新聞のWebサイトをすべて有料化に――メディア王のマードック氏
米メディア大手ニューズ・コーポレーションを率いるマードック氏は、傘下にもつ新聞のWebサイトをすべて有料化すると発表した。新聞業界は経営悪化に苦しんでおり、メディア王として君臨するマードック氏の今後の行方が注目される。
【ニューヨーク=松尾理也】米メディア大手ニューズ・コーポレーションを率いるルパート・マードック最高経営責任者(CEO)は5日、傘下にもつ新聞のWebサイトを1年以内にすべて有料化する方針を明らかにした。世界的な景気後退を受け、同日発表された決算でニューズ社が赤字に転落したことが背景にある。新聞業界は経営状況の悪化に苦しんでおり、世界的なメディア王として君臨するマードック氏の判断と今後の行方が注目される。
ニューズ社の2009年6月期決算は、33億7800万ドル(約3200億円)の赤字。前年同期は53億8700万ドル(約5125億円)の黒字だった。
赤字転落の原因は新聞事業だけではなく、地方テレビやインターネット関連事業も大幅に収益を減らした。だが、マードック氏は決算発表後の電話会見で「質の高いジャーナリズムは高くつく。内容を無料で提供することは、資産を切り売りしているのと同じことだ」と語り、世界の主流となっている新聞社系Webサイトでの記事の無料提供を見直すと明言した。
また「有料化の先陣を切ることで読者の減少に見舞われようともかまわない。もしわれわれが成功すれば、世界中の新聞が追随するだろう」とも述べ、傘下にもつ英国の高級紙タイムズや大衆紙サンなど、すべての新聞を来年夏までに有料化するとした。
Webサイト閲覧の有料化は、新聞経営が全体的に悪化する中で、しばしば議論されている。トップクラスのアクセス数を誇る米紙ニューヨーク・タイムズも、今年に入り、何らかの形での有料化を検討していると伝えられた。
しかし、専門家の間では、有料化は読者離れを招くだけという見方が多い。現時点で有料サイトとして成功しているのは、ニューズ社傘下の米紙ウォールストリート・ジャーナルなどわずかしかない。
マードック氏は07年に、ウォールストリート・ジャーナル紙を発行するダウ・ジョーンズ社を買収した際、同紙のWebサイトを無料化する意向を示したことがあったが、撤回した。
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