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【衆院選】揺れる自民支持組織 農協、医師会の一部 自主投票、民主支援も 東北

8月12日7時57分配信 産経新聞

 衆院選の公示まで1週間を切った。票田をめぐる戦いはすでに過熱しており、与野党問わず、対立候補予定者の地盤、基礎票を崩そうと、闘いが続いている。東北地方で強い地盤を持つ有力候補予定者も、支持層を切り崩されまいと、地元まわりに必死の日々だ。政権交代が現実味を帯びるなか、支持者側の組織も、さまざまな意見が交錯、一枚岩とはいかなくなっているようだ。(高山豊司)

 8月のある日、東北地方の自治体の首長に、内々に連絡があった。地元から出馬する野党の候補予定者が公示日に行う演説、いわゆる「第一声」に関するお知らせだ。自民党支持の首長だが、「今回は対応が難しい」と頭を抱える。政権交代を意識し、この候補予定者の第一声にも参加しておくべきか、思案中だ。

 「事実上の踏み絵だ」。別の自治体関係者は、今回の通知をそう揶揄(やゆ)する。いままでのように無視すれば、政権交代となったときに“報復”があるかもしれない、と警戒しているらしい。もともと、こうした踏み絵的な手法は、与党の常套(じょうとう)手段といわれてきたが、政権交代が現実味を帯びてきたことから、むしろ通知を受け取った側が、脅威ととらえているのかもしれない。

 ただし、野党側もそうした自治体の動揺に敏感に反応している。「誰が来ているかは当然チェックさせてもらう」(民主党関係者)。直近の首長選の結果も踏まえ、与党系の市議、町議、役場職員の支持層を切り崩す好機と考え始めているようだ。

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 すでに“地殻変動”が表面化したケースも。自民党の支持基盤とみられる農協や医師会などの一部で、自主投票や民主党推薦を打ち出す動きがある。青森県農業者政治連盟は、与党支持とみられていたが、このほど、県内4区すべてで自主投票とすることに決めた。山形県や福島県の農業者団体では、選挙区によっては民主党候補推薦や自主投票とする方針を打ち出した。

 日本医師会系の地域政治団体、青森県医師連盟は、衆院2〜4区で自民党前職を推薦し、1区では、同党県連が支援する候補予定者の推薦を決めた。一方で青森市医師連盟は、青森1区で、今回初めて民主党候補予定者に推薦をだすことを決めるなど、足並みは乱れている。

 社会保障費の増加幅を、毎年2200億円抑制する政府方針をめぐり、医師会は与党への反発を強めていたが、政府側はこの方針を事実上撤回。選挙直前に関係修復を果たしたと思われていたが、対立の根は深かった。さらに「歯科医師や柔道整復師の団体も接触してきている」(民主党関係者)といい、状況は混沌(こんとん)としてきている。

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 与党支持で結束を強める動きもある。宮城県、青森県などの県建設業協会は、いずれも従来通り自民党、公明党を支持。民主党が高速道路無料化や、ガソリンの暫定税率廃止などを打ち出し、公共事業の見直し姿勢を強めているため、「これ以上、工事が削減されたら生活していけない」(宮城県建設業協会)など、危機感が高まっている。

 宮城県と秋田県の農協政治連盟では、県内全選挙区で自民党候補予定者を推薦した。「農家の戸別補償の財源問題などで、信頼が得られなかった」とみる宮城県の民主党関係者もいる。

 また、民主党有力候補予定者の地盤でも、直近の首長選の対応をめぐり、自民党に支持者が流れそうなところもある。宮城県石巻市では4月に市長選が行われたが、その際、民主党内では誰を推薦するかで対応が分かれた。そのしこりが現在も色濃く、衆院選への影響が大きいとの見方も出ている。30日までに戦いの構図がどうなるか。組織票の動きは、今後、さらに流動性を強めそうだ。

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 ■「FTA問題」新たな争点に

 「農業票」が勝敗を大きく左右する東北で、民主党が一時、衆院選マニフェスト(政権公約)に「締結」を掲げた日米FTA(自由貿易協定)が、新たな争点として浮上してきた。民主党は11日、マニフェストを「交渉促進」と修正したが、農政をめぐるブレに自民党は批判を強めており、選挙戦への影響も注目されそうだ。

 9日に岩手県奥州市で行われた高橋嘉信氏(自民)の総決起大会。高橋氏は日米FTAに関連し、「小沢(一郎代表代行)先生は自由貿易論者。締結したら日本農業、この地方は大打撃を受ける」と強調。東京から応援に来た細田博之幹事長も「自由化で安いコメが入ってきたらコスト差を所得補償するという農政は、担い手育成や生産性などの努力がなく、めちゃくちゃだ」と激しく批判した。

 自民党は小沢氏が8日、「食料自給体制の確立と自由貿易は何も矛盾しない」と“修正不要論”を表明したことを重視。小沢氏の地元である岩手4区で、民主党の農政に関する“不安”を訴えた格好だ。

 こうした攻勢に対し、民主は「戸別所得補償の新設は共感を得ているがFTAに関する突き上げはない」(岩手2区の畑浩治氏)と影響を否定している。

 だが、自主投票で臨む岩手県南部の農協関係者は、「自由化すれば所得補償を上回る被害が出る。(FTA問題は)選挙戦にも影響を与えるだろう」との見方を示す。

 一方、福島3区で民主の玄葉光一郎氏を推薦した福島県農業者政治連盟は「推薦の際に政策協定でFTA締結には『反対の立場で取り組む』と確認した。玄葉氏を信頼している」と強調。農協支援を受ける民主の候補予定者たちの言動にも注目が集まりそうだ。(中川真)

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最終更新:8月12日10時10分

産経新聞

 

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