、ないからしないというものでもない。人それぞれだと思うから、うかつには言えないところだと思う」

 

日経(参照

 ---「金がないから結婚が進まず少子化になるのでは」

「金がないのに結婚はしない方がいい。人それぞれだからうかつには言えないが。稼ぎが全然なくて尊敬の対象になるかというと、なかなか難しいのではないか」

 

日経(参照

 ---「金がないから結婚が進まず少子化になるのでは」

「金がないのに結婚はしない方がいい。人それぞれだからうかつには言えないが。稼ぎがなくて尊敬の対象になるかというと難しいのではないか」

 

スポニチ(参照

 ---「結婚資金が確保できない若者が多く、結婚の遅れが少子化につながっているのではないか」

「金がないのに結婚はしない方がいい。オレは金がない方ではなかったが、43(歳)で結婚した。稼ぎが全然なくて(結婚相手として)尊敬の対象になるかというと、なかなか難しい感じがする」

「(結婚は)金があるからする、ないからしないというものでもない。人それぞれだと思うから、うかつには言えないところだと思う」

 

時事(参照

 ---「お金が掛かるから結婚できず、少子化が進んでいるといわれているが」

「金がないなら結婚はしないものだ。うかつにしない方がいい」

「女性から見て、しっかり働いているのは尊敬の対象になる。稼ぎが全然なくて、尊敬の対象になるかというと、よほど何かがないと難しい」

 

毎日(参照

 ---学生から、若者に結婚資金がなく、結婚の遅れが少子化につながっているのではないか、と質問されたのに答えたものだが

「そりゃ金がねえなら結婚しない方がいい。うかつにそんなことはしない方がいい。金がおれはない方じゃなかったけど、結婚遅かったから」

「(金が)あるからする、ないからしない、というもんでもない。これは人それぞれだと思う」

「ある程度生活していけるものがないと、やっぱり自信がない。稼ぎが全然なくて尊敬の対象になるかというと、よほどの何かがないとなかなか難しいんじゃないか」

 聖書学的に断片をグループ化する。

a---「若者に結婚するだけのお金がないから結婚が進まず少子化になるのではないか」

b---「結婚資金が確保できない若者が多く、結婚の遅れが少子化につながっているのではないか」

c---「金がないから結婚が進まず少子化になるのでは」

d---「結婚資金が確保できない若者が多く、結婚の遅れが少子化につながっているのではないか」

e---「お金が掛かるから結婚できず、少子化が進んでいるといわれているが」

f---学生から、若者に結婚資金がなく、結婚の遅れが少子化につながっているのではないか、と質問されたのに答えたものだが

 

A

金がねえなら結婚しない方がいい、

金がないなら結婚しない方がいい。

金がないのに結婚はしない方がいい。

金がないのに結婚はしない方がいい。

金がないなら結婚はしないものだ。

金がないのに結婚はしない方がいい。

そりゃ金がねえなら結婚しない方がいい。

 

B

おれもそう思う。

 

C

うかつにそんなことしないほうがいい。

うかつにしない方がいい

うかつにそんなことはしない方がいい。

 

D

おれは金はない方じゃなかった。だけど結婚は遅かった。

自分は金がないわけではなかったが、結婚は遅かった。

オレは金がない方ではなかったが、43(歳)で結婚した。

金がおれはない方じゃなかったけど、結婚遅かったから」

 

E

女性から見て、しっかり働いているのは尊敬の対象になる。

 

F

稼ぎが全然なくて尊敬の対象になるかというと、なかなか難しい」

稼ぎが全然なくて(結婚相手として)尊敬の対象になるかというと、なかなか難しい感じがする

稼ぎが全然なくて尊敬の対象になるかというと、なかなか難しいのではないか

稼ぎがなくて尊敬の対象になるかというと難しいのではないか

稼ぎが全然なくて(結婚相手として)尊敬の対象になるかというと、なかなか難しい感じがする

稼ぎが全然なくて、尊敬の対象になるかというと、よほど何かがないと難しい

稼ぎが全然なくて尊敬の対象になるかというと、よほどの何かがないとなかなか難しいんじゃないか

 

G

ある程度生活していけるものがないと、やっぱり自信がない。

 

H

あるからする、ないからしないというものでもない。

(結婚は)金があるからする、ないからしないというものでもない。

(金が)あるからする、ないからしない、というもんでもない。これは人それぞれだと思う

 

I

人それぞれだと思うから、うかつには言えないところだと思う

人それぞれだからうかつには言えないが。

人それぞれだからうかつには言えないが。

人それぞれだと思うから、うかつには言えないところだと思う

 細かい推論の形式はもう省略するけど、私の再構成はこうだった。いちおう解説的補足は括弧【】で、ナレーション的なのは《》で。

 ---「結婚資金が確保できない若者が多く、結婚の遅れが少子化につながっているのではないか」

《結婚資金を稼ぎ出せないから結婚が遅れているという認識をするか?》

【結婚が遅れる理由は】金がないなら結婚はしないものだ【からだ】。おれもそう思う。うかつにしない方がいい。

《しかし、若いかたよ、結婚というのはそういうもんじゃないよ。》

【しかし】(結婚は)金があるからする、ないからしないというものでもない。人それぞれだと思うから、うかつには言えないところだと思う。

【人それぞれという例なら】オレは金がない方ではなかったが、43(歳)で結婚した。

《結婚は相手を尊敬する心が必要なんだ。尊敬されるためには働くことが大切なんだ。つまり、これはカトリック信者の信仰。》

【それでも結婚生活を続けていくには、金以外に相手を尊敬する心が必要だ】ある程度生活していけるものがないと、やっぱり自信がない。女性から見て、しっかり働いているのは尊敬の対象になる。稼ぎが全然なくて尊敬の対象になるかというと、よほどの何かがないとなかなか難しいんじゃないか。

