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反乱の背景に「現代的不幸」 「1968」の小熊英二氏(2/2ページ)

2009年8月25日11時33分

 それは一部の論者が唱えるような「世界革命」とは呼べないし、「文化革命」という見方も神話化されすぎだと、指摘する。若者たちが否定した戦後民主主義への知識は浅薄だとして、その「稚拙さ」を批判もする。著書は運動の「稚拙さ」の検証をしているとの読み方もできるが、「悪い意味で言っているわけではない」と小熊さん。「時代の大きな構造的変動があって、若者たちの『言葉がみつからない』内面をくみとる力を、既成左翼がもたなかった。結果的には、理念先行の東大闘争が学生の心を一番ひきつけたんだろうし、そういう形にならざるをえなかったと思う」

 ただ、それは具体的な目標を掲げた政治闘争から離れたがゆえに持続せず、展望をもたず、また二者択一の倫理主義を強めて一般の支持を失い、崩壊する。行き着いた先が連合赤軍事件だ。

 結論では、68年の運動の挑戦と敗北から学び、建設的に生かせと説く。あえて希望を意識した記述になったのは「『あの時代』のうみを濾過(ろか)してあげることが自分の役割と思ったから」。さらには現代の若者たちが向き合う苦悩と「あの時代」が、一つながりであることを近年、痛感するからという。

 「若い人たちが今回の本を『面白い』と言ってくれたのは、ありがたいなと思いましたね。イケイケドンドンの高度成長期だった彼らの反乱の時代とは違うけれども、くみとるべきものはきっとある」(藤生京子)

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