―とある深夜の夜の出来事である― 「ふぅ…帰り 遅くなっちゃったな〜」 コツコツと音を立てて、ヒールを履いて歩く仕事帰りのOL。 今日は残業があった為、いつもより遅い時間帯に帰宅する事になった。 「随分と遅い 時間帯になっちゃったし、近道でもしようかな?」 と、近道をする為、横のビルとビルとの間の脇道に入って行く。ここ最近、変な 事件があるらしく、 少し不安ではあったが、早く帰りたい為迷わず進んで行く。 変な事件とは、同僚の話しでは、何でも変なお化けが出て、人が襲われ神隠しに あうと言う話である。 そんな事ある筈ないと思いながら、少し狭い、ビルの壁と壁との間の細い道を足 音を立てて歩いて行く。コツコツ…。 にちゃにちゃ …。 (・・・・・ ・ん?今、変な音がしたような…気のせい?) 何か違和感を感じるが、特に気にせず前を進んで行く。コツコツコツコツ…。 にちゃねちゃ にちゃねちゃ…。 (…やっぱり 何だか変な音がするような…?) 自分の足音と全く違う音が聞こえるので、少し不安になり始め、不意に後ろを振 り向いてみる。 「…………? 何だ、別に誰も居ないじゃない…」 後ろを振り向いてみたが、誰かが居る気配もなく、気にせず前に振り向き直した …瞬間、 ぶわ!にちゃ 〜〜 「え………き ゃっ!?」 不意に何かが背中に張り付き、引き寄せられたと思った瞬間、勢いよくドサッと 音を立てて尻餅をついてしまい、その衝撃で履いていたヒールが脱げてしまい、 ストッキング素足になってしまう。 「痛った〜い …。何、一体何なの!?」 何が起きたか全く理解出来ずに、不意に自分の背中に何か違和感が感じるので振 り向いて見ると… 「な…何よコ レ?…ね…ねりけし…?」 背中には、 べっとり と張り付いた、ピンク色のねりけしのような物体が、まるで生きているように にちゃにちゃ と音を立てて張り付いていた。 「な…何が… ……え、腕が…上がらない…!?」 いつの間にか、そのねりけしは、腕や足、胸にも張り付き、彼女の動きを絡めと っていた。 「く………こ の……!」 腕を上げようとするが、 にちゃ〜 と音を立てるだけで、ねりけしに包まれた腕は、一行に上がる気配はなく地面に 張り付けられてしまう。 同じ様に、立ち上がろうと、ストッキング素足となった足をばたつかせるが にちゃにちゃ と音を立てるだけで、立ち上がる事も出来ない。 「これが皆が 言ってたお化け…?…た、助けを呼ばないと…!」 恐怖に怯えながら、助けを呼ぼうとしたその瞬間… ぶわっ! 助けを呼ぼうとした瞬間、背後からねりけしが、彼女の頭から顔を覆い被さるよ うに纏わり付く。 にちゃねちゃ にちゃ 「んぐ…!う゛… ぐむ……ん゛ん゛ん゛ん゛〜!!!」 助けを呼ぼうと、必死に声を出すが、顔に べっとり と張り付いたねりけしが邪魔をする為、くぐ篭った声しか 出ない。しかもそのねりけしは、眼や鼻と口を塞いでいる為、視界も塞がれ、呼 吸もする事が出来ない。 「ん……ぐむ…う ゛……お……ごぉ……!」 息苦しくなってきたのか、必死に腕や足をばたつかせるが、 にちゃにちゃ と音を立てるだけで、 ねりけしから逃れる事など到底出来ない。徐々にそのねりけしは、彼女の体を完 全に包み始める。 彼女の足元から、 にちゃにちゃ と音を立てて足を完全にねりけしで包み込む。 もはや、彼女の足はストッキングを履いてるのかどうかも完全に解らなくなって しまっている。 「……う゛……ん む………」 息がもたなくなってきたのか、徐々に体の動きが鈍くなってゆく。 それに気付いたのか、ねりけしは、一気に彼女の体全体を包み込んでしまった。 「…ん…ぐ……お ……う゛ぅぅ…」 ねりけしに、体全体を包まれた彼女は、もはや動く事も出来ないのか、 にちゃにちゃ と 小さくもがく程度になっている。 「……ん゛…む゛ う゛……う゛……ん゛……ん゛…」 もう窒息し始めたのか、力無くぐったりし、もがきも無くなる。そのねりけしは 、 彼女を包み込んだままゆっくりと移動し始める。その場には彼女の履いていたヒ ールだけが残り、 この後、彼女が助かったかどうかは定かではない… |