これが現場の声
100年に1度と言われる大不況の中、新聞やテレビ向けの広告の状況はどうなっているのか。広告最大手・電通の6月単体売上高は、前年比16.1%減の1099億8600万円。媒体別では、テレビが同15.4%減の530億300万円、新聞は同21.8%減の97億4100万円と2ケタ減が続き、不況の影響が色濃く出ている。
クライアントの意向に左右されずに記事を書くのがメディア本来の姿であるのは言うまでもない。だが、広告の落ち込みが激しい大手新聞社の取材現場ではこんな声が漏れ聞こえてくる。「広告を入れてくれる大企業に対して、従来以上にモノを言えなくなっている」。また、別の記者は、ある企業の会見に出入り禁止を食らったという。以前、この企業に対してネガティブな記事を書いたことが原因だった。この出禁記者は猛烈に抗議したが、あろうことか自社の営業サイドからも待ったをかけられ、涙を飲んだという。
実際、筆者自身にも同じ様な経験があった。某メディアに「ある娯楽産業の事業者数が急減している」といった記事を書いた。しかしそのメディアはクライアントに配慮し、掲載を見送った経緯がある。広告不況がどれだけ厳しい内容になっているかは皮膚感覚で理解できるのだ。
あくまでも筆者の主観だが、広告収入が激減するメディア界は、クライアントに気を遣い過ぎているのではないだろうか。筆者、あるいは冒頭に登場した友人が抱く共通の懸念は、こうしたメディア界の過剰とも言えるクライアントへの気遣いが、第2、第3の近未来通信事件につながるのではないか、というものだ。当然、冒頭で紹介したマルチまがいの商法もこの1つに含まれる。
本稿を書きながら、大手紙の夕刊をめくってみた。ほんの1年前であれば朝刊の掲載スペースから弾きだされた不動産関係の広告が多数載っていたが、今は見る影もない。現在目立つのは、高額なロイヤリティーが発生するフランチャイズへの勧誘や、墓苑業者の広告など。当然各メディア内部での審査を通っているのだが、この中から、2006年のような事態が発生しないことを願うばかりだ。
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