Webにはまだ圧倒的に面白いコンテンツが足りない
――とはいえ、Web媒体は基本的に「無料で読むもの」であるだけに、読者が雑誌代として支払うお金に頼れないこともあって、マネタイズが難しいですよね。
岸田 でも、今Webで読めるものって、ニュースがほとんどでしょう。圧倒的に面白いコンテンツを提供できるなら、Web媒体でも有料化は可能だと思う。例えば、人気作家が小説を書きました。でもWebでしか出しません、本は刷りません、ということになったら、皆お金を払うんじゃないか。
現実に、読者からお金をいただかなくても、広告費だけでやっていけると考えている。僕が手がけた雑誌の例では――これは極端な例ではあるけれど――1号で、広告収入が5億円、販売収入は2500万円ということがあった。また、紙に印刷して雑誌を作ることを考えたら、サーバ代がかかるとはいったって、コスト効率は1ケタ違うくらい(Web媒体のほうが安い)だろう。
――Webの場合、バナー広告中心に収入を得ようとすると、雑誌や新聞の広告費に比べて、単価が非常に安いという問題もあります。
岸田 ちょっと前までは、雑誌の見開き広告(の効果)のほうが(Webのバナー)静止画よりも勝ちじゃない、ということがあったが、これが絵が動き出す、動画になると話が変わってくる。圧倒的に動画の勝ちですからね。
「モテ」のキーワードは封印
――LUXURY TVについて聞かせてください。このサイトのコンセプトは何でしょう。
岸田 「次なるラグジュアリーライフをリコメンドする」かな。今のところは男性向けとして作っているけど、いずれ女性向けもやっていきたい。まだ具体的には言えないけど、早期に携帯対応もする予定。
――ターゲットとする読者層は。
岸田 好奇心旺盛な人、魅力的になりたい人に観てもらいたい。自分を磨きたい人に観てほしいですね。
――魅力的……「ちょいワル」や「モテ」じゃないんですか?
岸田 もう「モテる」は言いませんよ(笑)。富裕層に絞り込んでいたKISHIDA DAYSよりも読者の幅を広くとっていますし。競合もないですしね。
「LEON」を作ったころは、男性誌の競合がいっぱいあった。競合がないんだったら、あんな手はとらない。もっと正攻法でいきますよ。ぼくは資金が豊富にある大出版社にいたわけじゃないから、ゲリラでやるしか、とがってやっていくしかなかった。そのために「モテ」というキーワードを考えた。
でも今度は違う。まだ本格的なメディアがないんだから。広告市場として、Web動画には可能性がある。まだWebには本格的な(ファッション)メディアがないが、これから競合はだんだん増えていくだろう。
関連記事
- ファッション誌が動画になる――「LUXURY TV」スタート
『LEON』創刊編集長として知られる岸田一郎氏が、Web動画サイトをスタートした。ファッション、クルマ、ブランドなどラグジュアリーな話題を動画で提供していく。 - “ちょいワル”岸田一郎氏の「zino」休刊 Webサイトも閉鎖
雑誌「LEON」の前編集長・岸田一郎氏の会社が発行する富裕層男性向け雑誌「zino」が休刊。Webサイト「@zino」も休止する。「今後の事業継続が難しいと判断したため」という。 - オールアバウト、“ちょいワル”子会社化で富裕層モテ強化
オールアバウトは、“ちょいワル”で有名なLEONの前編集長・岸田一郎氏が運営するベンチャー企業を子会社化し、富裕層向けビジネスを強化する。 - 特集:どうなる? 紙メディア〜出版、新聞ビジネスの明日を考える
関連リンク
Copyright© 2009 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.