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[3] 韓国


1.概説

 (1) 98年2月に金大中(キム・デジュン)政権が発足し、同大統領のリーダーシップの下、為替レートや株価も安定してきており、外貨準備高も順調に増加している。また、実体経済も急速に回復してきている。他方、財閥改革や失業対策など依然として困難な問題が残っている。同政権は、深刻な経済危機の克服という大きな課題を抱えつつ、失業や倒産の増加、経済改革を巡る種々の利害調整、雇用解雇制度を巡る労組側の反発とデモの発生等、多くの問題に対応を迫られている状況にある。
 (2) 経済面では、97年に入り、韓国金融市場からの外国資金の引き上げが発生した結果、通貨危機が起こった。
 このため、韓国政府は、IMFによる管理体制の下、政府機構の縮小再編、労働市場改革、金融システム改革、財閥改革などの経済構造調整を進めてきた。当初は、高金利、緊縮財政などデフレ政策による経済運営が融資条件とされてきたが、98年7月以降は、景気回復のため、通貨供給量の増大、貸出金利の引き下げ、大幅な財政赤字を許容するなど、マクロ経済政策の軌道修正を行っている。
 98年に入り、IMF等からの支援資金の流入、経常収支の大幅黒字等により、韓国の使用可能な外貨準備高は97年末の88.7億ドルから、99年7月末には639.8億ドルに回復し、為替レートも、97年12月には一時的に1ドル2,000ウォンまで下落したが、99年に入ってからは、1ドル1100〜1200ウォン付近で安定している。また、経済成長率も、98年のマイナス5.8%から99年は6.8%(韓国銀行の見通し)に回復した。これらにより、景気は回復局面にあるとの見方が支配的である。一方で、雇用問題は、99年5月の時点で6.5%を記録するなど、依然深刻な状況にある。企業の構造調整の進展に伴い大量の人員削減が予想されることから、今後もこの基本的傾向は続くものとみられる。

 (参考1)主要経済指標等

90年 95年 96年 97年
人口(千人) 42,789 44,851 45,545 45,991
名目GNP 総額(百万ドル) 231,132 435,137 483,130 485,209
一人当たり(ドル) 5,400 9,700 10,610 10,550
経常収支(百万ドル) −2,003 −8,507 −23,006 −8,167
財政収支(十億ウォン) −1,207 1,035 1,763 1,051
消費者物価指数(90年=100) 100.0 136.7 141.3 144.7
DSR(%) 10.8 8.6 9.4 8.6
対外債務残高(百万ドル) 46,976 115,030 131,740 143,373
為替レート(年平均、164ドル=ウォン) 707.76 771.27 804.45 951.29
分類(DAC/国連) 高所得国/−
面積(千q2 98.7

 (参考2)主要社会開発指標

90年 最新年   90年 最新年
出生時の平均余命
(年)
70 72(97年) 乳児死亡率
(1000人当たり人数)
23 9(97年)
所得が1ドル/日以下
の人口割合(%)
5歳未満児死亡率
(1000人当たり人数)
30 11(97年)
下位20%の所得又は
消費割合(%)
妊産婦死亡率
(10万人当たり人数)
26(80-90年平均) 30(90-97年平均)
成人非識字率(%) 4 2(95年) 避妊法普及率
(15-49歳女性/%)
77(80-90年平均)
初等教育純就学率
(%)
100 92(96年) 安全な水を享受しうる
人口割合(%)
79(88-90年平均) 83(96年)
女子生徒比率
(%)
初等教育 48 48(96年) 森林面積(1000km2) 65 76(95年)
中等教育 47 48(96年)

 (2) 韓国経済は、中間財・資本財を我が国に大きく依存しているため、日韓両国間の貿易関係は65年以来我が国の輸出超過が続いている(98年、貿易黒字額は約46億ドル)。両政府は、更なる貿易の拡大均衡と産業技術協力の推進を目的として、92年に「日韓貿易不均衡是正等のための具体的実践計画」を策定し、同計画に従い、日韓の産業技術協力財団の設立、日韓経済人フォーラムの報告書の提出、日韓環境保護協力協定の締結、韓国における投資環境改善策の実施等の協力事業が推進されている。
 金泳三前政権の下では、経済論理に基づく新たな日韓経済関係の構築を目指すという立場をとり、知的財産問題、在韓商社の地位問題をはじめ、事実上の対日輸入規制となっている輸入先多角化品目制度の撤廃(1999年6月に完全撤廃)等について両国間で前進が見られた。
 また、97年12月の通貨・金融危機発生後は、韓国は安定した外貨獲得のために種々の規制緩和などを通して外国投資の誘致に積極的に取り組んでいる。我が国との間においては、99年3月の小渕総理の訪韓の際に、「日韓経済アジェンダ21」を発表し、投資協定の早期締結、第2回官民合同投資促進協議会の開催、基準認証の分野における協力、新たな日韓租税条約の早期発効等に向け前向きに取り組んでいくことで合意した。


