きょうのコラム「時鐘」 2009年8月25日

 世界地質遺産に新潟県糸魚川が北海道の有珠山、九州の島原半島とともに選ばれた。貴重な地形や地質、断層、火山を有する自然公園が認定の対象である

糸魚川は日本を東西に分ける地溝帯・フォッサマグナの北端として有名である。富山方向から親不知の難所を抜けて姫川河口に出る。そこから北アルプス方向を望むと列島の「裂け目」が見えるような迫力がある

方言や風習もここを境にガラリと変わる。言葉では「〜や」と言うのが向こうでは「〜だ」となる。お雑煮の餅は大体この境界から西が丸、東が四角に分かれる。農家の屋根の形も長野県側からは関東に似てくる。文化は複雑で見える境界線などないといわれるが、自然の地形に左右されているのがよく分かる

小さな境界ならどこにもある。細い川が地域の一体感を遮り、小高い丘で気候が変わることも。人の心にも「フォッサマグナ」がある。昔の人国記や現在のテレビ番組の県民性や地域性の議論になると飛び出す独断と偏見に満ちた断層がそれだ

人間の「気質」は自然の「地質」以上に激しく、変化に富んでいるように見えないか。