<事件>「言語道断」こわばる県警幹部 3児死亡事故から3年 止まらぬ飲酒運転
8月25日14時37分配信 毎日新聞
会見で頭をさげる村上首席監察官=福岡市博多区の福岡県警本部で2009年8月25日、山田宏太郎撮影 |
「このような事件を起こし大変申し訳ございません」。県警本部で会見に臨んだ村上正一首席監察官は冒頭、表情をこわばらせ直立し謝罪の言葉を述べ、長々と頭を下げた。
3児死亡事故の日の逮捕に「6月にも飲酒運転事案があり、防止策を進めていた最中だったが……」。落胆の表情を浮かべた。逮捕された小倉南署地域1課巡査部長、古賀達雄容疑者(49)は酒のにおいがし、事故車両にもビールを積んでいたが飲酒検知を拒否した。「自分のやったことには責任をとってほしい。言語道断」と村上首席監察官は気色ばんだ。また、古賀容疑者は肝機能が低下しており、上司から飲酒を控えるよう指導を受けていたことも明らかにした。
3児死亡事故から1年だった07年8月にも、福岡市職員が原付きバイクを飲酒運転し、出合い頭の事故も起こしている。節目の日を汚すように繰り返される公務員の違法運転。事故遺族らも一様に驚きをあらわにした。
飲酒・ひき逃げ事故で次男を亡くした佐藤悦子さん(57)=大分県国東市=は「なくならないですね」とがく然とした様子。飲酒運転については捜査中だが「酒を飲んで運転すれば何が待っているのか一番知っているはずの職業のはずなのに」と話した。
東名高速事故で娘2人を亡くした井上郁美さん(40)は「警察官でもアルコール依存状態になってしまっていれば、正常な判断が出来ない。周りの同僚や家族が不審な点に常に目配りすべきだ」と再発防止を求めた。
職場での飲酒運転予防活動を推進するNPO法人アスク(アルコール薬物問題全国市民協会)の今成知美代表(53)は「飲酒検知拒否は自分の身を守る最悪の行為。警察官が検知拒否することで一般市民も同じ行動をする恐れがあり、県警には厳正な捜査を求めたい」と話した。
【岸達也、島田信幸】
◇
「この時に…遺憾」
福岡市長、会見で憤る
福岡市の吉田宏市長は25日、3児死亡事故から3年を迎えた同日の定例会見で「県民、国民をあげて取り組んでいる時期に非常に遺憾。この事故がきっかけで運動が始まっただけに県内の、警察官が起こした事故は一福岡県警にとどまらず、全国に大きな影響を与える」と憤った。
会見冒頭、吉田市長は「本市をはじめ全国で撲滅に向けた取り組みが進んでいるが、我々の目指す『根絶』『撲滅』という状況になっていない。市は月命日を飲酒運転撲滅の日と定め、さまざまな取り組みを実施し、飲酒運転を許さない職場風土づくりを進めている。市民全体へと高める運動を続けたい」と誓いの言葉を述べた。
一方、飲酒運転事故を起こした職員を原則「懲戒免職」とする全国の自治体の行政処分について、取り消す司法判断が相次いでいる点について「公務員の飲酒運転事故が減少している理由の一つには『厳罰化』がある。(市では)当面、このままでいく」と強調した。
吉田市長は今月13日、亡くなった3児の菩提寺を訪れたという。【鈴木美穂、河津啓介】
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最終更新:8月25日14時37分
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