きょうの社説 2009年8月25日

◎「観光漫画」制作 海外発信にはアニメも有効
 石川県が能登を題材にして初めて制作する「観光漫画」は、観光資源に「物語性」を加 えて魅力を発信する意義ある取り組みとはいえ、発信力をさらに高め、海外誘客も視野に入れるなら、漫画にとどまらず、アニメも検討に値する。

 富山県では「富山観光アニメプロジェクト」として立山などの観光名所をアニメ化し、 中国の衛星チャンネルに流したほか、動画サイトにも配信している。世界に評価され、人気の高い日本のアニメは海外誘客の格好の媒体でもある。世界のアニメへの関心を観光にも生かす視点は今後ますます重要になろう。

 石川県の「観光漫画」は、能登の風土や食、文化の魅力を漫画にし、誘客につなげる狙 いで、昨年度「石川まんがコンテスト」大賞の受賞者が現地を取材して作品をつくる。完成した漫画は県が来年度に出版し、空港やJR駅、道の駅、コンビニなどに配布する。

 実写映像と違ってストーリーのある漫画は、観光地に物語性を与え、読む者が想像力を 広げる効果が期待できる。漫画化を通して、地元の人が観光資源の魅力を再認識することにもつながるだろう。

 一方、富山県で始動した富山観光アニメプロジェクトは経済産業省の地域資源活用事業 の一環で、県内のアニメ会社やクリエーター、放送局が連携し、立山黒部アルペンルート、五箇山、富山湾のホタルイカを題材に3本を制作した。

 立山のご来光をバックにヒロインが別れた彼と再会したり、帰郷した雪の五箇山で祖父 と再会する物語など印象的な内容で、中国の遼寧電視台の衛星チャンネルを通して中国全土に放送され、動画サイト「You Tube」などにも配信された。プロジェクトが具体化した一番の理由は、アニメ制作を担う人材が地元に存在することが挙げられる。

 フランスで今年7月に開催された日本のポップ文化の祭典「ジャパンエキスポ」は16 万4千人を集め、漫画やアニメ、ゲームなどの人気の高さをあらためて証明した。欧米、東アジアも含め、高まるアニメなどへの関心を地域活性化に生かさない手はないだろう。

◎老朽化する公共施設 総合的な長寿化計画を
 石川県は老朽化が進む橋梁(きょうりょう)の「長寿命化修繕計画」を策定した。高度 成長期に建設された道路橋を計画的に補修し、延命させることは各自治体の共通課題であり、七尾市や富山市なども同様の計画づくりに動き出しているが、これから更新期を迎える社会資本、公共施設は橋梁以外にも多くあり、総合的な管理・保全計画が望まれる。

 県内では1960〜70年代の高度成長期に橋梁が続々と建設され、20年後には県管 理の約2100橋のうち架橋後50年超えの高齢橋が6割以上になるという。橋梁の寿命は一般に60年程度といわれており、これから維持管理コストが集中的に増え、県財政に重くのしかかることになる。

 このため、従来のように不具合が生じた後に大規模な補修を行う「事後保全型」の管理 方法を、損傷が小さいうちに補修する「予防保全型」に転換し、橋梁の延命化と安全確保を図るのが今回の長寿命化修繕計画である。

 自治体の財政は厳しく、社会資本の新規整備より既存施設の有効活用を重視しなければ ならない状況を考えれば、予防保全型の管理方法は時代の要請といってよい。防災対策としても重要であり、橋梁だけでなく、道路やトンネル、港湾設備などの公共土木施設、さらに各種の公共建築物にも広く取り入れられてよいだろう。

 高度成長期に建設され、更新期を迎える公共施設の在り方を考えるため、施設の劣化具 合だけでなく、利用状況や維持・運営コストなど施設の現況を網羅した「施設白書」をまとめる自治体も全国には多い。公共施設の更新の優先順位や存続の是非、今後のサービス提供の在り方などを検討する基礎資料になるものだ。

 こうした施設白書を基に、総合的な公共施設保全計画を策定し、施設の建て替えや改修 を効率的に行おうという自治体もある。

 公共施設は老朽化の進行に対応するだけでなく、機能や用途など多面的に見直す作業が 絶えず必要であり、県内の各自治体も施設の保全、更新を適切に行う方法をさらに考えてもらいたい。