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統治と二大政党制 ―中川信博―

2009年08月25日12時25分 / 提供:ニュースブロガー

ニュースブロガー

アゴラ

―統治とは―

「戦略的思考と憲法九条」、「情報戦略も見直しを」でそてぞれの概念を概観しまして、その視点から我国の現状の問題点を指摘致しました。―はなはだ不完全ですが―そしてその原因をハード(組織)、ソフト(仕組み)にあるということ指摘させて頂き、それを構成する諸概念―知識もしくはその解釈や理解―が充分に教育、理解されていないことに問題があると提示させて致しました。特に戦略の項では「政策」と「戦略」という概念について、情報の項では「カスタマー」と「情報サイド」の関係及び「カスタマー」となるための条件などを取り上げまして、現状の政府、官僚機構が機能不全に陥っている遠因を示しました。

さて本論は、私達人類が最低限の健康と安全と豊かさを享受する為に、最低限の地域を支配確保して、政府を組織致しますとき、現代では憲法を制定して法の支配を受け―あるいは独裁で―、秩序を確立します。そしてその仕組みの根源を「統治」と致しましたとき、その統治について考えてみたいと思います。

―コンピュータとは?―

ハード機器としての「コンピュータ本体」とはなにか?という問いに正確に答えられる人は、コンピュータ関連企業に従事している人でも、なかなかではいないと思います。おそらくその答えは「マザーボード」ではないでしょうか。そのマザーボードからは、CPUさえもデバイス(周辺機器)なのです。

マザーボードはデバイスを認識して、OSが提供するGUIの手助けをうけて、私たちユーザーはアプリケーションを利用しています。じつはこの答えは不充分なのです。「デバイスを認識して」という何気ないところに、実は非常に重要な働きをするプログラムの存在を忘れがちなのです。

この働きをするプログラムを「BIOS」(Basic Input/Output System)と呼んでいます。実はこのシステムがなければコンピュータはただの箱なのです。―箱というよりは部品といってもよいと思います―この数百キロバイドのプログラムがコンピュータをコンピュータたらしめているといっても過言ではありません。マザーボードがBIOSを使ってデバイスを「統治」しているともいえないでしょうか。その恩恵で私達は日々インターネットを始めITリソースを活用させて頂いているともいえます。

―イギリスにおける統治の概念―

統治を考えるにあたり非常に参考になるの本がエドマンド・バークの「フランス革命の省察」です。これはバークがフランス革命直後にフランスの友人宛にしたためた手紙を「フランス革命の省察」として出版しました。バークはこの本の中で、フランスの友人に現在起きている革命が、イギリスをはじめヨーロッパが発展させてきた、自由主義社会を破壊するものであると激しく批難しています。貴族や教会の財産をいかなる法に依拠して没収したのか、彼らの名誉はいかなる権利で剥奪されたのか、それまでの統治を否定、抹殺する根拠、権利はいかなるものか、などをあるときはやさしく、あるときは激しくこの友人へ問いかけております。

バークは自由、名誉、財産の各権利を緩やかに発展させてきたヨーロッパへの挑戦とまで表現しています。そして特に統治への挑戦だと、国王をギロチンにかけた共和国政府へ対してはまったく容赦がありません。―バークは「パリ共和国」と革命政府を表現しております。このあたりの感覚は我国のそれと大きく異なるところです。現在の地方分権論がヨーロッパのそれとまったく違う証左でしょう―バークは過去から継承されてきた財産を擁護してそれを子孫に残していく権利―財産、名誉、自由など―の不可侵性を友人に繰り返し述べております。

―物理学の4つの力―

私は「統治」を書こうとした時、なぜかBIOSのことが頭に浮かびました。マイケル・ポランニーの「tacit knowing」というわけではないでしょうが、BIOSと統治の類似性を書こうと思ったのです。BIOSも統治もその恩恵を受けている人々が強くそれを意識することはないでしょう。それは秩序の根源ともいえます。BIOSはデバイスを認識すると共に仲間にします。BIOSの存在なくしてコンピュータはその機能を発揮できないどころか部品の塊となります。

もう一つこの統治を考える時に浮かんだのが物理学の4つの力―基本相互作用―です。物理学の書籍としては空前のベストセラーとなった、リサ・ランドール博士の「ワープする宇宙―5次元空間のなぞを解く―」を参考に致せば、4つの力とは弱い力、強い力、電磁気力、重力で、これらの力は素粒子の間で働く相互作用で、重力以外は次元を超えず作用し、それぞれ異なるケージ粒子に伝達される力のことです。特に重力を除く3つの力を大統一理論として、記述する試みが進行中です。

