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反乱の背景に「現代的不幸」 「1968」の小熊英二氏(1/2ページ)

2009年8月25日11時33分

 60年代末、日本列島を揺るがした若者の反乱とは何だったのか。小熊英二・慶応大教授(歴史社会学)が書き下ろした『1968』(新曜社)が、反響を呼んでいる。反乱の背景には当時の日本が直面していたアイデンティティー危機、心の問題ともいうべき「現代的不幸」の洗礼があったとする主張を、上下巻2千ページ超で展開した意図を聞いた。

 機動隊との対決の武勇伝、バリケードの中の青春という祝祭的側面が強調される一方、内ゲバや連合赤軍事件へと至る負のイメージが人々の脳裏に刻まれてきた「あの時代」。62年生まれの小熊さんが目指したのは、断片でなく全体像を、社会科学的手法によって解き明かすことだった。

 「天命ですね。誰もやらないから、仕方なく、と言うしかない。業みたいなものでした」。全共闘や新左翼セクトのビラから運動参加者の回顧録、当時の文化社会論まで。「一見つまらない」ものも含め、手に入る限りの資料を読み込んだ日々を振り返る。

 慶大、中大などの学費値上げ反対闘争や学内民主化要求から始まった日大闘争を経て、学生たちの反乱は「大学解体」「自己否定」のスローガンに象徴される東大闘争の理念先行的なスタイルを模倣し、全国に波及していく。背景として小熊さんが着目するのが、高度成長という社会の地殻変動だ。貧困や差別といったわかりやすい「近代的不幸」とは異なる次元で、不登校など、人々は新たに表れた「現代的不幸」を感じ取っていた。おまえはなんなのだ、どんなふうに生きればいいのだという、いわば自分探し。まったくなかった指摘ではないが、小熊さんは若者たちの反乱とは、こうした実存的問いが大きな社会変動の中で必然的に浮上した現象だった、とみる。

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