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日本アニメ、欧州魅了 ロカルノ映画祭に200本

2009年8月22日

写真「平成狸合戦ぽんぽこ」が上映された6日夜(日本時間7日未明)のピアッツァ・グランデ=スイス・ロカルノ©FOTOFESTIVAL/PEDRAZZINI写真スイス人の少女に請われシャツにサインする富野由悠季監督=11日、小原写す

 スイスの湖畔のリゾート地が、欧州の映画ファンと日本のアニメが出会う場と化した11日間だった。15日閉幕した第62回ロカルノ国際映画祭で、約200本もの日本アニメを集めた特集「マンガインパクト」が開催され、多様な映像表現が大小様々な衝撃(インパクト)をもって受け止められた。

 戦前から現代、短編・長編からテレビ作品まで、これだけ網羅的な大規模な特集は日本でも例がない。名誉豹(ひょう)賞を贈られた高畑勲(「平成狸合戦ぽんぽこ」など)、富野由悠季(「機動戦士ガンダム」など)両監督のほか、「ポケットモンスター」シリーズの湯山邦彦監督、「つみきのいえ」でアカデミー賞を受賞した加藤久仁生監督ら、約20人の日本人クリエーターが講演や会見をした。

 2年半をかけ準備した学芸員のカルロ・シャトリアンさんは「日本アニメの広大な世界を、自由に歩き自分なりの地図を描く。そんな場を、欧州の一般の映画ファンに提供したかった」と話す。

 映画祭の象徴的存在であるピアッツァ・グランデ(大広場)の野外上映で「ぽんぽこ」を見たイタリア人夫婦は「アニメは初めてだが、難しいテーマを分かりやすく伝え、とてもよくできていた」と話し、4日後の「ガンダム」の野外上映も訪れた。

 その上映をガンダム好きの息子と見に来た年配のスイス人男性は「戦闘シーンが続くが、その奥には人間ドラマがある」と感心。翌日、講演後の富野監督は10代の集団に囲まれサイン攻めに遭った。その一人、13歳のスイス人少女は「『ガンダム』は初めて見た。中に出てくる、ちっちゃくて丸いロボットが好き」。

 欧州でも、30代以下は日本アニメを見て育った世代。「マンガインパクトのためイタリアから来た。普通の映画祭でこんなに多くアニメを上映するのに驚いた」「大好きな『ドラゴンボール』をスクリーンで見られるなんて感激」といった声を聞いた。

 メディアの関心も高く、地元紙のほか仏紙ルモンドが一面で取り上げた。シャトリアンさんは昨年、イタリア人監督ナンニ・モレッティの回顧特集も手がけたが、「私が昨年受けた取材は5件だったのに、今年は30件だ」と驚く。「この映画祭は、マニアのものだった日本アニメが、欧州で映像文化の未来の言語として、新たな歴史をスタートするきっかけになったと思う」

 2千〜5千人を集めた野外上映にしても他の会場にしても、集客は実写映画に比べればやや苦戦という印象で、会見や講演が表層的な内容に終わってしまうこともあった。それでも「マンガインパクト」の意義は、多くの人が集い、多様なアニメに出会う広い場所になったことだ。ロカルノの象徴、ピアッツァ・グランデのように。(小原篤)

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