これらの力の作用を私たちは認識することは出来ませんが、その恩恵を受けていることはアプリオリといえるでしょう。ランドール博士はこれらの力は智情意があるごとく振る舞い、その力がどこから作用しているかはまだ解明されていないといいます。さらにこれらの力の作用がなければ素粒子間の安定が崩されて、物質の安定に影響がある、すなわちすこし強引に解釈すれば物質の秩序の崩壊、言い換えれば私達の存在が失われる可能性があるということです。

人間社会の統治も同じようなことではないかと思います。私たちは私たちが安定して生活している、秩序の根源であります統治の実態を認識することはなかなかないと思います。しかしその目に見えず、肌で感じることが出来ないものが、実は根源的にその存在を支えているということは「BIOS」や「4つの力」と同様に重要なのではないかと思います。

―ミカド主義とは―

W・E・グリフィスはその著書「ミカド―日本の内なる力―」で我国の統治について「ミカド主義」という言葉で説明しています。グリフィスの「ミカド主義」を私なりに解釈いたせば、日本人は「天皇(スメラミコト)」の統治を受け入れているのではなく、すでに「ミカド主義」が日本人の根底に作用していて、そのシンボルとして「天皇(スメラミコト)」が存在していると述べています。

またアメリカの文化人類学者ルース・ベネディクトはその著書「菊と刀」で日本人にとっての国家神道は米国にとっての星条旗と同じ意味を持つと解説しています。アメリカ人にとっての星条旗は国家国民統一とそのシンボルであり、星条旗に対し敬意を表することはその意義を受け入れ、その統治を受けいえることだといえます。

アメリカで生活していた友人に聞きますと、小学校では月に一回程度、国旗に敬意を表し、敬礼の仕方から国旗国歌の意義などをその学年が理解が理解が出来るようにしているそうです。―南部の州だったと思います。州によっては違いがあるとは思いますが。ワールドカップのときなど多くの国が国旗掲揚と国歌斉唱のときは同じ姿勢をとっています。それは国旗国歌への姿勢を学校できちっと教えているか、社会が教えているのではないかとと思います―

―二大政党制に統治の変更はありえない―

世界には様々な統治の形があります。民族、宗教、人間の崇高な精神、伝統、…、人は緩やかな見えない作用で結ばれて―その運命を受け入れて―国家を形成しています。国家観というものは統治に関する考え方だとも思います。国家の運営者たる政府は統治に関する姿勢を示さなければならないと思います。現在受け入れている統治下で運営をするのか、そうではなく新たなる枠組みで新たなる国家を形成するのか。しかし現実は統治の変更は暴力で行なわれます。先出のフランス革命、ロシア革命、イスラム革命は政体変更ではなく統治体の変更だといえます。

二大政党制では統治体の変更がないことが大前提だと思います。二大政党制は統治体を受け入れた上での政策民主主義でなければならないと思います。アメリカの共和党と民主党の連邦に対するスタンスは大きく違いますが、「自由」「平等」や星条旗への変更は考えられませんし、アメリカ国民は許さないと思います。

戦後、我国の自民党と社会党のような統治体変更を伴う政権争いであれば国民の選択は―自民党に不満は多いにありましたが―自民党でした。国民は社会主義革命を標榜する社会党への権力委託を拒否してきました。社会党が社会主義革命を実現を放棄して、連立を組みましたとき、国民は受け入れました。この事実は国民が我国の統治へ対する破壊者を拒否した姿勢としてある意味画期的なことだと思います。政策が右か左かではなく、統治にコミットすることが国民の選択の重要な用件であることの証左といえないでしょうか。

今回の選挙で民主党は「政権交代」をイシューとして現在選挙戦を戦っておりますが、民主党が我国の統治体制にコミットしているかどうかは疑わしいと思います。各地で開かれる講演会、党大会でまったく国旗を掲揚せず、国歌斉唱も行なわれていません。政権を担う政党の姿勢として如何なものかと思います。

もし統治体の変更をもともなう政権交代なのではあれば、民主党はそのことを国民に政策中心として伝えるべきだと思いますが、国家転覆をたくらむのであればそのようなことを詳らかには「戦略的」にしないでしょう。―当然です―
たとえば民主党は「地方主権」というような文言を使用していますが、これは明らかに「地方分権」とは違う概念をいっているのではないでしょうか。これは法人としての「国家」の主権とは別に「地方自治体」が主権を行使することが出来るようにすると受け取られても仕方がありませんと思いますがいかがでしょうか。

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