 オリジナルと大筋で合っていたんじゃないかな。よって、再構成過程で、2chのソースは捏造でしょうと思った。

 要は、結婚資金について問われたからその答えから入ったが、あとは若者向けに結婚というものは相手の尊敬だし、それには稼げよという説教だった。報道されているような、「貧乏人は結婚するな」ではない。

 きちんと聖書学を応用したわけではないけど、聖書学ってこんなふうに使うものです。

 

追記

 雑種さんがオリジナル書き起こし⇒首相「金ないのに結婚するな」テープ起こし - 雑種路線でいこう

fearonfearon 2009/08/25 11:32 >聖書学的に、、と。ventさんは、聖書や解釈学など学ばれて訓練されたものですか?
どんなテキストで?

ruquianruquian 2009/08/25 16:54 学生は、雇用問題と貧困問題が未婚、少子化を引き起こしていると指摘し、今後の自民党としての政策を知りたかったのではないでしょうか。
それに対して、私的に結婚資金と結婚に対しての見解を語ったのなら、それ自体がズレてるし、仰るように尊敬云々が問題発言と思います。
政策として準拠する見解を示したのがこの内容とすると、好意的に解釈しても「貧乏人は結婚するな」となると思います。
記者は全部後者として解釈したのですが、公共の場における一国の総理の発言で、そう解釈するのは至って普通かと。

finalventfinalvent 2009/08/25 17:55 fearonさんへ。学部レベルでは実際上の演習はやらないのですが、Qとの関係はやります。Qの対応のテキストがあったのですが、すぐに思い出せません。

finalventfinalvent 2009/08/25 17:57 ruquianさんへ。新聞記者がそう解釈するのはいたって自然だと思います。狙っていましたし、それに麻生さんのこの話は別エントリで指摘したように褒められたものではありません。ただ、麻生さんは質問者に反対しないようにYes-Butで結婚というか男の矜恃の説教を垂れたかっただけだと思います。オリジナルですっきり見えるけど、話の比重はそちらにあります。

T_UronT_Uron 2009/08/25 20:03 なんじゃこりゃあ!
面白い!

godmothergodmother 2009/08/25 20:33 聖書学的にはこのように考えるのだという事、初めて知りました。で、たどっていくと、普段の思考と大差ないというか、極自然に入ってきます。で、興味深いです。

余談ですが、あっちで野ぐっさんが指摘しているのはこのエントリーなのかなとおもったのですが、釣られて。
何の目的でエントリーが存在するかと、何の意図でブログ主がエントリーするのかの解釈に差異が生じる他者の解釈と、それと合致しない自身の意図的なものがそれぞれに可視化されているのはよいことだと思います(又は合致することも含めて)。読みの面白さかと思います。レスを求めているわけではないけど、極東ブログにコメントしても弁ちゃんは対話を望んではいないと思うので、言いっぱなし状態ですからより自分を問われていると、そのスタンスがよいです。

finalventfinalvent 2009/08/25 21:46 T_Uronさんへ。伝聞証言が複数あるとき、それを付き合わせて祖型を探るということで、原則を立てて行います。今回の場合は、記者たちは麻生叩きのネタとして別の文脈に移し換えたので、元の文脈の想定、つまり、質疑応答であること、Yes-Butの修辞であること、という大枠から、細かい祖型比較で配置しました。

finalventfinalvent 2009/08/25 21:48 godmotherさんへ。これがキリスト教徒には実は自然ではないのですよ。聖書学というのは教義から演繹するのではなく、その対極にあり、出てきた結果に驚くということになりがちです。れいのアーマンは最終的にキリスト教を捨てることになりました。あと、コメントや隠れたところからの非難や中傷はしょっちゅう受けます。気分のいいものではないですが、しかたないかなと思います。

tennteketennteke 2009/08/25 22:50 村上龍が「誰にでもできる恋愛」を書いた時期(2000年ころ)さかんに
「自立した人間の恋愛以外は恋愛に価しない」
と言っていまして、その延長にある発言だなぁと思っております。
んで村上氏は発行部数の多い女性誌で相談コーナーを担当して力説していましたので、
柳原大臣の発言よりも受け止められる女性が多く、それほど問題視されないかな、と思います。

finalventfinalvent 2009/08/25 22:57 tenntekeさんへ。「自立」はあのころは経済でしたね。今でもそうといえばそうかもだけど、心の問題が大きいかな。麻生さんはあれで晩婚に思うことがいろいろあるのでは。

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