35ブックスは成功するのか? 出版、書店業界の未来を考える (1/2)
書店が35%の返品手数料を負担するという35(さんご)ブックス構想が7月6日に発表された。出版不況下で登場した苦肉の策。この試みは成功するのだろうか。
著者プロフィール:池田智子(いけだ・ともこ)
イーフェニックス代表取締役社長。LinuxからWindows、Macなどのシステム開発及び販売、書籍の作成、プロデュースなどを行う。ノンフィクション作家でもある。
1997年に4600社ほどあった出版社がついに今年4000社を切り、新規創業する出版社も1ケタになったそうだ。原油価格急騰が2008年度にはあり、紙の値段は上がった後戻らなかった。かくして、書店への配本数が減り、種類が増え、値段が上がるという現象が起き、「自転車操業」ならぬ「オートバイ操業」に陥っていると指摘する人もいる。
編集者も月に3冊も担当すればよかったのが、気が付けば5冊となり、出版決定の決裁も以前より多くのハンコをもらわなければいけないようになった。
当初の対象は26タイトル47冊で復刊書籍が中心。価格帯は最低価格が1600円から1万500円までと高価格帯が多く、配本は11月から。注文は筑摩書房が取りまとめるという。
35ブックスとは?
出版流通の世界では「書店側は売れた場合のみ手数料」を払うこととなっており、こうした仕組みが書店に大量の書籍を並べることを可能としている。返品率は4〜5割とも言われるが、実際配本していると「もっと高い」ことの方が多い。こうした事情から「書店側にもメリットがあるようにするので、返品手数料を負担して欲しい」というのが、今回の35ブックスの要旨である。
- 1600円の本が売れる→書店側に560円の利益
- 1600円の本が売れ残る→書店側が出版社に560円の手数料を払う(今までは無料)→半分以上売れ残ると書店側の赤字となる(3カ月延勘※)
誰しも「少しでも低リスクで事業を継続したい」と思うもの。小さな出版社が急にこうしたことを導入した場合、「本を書店においてもらえない」ということが容易に想像できる。今は著者が注文用チラシを持って「書店営業」すれば大概置いてくれるが、こうした「手数料が発生する書籍」の書店営業は著者が乗り込んでもそう簡単にはいかないだろう。
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