2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

 (1) 我が国の韓国に対する経済協力は、65年の国交正常化時に締結された経済協力協定に始まり、円借款を中心に実施されてきたが、その規模は韓国の経済発展に伴い70年代後半にかけて減少した。その後、83年の中曾根総理(当時)訪韓に際し、新たに7年間で18.5億ドルを目途とする円借款を供与する旨表明され、累計3,281億円(約18.49億ドル)が供与された。同借款供与の終了にあたり、韓国経済が概に援助からの卒業段階に達しているとして、対韓円借款供与は以後行わないことが確認された。
 無償資金協力については、韓国の経済発展、所得水準の向上に伴い、79年以降は災害緊急援助を除き供与実績はない。
 技術協力については、韓国とは、開発援助のパートナーとして、相互に補完しあう関係を構築し、第3国への協力を行っている。
 (2) 韓国は87年対外経済協力基金(EDCF)を発足させ、91年には韓国国際協力団(KOICA)を設立する等、着実に援助供与国としての体制を整備してきている(韓国の韓国援助政策、実施体制については上巻参照)。93年以降、日韓の実務者レベルの援助政策協議が開催され(最近は98年8月)、95年には、日米韓の3国の援助関係者による非公式な援助政策協議が実施された。


3.政府開発援助実績

 (1) 我が国のODA実績

(支出純額、単位:百万ドル)

暦年 贈与 政府貸与 合計
無償資金協力 技術協力 支出総額 支出純額
94
95
96
97
98
−(−)
−(−)
−(−)
−(−)
−(−)
67.17(−)
90.75(−)
95.00(−)
61.82(−)
96.39(−)
67.17(−)
90.75(−)
95.00(−)
61.82(−)
96.39(−)
94.99
266.21
141.06
7.81
−162.37(−)
−26.54(−)
−222.94(−)
−202.40(−)
−145.50(−)
−95.21(100)
64.21(100)
−127.94(100)
−140.58(100)
−49.10(100)
累計 233.84(20) 913.72(78) 1,147.55(98) 3,601.54 28.58(2) 1,176.12(100)

(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。

(2) DAC諸国・国際機関のODA実績(支出純額、単位:百万ドル)

DAC諸国、ODANET    

(支出純額、単位:百万ドル)

暦年 1位 2位 3位 4位 5位 うち日本 合計
95
96
97
日本
ドイツ
ドイツ

64.2
16.0
14.3

ドイツ
フランス
フランス

19.3
10.1
9.5

フランス
オーストリア
オーストリア

7.8
5.5
2.1

オーストリア
カナダ
オランダ

6.3
0.7
0.2

スイス
スウェーデン
ルクセンブルグ

3.7
0.2
0.1

  64.2
 −127.9
 −140.6
 60.4
 −149.2
 −158.3
国際機関、ODANET  

(支出純額、単位:百万ドル)

暦年 1位 2位 3位 4位 5位 その他 合計
95
96
97
UNTA
UNDP
UNDP

2.6
2.0
1.8

UNDP
UNTA
UNTA

2.2
1.3
1.6

CEC
CEC
CEC

0.1
0.6
0.1

IDA
UNFPA
IDA

−3.5
0.0
−3.5



  0.1
  0.2
  0.1

  1.5
  4.1
  0.2

(3) 年度別・形態別実績

 

(単位:億円)
年度 有償資金協力 無償資金協力 技術協力
90年度までの累計
6,455.27億円

(内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/b_v/odawp/index.htm))

47.24億円

(内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/b_v/odawp/index.htm))

151.94億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与
4,173人
1,121人
766人
5,895.4百万円
プロジェクト技協  15件
開発調査 17件
91 なし なし 11.96億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与
262人
65人
70人
283.2百万円
プロジェクト技協  5件
開発調査 2件
92   なし

20.68億円

研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与
299人
84人
62人
950.8百万円
プロジェクト技協  6件

開発調査

1件
93  なし なし

15.66億円

研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与

210人
 91人
 31人
696.6百万円

プロジェクト技協  6件
開発調査

1件

94  なし なし 13.05億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与

208人
 86人
 28人
517.9百万円

プロジェクト技協  5件
95  なし なし        10.05億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与
189人
77人
8人
309.9百万円
プロジェクト技協  4件
96  なし なし         8.54億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与

176人
50人
22人
276.5百万円

プロジェクト技協  3件
97  なし なし         4.65億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与

164人
24人
12人
37.8百万円

プロジェクト技協  2件
98   なし 3.42億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与

157人
15人
5人
11.2百万円

プロジェクト技協  1件
98年度
までの
累計
6,455.27億円 47.24億円       239.94億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与
5,838人
1,613人
1,004人
8,979.3百万円
プロジェクト技協 18件
開発調査 17件
(注) 1. 「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
   
  2. 「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
  3. 65年度から90年度までの有償資金協力及び無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照(http://www.mofa.go.jp/mofaj/b_v/odawp/index.htm) 
   

 

(参考)98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
案件名 協力期間
工業技術訓練センター(86)
寄生虫対策
がん対策
カソリック医科大学産業医学センター                   
農業研究
中央大学校臨床栄養研究センター
大田職業訓練院(83)(91)(94)
循環器セクター(82)
農業気象災害研究
鉱山災害予防技術(88)
母子保健
企業技術訓練院(94)
農耕地高度利用研究
炭鉱坑内作業環境改善(95)
老人保健医療センター
新素材特性評価センター
勤労者職業病予防事業
水質改善システム開発

67.10〜71.10
68.7〜76.3
68.7〜73.3
71.8〜77.3
74.6〜82.3
75.10〜79.9
76.3〜80.3
79.3〜84.3
82.10〜87.9
84.3〜88.3
84.8〜90.7
86.4〜92.4
89.6〜94.5
89.11〜93.11
90.11〜95.10
91.10〜96.10
92.4〜97.4
93.9〜99.8

 

プロジェクト所在図


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