当事者もびっくり!「クチコミ総選挙」が示した大新聞社の世論調査との予想一致率
手放しで喜べないとはこのことか。インターネット上のブログやネット掲示板に溢れる口(クチ)コミ情報。その内容分析から選挙結果を予想する試みが、大新聞社による旧来型の電話世論調査とほぼ一致する予想値をはじき出し、ネットの住人たちを複雑な心境にさせている。
その試みとは、口コミ分析ツールの開発会社ホットリンクが主体となって運営している「クチコミ@総選挙2009」。同社が所有する業界最大級のネット口コミ情報データベースをもとに、東京大学(松尾豊准教授と末並晃氏)の技術を用い、各小選挙区の勝敗を予測しているものだ。
ホットリンクによれば、「クチコミ@総選挙」の8月21日朝時点の予測と、同日の朝日新聞朝刊に掲載された序盤情勢調査の結果を照合してみたところ、小選挙区の予想一致率は94%に達したという。また、翌22日の日本経済新聞朝刊に掲載された世論調査との一致率も、87%という高い数値となった。
大新聞社による世論調査結果との高い一致率は、ネット口コミ分析の精度への信頼感向上につながるが、「既存の調査方法では出せない結果をクチコミだからこそ出せる」(ホットリンク・内山幸樹社長のブログより抜粋)という視点で見れば、「同時に残念でもある」(同ブログ)と当事者も複雑な心境を吐露している。
とはいえ、それは贅沢な悩みかもしれない。というのも、これまで、ネット上の情報の中から選挙や政党、候補者について語られている断片を拾い出して分析する予測手法は、統計学上意味があるとされる母集団を選び、個別に電話をかけるなどの方法で行われる新聞や通信社の調査に対して信用力が低かったからだ。「高い一致率は(確かに)非常に有力な信用獲得へのステップアップ」(ホットリンク)とは言えそうだ。
いずれにせよ、大事なことは、大新聞社の世論調査との一致率よりも、8月30日の総選挙の開票結果との比較。そこで“権威”をしのぐ高い精度を示せるのか。それができれば、日本の選挙PR戦略のあり方を変えるだけでなく、ネット上の口コミ情報から世論の趨勢を読み解くという新ビジネスに市民権を与えることも夢ではなくなりそうだ。
(ダイヤモンド・オンライン副編集長、麻生祐司)
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