10年ほど前から衰退してきたが……にわかに活気づく芸能ニュース
テレビのワイドショー番組が、芸能ニュースのめまぐるしい展開に活気づいている。ある評論家は「(覚せい剤で逮捕や孤独死など)芸能史で最大級のスキャンダル。視聴者はワイドショーにくぎ付けになっている」と指摘している。
芸能ニュースが復権している。俳優の押尾学容疑者(31)が麻薬で逮捕され、清純派アイドルだった酒井法子容疑者(38)も覚せい剤取締法違反容疑(所持)で逮捕された。さらには女優、大原麗子さん(62)の孤独死……。30日に投開票が迫った衆院選が中だるみになりかけたこの時期、テレビのワイドショー番組は芸能ニュースのめまぐるしい展開ににわかに活気づいている。
合成麻薬のMDMAを服用していたとして、3日に逮捕された押尾容疑者の事件も、出入りしていたマンションで女性が死亡していたことで十分にショッキングだったが、酒井容疑者の事件は、夫の逮捕→本人の失踪(しっそう)→長男の保護→本人への逮捕状→本人の出頭・逮捕、とジェットコースター並みの展開で、格好のワイドショーネタとなっている。
芸能評論家の肥留間正明さんは「ともにこれまでの芸能史で最大級のスキャンダル。2つのニュースの相乗効果で、視聴者はワイドショーにくぎ付けになっている」と指摘する。
現に、酒井容疑者の携帯の電波が山梨で途絶えたというニュースがあった6日朝のワイドショーは、フジ「とくダネ!」の平均視聴率が10.1%と、前4週の平均8.1%から2ポイントもアップ。テレ朝「スーパーモーニング」も5.2%から6.2%に上昇した(いずれもビデオリサーチ調べ、関東地区)。
ワイドショーの底力
視聴率が上がったことについて、フジの番組広報担当は「夏休み中でもあり、芸能ニュースだけが理由ではないと思うが、視聴者の興味があるニュースが重なっていることは事実」。一方、テレ朝の番組広報担当は「芸能ニュースだけでなく、初の裁判員制度などもあった。世の中が動くときは視聴率が上がる」と意外と冷静だ。
肥留間さんによると、芸能ニュースは10年ほど前から衰退してきたという。芸能誌は部数を落とし、名物の芸能リポーターも少なくなった。タレントのスキャンダルを暴こうとすると、同じ局の他番組やCMへの出演を見合わせると芸能プロが反発。不倫が発覚しても、タレント生命には何ら影響がなくなった。「だから今回、これ幸いとばかりに芸能リポーターが頑張るのも分からなくはない」と肥留間さんは言う。
日テレ系「情報ライブミヤネ屋」などで活躍する芸能リポーターの井上公造さんにとって、押尾事件、酒井事件、大原孤独死と、トリプルで大ニュースが重なったのは初めての経験だという。「体力的には大変です。でも、ぼくら芸能リポーターの存在感を視聴者らに知らしめるチャンスだと思う。より慎重に取材しながら、新しく正確な情報を仕入れていきたい」と熱く語る。
最近は報道番組がワイドショー化したといわれ、報道とワイドショーの垣根が低くなっている。だが井上さんは、これだけ大きな芸能ニュースが起きればワイドショーの存在がクローズアップされると指摘する。「報道は警察から情報を吸い上げるが、ぼくらは芸能界そのものの人脈からネタを仕入れる。ワイドショーの芸能離れがいわれてきたが、今は、今後そうではなくなる可能性があるという分岐点だと思う。ついに出番がきたという感じです」
ワイドショーの底力が試されているのかもしれない。
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