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中央集権からの転換

2009年8月25日0時10分

 明治期以降、日本の急速な近代化に役割を果たした中央政府主導の国家運営はとっくに制度疲労を起こしている。20年前にはそのことがはっきりしてきたのに、いまだに転換できない。小泉元首相はかつて「地方にできることは地方に、民間にできることは民間に」と、成果はともかく、スローガンだけは正鵠(せいこく)を射ていた。今回の政権選択あるいは政策選択もこのことを抜きにして語れない。

 麻生政権の景気対策は、従前の中央主導の公共事業や財政支出を漫然と積み上げただけなのに、麻生首相は自分の政策が景気の底打ちを実現したかのように強調している。G20諸国がそろって財政出動したのだから景気低落傾向に歯止めがかからなければ逆に奇跡である。問題は今後10年にわたって、我が国の自律的な経済成長の路線につながっているかという点ではないか。「民主党に成長戦略がない」と言う自民党にも成長戦略はない。

 大きな課題である地方格差是正に対して、中央主導、各省庁縦割りによる公共事業一点張りでは、地方にも日本にも将来はないと断言できる。地方は相変わらず中央からの用途が決まったプレゼントを口をあけて待っている、あるいはそれを呼び込むことにきゅうきゅうとする存在にとどまってしまう。

 今後の日本経済社会を考える場合、小泉政権のように大都市地域や高所得層が主導する姿を描くことは誤りである。今まで弱かった地域や階層が自らの力で立ち上がるプロセスが長期成長につながる。取り残された地方が自分の足腰で立ち上がり戦う姿勢と体力をつける基盤を作るために、中央集権の転換を行うのであって、単に中央官僚けしからんだけでは何も始まらない。(龍)

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 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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