「あ〜居残り か〜…。まあ、私が悪いんだけどね〜…」 彼女は今日、生物学の実験レポートを提出し忘れたので、一人生物室に残りクラ ゲを使った実験をしようと、棚から色々な薬品を取り出している。 「え〜と…… これとこれで大丈夫かな?」 棚から薬品を二つ程手にとり、彼女は机の上に近付いて行く。 机の上には、大きめな水槽が置いてあり、中には水中でクラゲが数匹ほどゆった りと泳いでいる。 正直、にゅるにゅるとした生物は苦手なのだが、鼠とかそういった哺乳類を実験 に使うのは、可哀相と彼女は思っているので、 しょうがないと、彼女は自分に言い聞かせてクラゲを実験に使用する。 「えっと…確 かこっちの薬品でいいんだよね?」 と、二つ持っていた片方の薬品が入った瓶を机に置き、もう片方の瓶の蓋を開け る。 「う………気 持ち悪いな〜…」 開けた瓶の中にはドロドロとした、緑色の液体が入っており、開けた瞬間、とて つもない異臭が中から漏れだす。 「……本当に これでいいんだよね…?」 段々と不安になってはくるが、間違ってはいないだろうと、その中身を水槽の中 に入れてゆく。 ドロドロ… ・・・すると、水槽がみるみるうちに緑色に濁り、クラゲがいるかも確認出来 ない程濁ってしまう。 「あれ……な んか聞いてたやつとは違うような…?」 どうやら、自分のやった事がようやく間違えである事に気付いた。 取りあえず、中にいるクラゲだけでも確認しようと、水槽の蓋を開けて上から覗 き込んでみると…… にゅるにゅる … 「きゃ……何 !?このにゅるにゅるは…!?」 水槽の水の中から、いくつもの緑色のゼリー状の触手が腕や首、胸に絡み付いて くる。 その触手はねばねばで、絡み付いた触手を剥がそうとするが粘着質がありすぎて 、全く解ける事がない。 にちゅにちゅ … 「う……気持 ち悪い…。」 ぐにゅぐにゅとした独特の感触と、鼻が曲がる程の異臭で気分が悪くなっていく 。 べちゃ〜! 「……これ、 もしかしてク ウ゛ぐ……?…ン ゛ン゛ン゛!?」 突然視界が真っ暗になったと思った瞬間、顔じゅうに触手と同じ感触がする。 彼女の顔をスッポリと覆うように突然変異した、クラゲの本体が纏わり付く。 「ン゛ン゛!?… ウ゛グ………ン゛ン゛ー!!!」 とてつもない異臭に意識が遠のきそうになる。 顔中に張り付いたクラゲを必死に剥がそうとするが、ぐにゅぐにゅした感触の為 上手く掴めず、剥がす事が出来ない。 「ング………ン゛ ン゛ン゛……ン゛ーー!!」 口や鼻を、弾力がある緑色のゼリー状の物に塞がれている為、助けも呼べない。 呼吸も苦しくなっきたのか、先ほどよりも必死に剥がそうと激しくもがき始める 。 「ンン……グブッ ……ンン!!」 中々、彼女が弱らないので、クラゲの本体から触手が数本生え、彼女の脇や胸を 揉み始めたり、 くすぐりをして彼女を弱らせようとし始める。 くちゅくちゅ くちゅ… 「ング!?ン゛ン ゛グググッ…ウグーぅぅ!!!!」 くすぐられて、更に息苦しくなったのか、彼女の息がもたなくなってきて、ガッ クリと膝を付いててしまう。 くちゅくちゅ くちゅくちゅ… 「ン゛グ………… ウ゛ン゛……ム゛ン…」 窒息し始めたのか、ガクガクと小刻みに身体が揺れ、力が無くなってゆき、彼女 の抵抗も少なくなってゆく。 それを見計らったのか、クラゲの本体が急に膨れ上がったと思った瞬間、ぶわっ と、クラゲの本体が膜のように広がり、彼女の体を丸々包み込んでしまう。 「…ン゛……グウ ゛……………ウ゛…ン…ン…ン……」 完全にクラゲの中に包まれ、誰かが中に呑まれているのかもわからなくなってし まっている。 「………ン゛グ… ……ウ゛ウ゛…」 もう彼女は窒息してしまったのか、クラゲの中から小さな呻き声のような音が聞 こえてくる。 今日は彼女しかこの部屋を使用しない為、彼女が助かる見込みはおそらくないで あろう…。 部屋の中には、いびつに膨らんだクラゲだけが残される… |